マガジンのカバー画像

小説

34
こちら時空管理局。何らかの影響によりこのアカウント内に小説が発生してしまった。パルス誘導システムを使用して、マガジンに閉じ込めておいた。もし興味があったら見ておいてくれ。以上
運営しているクリエイター

#超短編小説

不安定小説|ミシシッピアカミミガメ

不安定小説|ミシシッピアカミミガメ

地中から激しく飛び出した俺は、そのまま大気圏を突き抜けて宇宙空間へと出た。多少苦しいものの、なんとか窒息せずにすんでいる。

地球はこんなにも青いのか、と使い古された言葉が、酸素を奪って口から漏れた。大気圏を飛び出した際に、体中に帯びた熱が徐々に冷めていく。途端に、体がブルブルっと震えて俺は大気圏へと再突入を開始した。なんとなく後ろを向くと、東京ドーム3個分の、もしくは、ピンポン玉のような未確認飛

もっとみる
短編小説|運べボール

短編小説|運べボール

 ナガモトがボールを左前方に蹴り出しすと、それに反応するように相手が右足を前に出した。ナガモトがボールの下をポンと蹴り上げると、相手は一瞬にしてボールを見失ってしまった。そして軽々と相手をかわし、何事も。するとすかさず二人の選手が立ちふさがり、示し合わせたようにスライディングでボールを奪いに来た。さすがのナガモトもこれはかわせず、急いで右サイドにいたダウアンにパスを出した。

 ダウアンは、体全体

もっとみる
大超短編小説|ファッションセンス

大超短編小説|ファッションセンス

 ふと、窓が気になった。
 手のひらでカーテンをどけると、暗闇に顔が浮かんでいる。随分と使い込まれたそれは、まぎれもない私の顔だった。その後ろにはガラスに反射した部屋が見える。時計は午前二時過ぎを指して、秒針が逆に動き続けていた。
 丑三つ時か、なんてことを考えていると死んだはずの母親が壁から現れた。さもそこに入り口があるかのように当たり前に入ってきた母親は、生前お気に入りだったヒョウ柄のセーター

もっとみる
ショートショート|ホワイトラン

ショートショート|ホワイトラン

大勢の仲間たちと走り出してから、どれだけ経っただろうか。
足の踏み場もないほどいた俺たちは、もう半分ほどになった。
出発前に話していた友人は、走り出した途端に力尽きてしまい、群衆の中へとあっという間に消えた。

友人といっても、数時間前に知り合っただけで長い付き合いではない。
そしてそれは俺だけに限ったことではなく、ここにいるほぼ全ての俺たちがそうに違いなかった。

数時間前から数日前、同じ場所へ

もっとみる