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「残機」って表現をこの本で知った。

読んでいる本にたまに間というものが生まれる。
いくつかのシリーズを読んでいたり、作者読みをしてみたり、興味ある分野に寄せて読んでみたり、絶えず色々な本に手を出しているのだけれど、時たま「あっ、何読もう?」となる時がある。

ちょうどそんなタイミングでテレビで紹介されていた本があったので、読んでみることにした。

『俺の残機を投下します』山田悠介

※作品の事前情報を入れたくない方は、これから先読まないようにして下さい。

ゲームの世界に入る話?と思って読んでみたら違った。
現実世界(ほんの少し未来な感じがしたけれど)に生きている主人公の元に、「お前の残機だよ」と名乗る3人組が現れる。

残機とは、ゲームに出てくる操作キャラの残り数のことをいうらしい。そういえば、ゲームをしている時に無意識に「あとイッキしかない!!!」とか言っていたけれど、この「イッキ」は「一機」と表記されるものなのだと知った。

主人公は、過去それなりの戦績をおさめたプロゲーマーではあるのだが、最近は戦績がふるわず燻っている。燻りすぎて読んでいて、読み手をイラッとさせるよう、なかなか良い感じに卑屈醸造されている。
残機だと名乗る3人組は、主人公と姿形はそっくりではあるのだが、性格は少々異なる。簡単にいえば、優等生タイプの真面目君とストリート上等の不良君と心優しき引っ込み思案。

そんな存在の登場に初めは疑心暗鬼の主人公だが、ある日事故に遭い、自分の代わりに残機のうちの1人が消えたことによりその存在を信じるようになる。

そんな中で再会する元妻とほとんど交流したことがない我が子。
再起をかけたeスポーツの大会。

読み始め早々に思い浮かべたのは、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』と、映画『アイランド』。
以前、映画の感想を書いた時、爪痕が残る位が記憶に残るから良いと言ったようなことを書いたが、怖いのは嫌だ。どうかそっち方面には進んでくれるなよ、と読み進めた。

文体は読みやすく、時代背景も現代に近い世界観、よく出てくるシーンはゲームシーンと、そこまで頭を悩ませることもなく4時間ほどですんなり読めてしまった。

ページ数が少なくなるにつれ、おっ、どっち?どっちに転ぶ?と早く結末が知りたいような、知りたくないような、そしてそれだけではないよね?といった期待感も膨らみ、読む速度も上がる。

最後の1ページを読んで、だよね!そうだよね!!そうじゃなきゃね!!!

と満足して読み終えることができた。スッキリ読み終えられるのもこれはこれで気分が良い。が、人によってはこれのどこがスッキリなのか?と思う人もいるかもしれない。あくまでも私の感覚では、スッキリと終わることができた。

読みやすい本なので、興味がある方は読んでみて欲しい。
そして、良ければ最後の1ページをどう思うか教えていただければと思う。

にしても、もし、自分が自分の残機だと名乗る人達にと出会ったらどう思うだろう?自分と全く同じ顔の人間がこの世に存在していて、入れ替わっても身近な人間でさえも気づかない。
怖いな・・・。
本当に、ただゲームのように命の危機に陥ったときに回復といった感覚の残機であれば良いけれど、すでに実像としてこの世に存在している残機となると怖い。
怖いし、残機の性格次第では・・・。

と、当たり前のように自分が主人公感覚で考えていたが、私が誰かの残機であるという可能性もある。また、私のおこがましい癖が出てしまった。

うーん。どちらにせよ、命は大事にせねばと考えさせられた。

▼読んだ本はこちら

▼動画があったのでこちらも

▼最近はこの本を読み進めているよ

▼爪痕が残る方が良いという話をした記事はこちら

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