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令和四年度自画自賛怪談集

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#ショートショート

村上さんですか?

久しぶりに会った後輩に聞いた話

2.3年前から月に何回か同じ人から間違い電話がよく来るんですよ。
「村上さんですか?」って。
「いや、ちがいます。」
って答えて切るのが毎回の流れなんですけど、めちゃくちゃ気持ち悪いんすよね。

「いや、普通に相手が間違えてるだけじゃないの?」
後輩が話終わった際に私が言うと、後輩が暗い顔で話し出した。
「何回か電話番号変えてるんですけどねぇ。」

S県Yさん

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とびだしちゅうい

夜中に金縛りで目が覚めた。
体は動かないが、目だけは動くのであたりをキョロキョロと見渡してみた。

あれ、何かあるぞ。

テレビの前に何か人影がある。
ソイツは直立不動で一切動かない。
初めの方は真っ暗で人影の正体は分からなかったが、段々と目が慣れてきて正体が分かった。

ソイツの正体は通学路によく置いてある看板だった。
「とびだしちゅうい」
文字も小学生男子のイラストも通学路に置いてあるまんまの

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ヤ○ザもビビる

ふらりと入ったスナックのカウンター席、
隣の席の方と仲良くなった。
彼の名前はAさんといい、
話をしていくうちに彼が元ヤ○ザだと分かった。

好奇心を抑えきれずに聞いた。
「今までで一番怖い体験はなんですか?」

まだ現役でヤ○ザだった頃、
Aさんは若い衆を引き連れて、
5人で飲み歩いていた。

ひたすら飲み歩き、夜も開け始めた頃、
目の前から背の高い筋肉質な男が歩いてきた。
このまま歩いてくると

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何でも屋への依頼

Wさんは何でも屋をしている。
何でも屋と言っても珍しい仕事はなく、
引越しや掃除がほとんどだという。

ある日、仕事の依頼が入った。
アパートの一室を片付けて欲しいという依頼だった。

<作業内容>
1.家具や雑貨など中にあるものは全て捨てて良い
2.当日、依頼者は来れない。
3.鍵だけを先に事務所に送る。
4.作業終了後には妹が確認に来る。
5.通帳と捨てて良いかわからないものは妹へ渡して欲しい

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ついていきます。

最近になり、家の中でおかしなことが増えた。
家族全員でリビングにいる時に2階から足音がしたり、
誰もいないはずの部屋から女の笑い声がしたりする。
家を建てて20年近く住んでいるが、
曰く付きの土地ではないし、
家の中で誰かが死んだりもしていない。

どうしたものかと家族で悩んでいたら、
妻の知り合いに霊感がある人がいるという。
藁にもすがる思いでその方(Aさん)に頼んでみた。

私は仕事で立ち会え

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3-5-7

私の知り合いのEさんから聞いた話。 

Eさんの上司のAさんはかなりの競馬好きだった。
AさんほどではないがEさんも競馬が好きだったので、
職場でよく競馬の話をしたし、
大きなレースがあると二人で競馬場に観戦に行ったりもした。

そんなAさんが事故で亡くなった。
急な別れでかなりショックを受けたEさんは、
何日も会社を休んでこのまま辞めようかとも思った。
そんなある日、夢見た。

会社でAさんがニ

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子供はなんでも捕まえてくる。

ある夏の夕方。
仕事おわりに歩いていると、
後ろから背中を叩かれた。
振り向くとコーラの缶を片手に持った女の子が立っている。

「え、なに?」
女の子に声をかけると、
悪戯っぽい笑顔で持っていた缶を私に差し出した。
「覗いてみて。」
言われるがままに缶の中身を覗いてみると、
中にはカブトムシがいた。
この大きさの虫は普通なら入れない筈だ。
手品かなにかだろうか。
「え、すごい。どうやって中に入れた

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サウダージ

受験勉強を全くせずにいた僕は、
名前さえ書けば入れる大学に入学した。

4年間遊びまくってやろうと思っていたが、
周りは僕が思っているよりも真面目で、
遅刻や欠席ばかりの僕は少し居心地が悪かった。

「いつもここにいるよね」
ある日、いつものように喫煙所でサボっていると、
女の子が話しかけてきた。
金髪で水商売風の見た目に少し戸惑ったが、
彼女も僕と同じ様な境遇で、
話してみると妙にソリがあった。

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ブラックリスト

以前から私に怪談を提供してくれる、
不動産会社勤務の友人がいる。
そんな彼から面白い話を聞いた。

彼の会社には社内独自のブラックリストが存在し、
そのリストに名前が載っている人間には部屋を貸さないという決まりがある。

「かなり家賃滞納をした」
「騒音トラブルを何度も起こした」
「毎回部屋がゴミ屋敷になる」
リストに載る理由は様々だ。

ある日、部屋を貸して欲しいと問い合わせが来た。
その客の担

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いつも横の君と

大学に入り半年が経った頃、周りの友人達に彼女ができ始めた。彼女が一度もできたことのない僕は劣等感を感じていた。

「お前も早く女くらい作れよ。」
飲み会の際の友人の一言がきっかけだった。
「実は昨日から彼女が出来たんだ。」
酒のせいか自分だけ彼女がいない焦りのせいか、しょうもない嘘をついた。急いで嘘だと打ち明けようとしたが、タイミングを逃してしまった。

その日から僕は嘘をつき続けることになった。

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