Wさんは何でも屋をしている。
何でも屋と言っても珍しい仕事はなく、
引越しや掃除がほとんどだという。

ある日、仕事の依頼が入った。
アパートの一室を片付けて欲しいという依頼だった。

<作業内容>
1.家具や雑貨など中にあるものは全て捨てて良い
2.当日、依頼者は来れない。
3.鍵だけを先に事務所に送る。
4.作業終了後には妹が確認に来る。
5.通帳と捨てて良いかわからないものは妹へ渡して欲しい。
6.依頼金は冷蔵庫内に入れておく。

少し変わった内容だが、
何でも屋に頼む依頼者は訳ありの人が多い。
Wさんはあまり気にしなかった。

当日、Wさんはバイトの男の子と2人で、
依頼のあった部屋に入った。

中はとても綺麗で、
本当に人が住んでいたのか分からないほどだった。
冷蔵庫と洗濯機、ベッドくらいしか大きな荷物はなかった。
バイトの男の子が冷蔵庫を開けた際に封筒を見つけた。

今回は急な依頼にもかかわらず
引き受けて下さり感謝いたします。
当日立ち会えずに申し訳ありません。
多く入ってる分は謝礼になります。
お受け取りください。
作業終了の際は妹まで電話をお願いいたします。
090-○○○○-○○○○

封筒の中には上記の旨が書かれた手紙と、
依頼金にいくらかプラスされた現金が入っていた。

部屋の中が綺麗だったので、
2時間くらいで作業が終わった。
現金と通帳、重要そうな書類以外は全て捨てた。
Wさんは依頼通り妹さんへ電話をかけた。

「もしもし、○○様の妹様でしょうか?」
「はい、そうですが。」
「お兄様から依頼を受けた片付けが終了したので、確認をお願いしたいのですが?」
「え、兄からですか?聞いてないのですが?」
「お兄様から妹様が確認に来るとお伺いしていたのですが…。」

どうやら依頼者の妹は何も聞いていなかったらしい。
到着までしばらくかかるとのことなので、
Wさんたちは近くのファミレスで待ち合わせることになった。

約束の時間になり、妹さんが来た。
そのまま3人で依頼者の部屋に行き、
現場の確認をしてもらった。
鍵と通帳と現金等を妹さんに渡した時におかしなことを聞かれた。

「兄からの依頼はいつくらいにありましたか?」
「5日前の夕方4時くらいになりますね。」
Wさんは着信履歴を見ながら答えた。
「ああ、なるほど…。」
妹さんは苦い表情をした。

Wさんに電話をした次の日、
依頼者は自殺をしたらしい。
亡くなった場所はWさん達が掃除をした部屋だそうだ。

「だからあんなに綺麗だったんですね。」
帰り際にバイトの男の子がぽつりと話した。

K県 Wさん

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