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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話

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息子が急性散在性脳脊髄炎を患い倒れた急性期から完治を目指している現在までの経過をまとめています
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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後6

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後6

退院して初めての減薬から2週間後。

処方された薬が残り1包となったその日、再び息子を連れて主治医のもとへ向かった。

主治医の先生はいつもと変わらず、元気いっぱいの息子の様子を見て微笑みながらも、目の動きや手足の反射、片足立ちなどの運動機能を確認していく。

ひととおり診察が終わって、主治医の目線が息子から私に移った。

「さて、息子くんはとてもよく回復していますね。特に麻痺が残っている様子もあ

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 番外編

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 番外編

更新頻度が突然減ってしまい、申し訳ありません。「楽しんで記事を書きたい」「納得した記事だけを投稿したい」という思いから、毎日投稿に拘らず、少しずつ投稿を続けていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

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実は、長男は今現在も倒れた当日の記憶が無い。

入院は彼にとって、とてもとても大きな出来事として刻まれている。

退院して数ヶ月経つ今で

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後5

退院後初めての減薬の日がきた。

入院中に3食後から朝夕食後へ減らした服薬を、朝食後だけにする、というものだ。

退院日に医師から『退院からこの日まで健康状態に問題が無ければその予定で進めるように』と指示を受けた。

今長男が元気に過ごしているのは、薬によって自分の免疫を抑え込めているからで、薬を減らせば途端にまた脳や脊髄に炎症が出来てしまうのでは無いか…。

当時は薬を減らすと言われる度にそんな

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後4

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後4

再び保育園に通い始めて2週間。

その間も体調に変化はなく、穏やかに日々がすぎていった。

この日は長男が出たがっていた発表会の当日だった。

本当だったら誰よりも見に行きたかったのだが、今年は感染症拡大防止の為、参加出来るのは保護者一名のみとなっていた。

さらにタイミングが上手くいかず、寝る時だけはママがいないとダメな次男が、発表会開始直前にお昼寝を始めてしまった。

直前までどちらが行くか悩

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後3

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後3

長男が早く保育園へ行きたがっている理由。

お友達に会うことはもちろんだが、もうひとつ彼にとっては大きなイベントがあった。

2週間後に園の発表会が開催される予定だったのだが、それに参加したかったのだ。

長男はこの発表会が大好きで、今年はなにをやるのかな、と入院前からとても楽しみにしていた。

そんな想いを知っているからこそ、出来ることなら参加させてやりたかった。

「あの…出来れば発表会に参加

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後2

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後2

「急性散在性脳脊髄炎とは、予防接種やウイルス感染をきっかけとして、自己免疫が脳や脊髄を攻撃してしまうことにより発症するそうです。

今回、長男はインフルエンザの予防接種後でもありましたが、その後風邪の初期症状が出ていたこともあり、明らかな原因というのはわからないままです。」

「10万人に1人と言われる程稀な病気で、症状も個々で違いが大きいそうですが、その中でも長男の場合は発症から意識障害、呼吸停

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後1

ついに退院することができた長男。

そこから1週間程、自宅でのんびり体力回復をしながら両親どちらかと過ごし、元気に過ごす力を充電した。

日に日に笑顔と口数が増え、倒れる前とほぼ変わらない日々を過ごした。

本人からすると、突然家族と離れ離れになり、見知らぬ場所、見知らぬ人の中で過ごさざるを得なかった3週間。

病気の治療としての大変さはもちろんだが、精神的にもとても辛い日々だっただろう。

まだ

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話33

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話33

長男が倒れてから21日目。

この日、主治医やリハビリ担当の医師等からの診察を受け、翌日の退院許可が出た。

長男は前日に母親との面会を満喫した為、この日は父親に目一杯甘えて過ごしたとのことだった。

私と次男も穏やかに2人きりの時間を楽しみ、翌日まで何事もありませんように、と心の中で祈った。

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長男が倒れて22日目。

夜中に急変の電話がくるのでは

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話32

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話32

長男が倒れて19日目。

前日に脳波計測を行い、炎症があった脳の右側はまだ痙攣と思われる怪しい波が計測された。

しかし、現在服薬している薬で症状は抑えられている為、影響が出たら服薬量を戻すという前提のもと、予定通りこの日の朝の服薬分から減薬を開始した。

前日、保育園の園長先生からお見舞いを頂いた。

そこには絵本が大好きな長男のためにたくさんの絵本と、長男のクラスのみんなと担任の先生からのメッ

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話31

遡ること10日程前。

長男が目覚め、まだ寝たきりで食事は取れないけれど、少し会話が出来るようになったころのこと。

PICUのベッドサイドで長男に絵本を読んでいると、主治医の先生が来てくれた。

「お母さん、ちょっとお話したいことがありまして。」

少し改まった雰囲気で会話が始まった。

「実は、ADEM(急性散在性脳脊髄炎の略称)を含めたいくつかの疾患で、再発しやすい抗体というものが発見されて

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話30

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話30

息子が倒れて16日目。

この日、やっと主治医の先生に会うことが出来た。

この頃になると私も夫も仕事に復帰しており、一日おきで面会に行っていた。

加えて面会時間は限られており、外来や急患対応もある主治医の先生と会って会話が出来るタイミングはあまり多くは無かった。

それでも、先生は出来る限り時間を取って病棟に顔を出してくれ、長男に声をかけてくれていた。

「長男くんわがままも言わないし、すごく

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話29

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話29

息子が倒れてから15日目。

面会に行くと、理学療法士の先生がきてくれた。

熱は変わらず37度5分と高めだったが、本人は元気そうだった為、病棟外に出る許可を得た。

敷地内に公園のような屋外のリハビリ施設があり、そこで遊びながら動きを見せて欲しいと言われた。

長男は入院して以来初めての外の空気だった。

冬の寒い風が吹き始めた頃だったが、まだ日差しは暖かく、カーディガンと心拍計測器を入れたポシ

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話28

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話28

息子が倒れてから14日目。

この日は最初に夫が面会し、私は次男と病院近くの公園で遊びながら待っていた。

その後交代の連絡を受け、夫とバトンタッチ。

面会に行くと、昨日まで長男が使用していた個室には別の患者さんが居た。

前日に私が帰宅したあと、大部屋へ移動になったらしい。

大部屋は4人部屋で、長男ともう1人、長男より1歳か2歳年上と思われる少年が居た。

よろしくお願いしますと挨拶をして、

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話27

息子が倒れてから13日目。

一般病棟に来てから初めての土曜日だった。

看護師さんの人数も少なく、今まで毎日組まれていたリハビリや検査も無かった。

そんな静かな午前中を過ごした長男は、私が面会に訪れると同時に「寂しい」と訴えた。

長男が倒れてから約2週間。

1週間前の土曜日はやっと目覚めたばかりの長男の様子に気を取られ、病院内の雰囲気を見る余裕は無かった。

この日の病棟内は確かに静かで、

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