記事一覧
富士山と息子(本当に短編)
「お母さん、僕の夢は、富士山を爆発させることなんだけど、いいかな」
寝る前に息子が突然、もじもじと伝えてきた。
富士山を爆発か。物騒だな。
「どうして?」
「今日学校で聞いたの。日本で一番おっきいんだって。そんなの、嫌じゃない。」
「嫌なの」
「だって一番だよ。おっきさが、一番だよ?」
息子は富士山がおっきいのが気に食わないらしい。
そういえば、新学期の身体測定のあとから息子は背の順が
隣に住んでる暴れん坊将軍が(本当に短編)
隣に住んでる暴れん坊将軍がうちに訪ねてきた
「どうしても暴れたいのでお邪魔していいですか」
「いやですよ、やめてください」
将軍が今にも暴れて家先で爆発しそうなのでひとまず仕方なく中へ。(庭には大事に育てているサボテンがいて、最近やっと私に並ぶほど大きくなってきた)
お客なので体だけでもと、コーヒーをだすが、今にも暴れだしそうな将軍。口に運ぶ腕を震わしかたかたとコーヒーを鳴らす。
「震えす
見果てぬ旅路の先(小説)
数年前、
医療の最前線に立ちながら技術の進化にも貢献したいと思い、十年続けた臨床医から臨床研究医に転身した。
日中は通常の勤務医と同じように臨床の現場に立ち、仕事の前後で研究のデータ収集や実験、
加えて論文執筆や学会発表など、
とにかく膨大な量の仕事に追われて勤務と研究の両立に忙殺される日々を送っている。
昨夜も徹夜で論文を書き上げてからそのまますぐに早朝から通常の勤務で、一日中診察に来る患者
件(くだん)(小説)
たまたま入った屋台ラーメンで気味の悪いじいさんととなりになった。職業を聞かれて、ライターですと答えると、仕事をやるからと言われてそのままじいさんの職場へ。
「兄ちゃんにはね、記録を録ってもらいたいんだよ。」
「記録ですか?」
「言ったことを、一言一句逃さずに書いとくれ。」
「議事録みたいなことですかね」
まあいいからといって、じいさんが目の前の壁にかかっていた赤い布をはぐと、鉄格子の檻と
耳の中でクモが脱皮していた。(小説)
耳の中でクモが脱皮していた。
数日前から、左耳から絶え間なく
「カリカリ音」が鳴り響いていたので、
耳鼻科に行って検査をしてもらうと、耳の中からクモの抜け殻が見つかった。
それもひとつではなく、小さな抜け殻が複数。
医者もびっくりして
「耳の中で脱皮してる生物なんて見たことない!
大発見だ!」と大興奮していた。
ひとまずその場で抜け殻は全て取り除いてもらえたのだが、肝心のクモ本体が見つか
詩(関係ないんだけど、この花の名前分かる人いますか)
すると君は土の中から這い出てきた
うんしょ、と綺麗な葉を土に押し付けて踏ん張って
土の中から根を出した君は
もう前みたいに立派に立てなくなって
ずるずると、花弁を、葉を、茎を、
たまに崩れながら土の上を這いずって
見せてくれた立派な根は
隠していてごめんなさいと言うけど、
隠すつもりもない顔をしても
隠されたつもりもないよ、
泥んこになって、悲しかった
大きくなったら君にあげようと
ずっと大事
オコメノカミサマ(小説)
大学時代からの習慣で、朝飯や夜ご飯くらいは食べなくとも生きていける体になっていたはずだった。しかし、お盆で実家に帰っていた期間に、なにもせずとも自動的に食事がでてくる生活に慣れきってしまったらしい。土曜日だというのに、朝早くに目が覚め、何かを食べたいという気になった。
冷蔵庫にあるのは、ヨーグルトとチューハイ。そして、昨日食べた牛丼のセットの卵だ。生卵が苦手な私の冷蔵庫には、ケース付きの卵がいく
ジブンタナカ(小説)
自分で言うのもなんだが、俺は陰キャだ。中学のときから友達といえる人は片手で数えられるほどしかいないし、ペア活動のときはお決まりのように余る。そして容姿は黒髪に眼鏡、趣味は漫画やアニメといった典型的なオタクだ。
だが、そんな俺も今日から大学生になる。このキャンパスライフで中高のときのような毎日を送るわけにはいかない。
張り切って前日に美容院を予約し、もさったかった髪を切り、調子に乗っていると思われ