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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話30

息子が倒れて16日目。

この日、やっと主治医の先生に会うことが出来た。

この頃になると私も夫も仕事に復帰しており、一日おきで面会に行っていた。

加えて面会時間は限られており、外来や急患対応もある主治医の先生と会って会話が出来るタイミングはあまり多くは無かった。

それでも、先生は出来る限り時間を取って病棟に顔を出してくれ、長男に声をかけてくれていた。

「長男くんわがままも言わないし、すごく素直で賢いので病棟のアイドルになってますよ。私もたまに癒してもらってます。」

長男は元々、保育園などの外では聞き分け良く頑張り、その分自宅では甘えん坊で疲れたらしっかりわがままを言うタイプ。

今は家に帰って気持ちを切り替えるタイミングが無い分、相当ストレスが溜まっているだろうなと感じた。

その影響もあるのか、先日から出ていた熱はこの日も変わらず37度5分まで上がっていた。

そのことを心配している、と先生に伝えると、

「まず、長男くんは免疫グロブリン治療を行った影響で、しばらく免疫力がハイパー状態です。

それに加えて咳や鼻水といった症状が全く無いので、ウイルスなどに感染している可能性はとても低いと考えています。

この病棟は室温が高めに設定されていますし、ストレスももちろんあると思います。

ただ、とても元気に過ごしていますし、今のところは様子を見ておく形で良いと思います。」

「免疫がハイパー状態」という言葉に、私が連想したのはゲームの世界だった。

「免疫がハイパーというのは、マリオのスター状態みたいな…?」

それを聞いた医師は、ハハッと笑って

「そうです、そんな感じ。今彼は結構強いんですよ。

ただ、その分予防接種を受けたとしても免疫がつきません。

なので次の予定がある場合は発症から一年後くらいを目安にしたほうが良いですね。」

『予防接種』。

この言葉にドクンと心臓が揺れた。

今回長男が倒れた『急性散在性脳脊髄炎』という病気は、予防接種が引き金となる場合もある。

実際、倒れる2週間程前に長男は一度目のインフルエンザの予防接種を受けていた。

しかし、その後倒れる1週間程まえには咳や鼻水という風邪の症状も出ており、その時に感染していた『ウイルス』と『インフルエンザの予防接種』どちらが原因かは分からないままだった。

「…来年以降予防接種を受けるとして、また同じように倒れてしまう可能性はありますか?」

一番気になっていたことを聞いた。

「そうですね、絶対に無いとは言えません。

ただ、以前お話していた『再発しやすい抗体』が検査で出なければ、長男くんの発病は『たまたま』起こったもの、とみなされます。

急性散在性脳脊髄炎は遺伝で起こりやすい、体質で起こりやすいという病気とは言われていないからです。

最近は再発を繰り返すタイプも出てきていますが、それは経過を見ていかなければ分からないことです。

また、『予防接種を受けて倒れる』ことも心配ではありますが、『予防接種を受けずに病気にかかり重篤な症状を起こす』ことも考慮しなければなりません。

例えばインフルエンザですが、稀にインフルエンザ脳症という症状が出ることもあります。

急性散在性脳脊髄炎とインフルエンザ脳症、どちらも生命に関わる重篤な病気です。

そして、本来どちらの病気も起こる確率はとても低いと言われていますが、発症例はありますね。」

「…なるほど…。」

「もちろん、決めるのはご両親であり本人ですが、私としては今後も予防接種は受けることをお勧めします。」

『予防接種』。

正直重篤な副反応や、後遺症などの部分にばかり目がいっていた。

しかし、行政が主体となって出来るだけ受けるようにとアナウンスしている背景には、それだけ『受けないことで起こるリスク』もあるのだ。

今まで説明文章を読んだり、調べたりしていてもどこか他人事だったのだ、と気がついてしまった。

次男だってまだ色々な予防接種の予定がある。

2人の息子を出来る限り危険に晒すことなく元気に育てたい。

そのためにはもっともっと色々なことにきちんと目を向けられるようになりたいと思った。







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