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ヤマアラシ

僕は毎日、ヤマアラシの抱き枕を抱きしめて寝る

今日もこうやって無量の不安をヤマアラシに置き換えて抱きかかえている

悪夢にうなされながら目を覚ます、汗びっしょりの夏の朝

あんなにも果てしなかった無量の不安は消えていて、本当にヤマアラシに染み込んだのかと思う

実際に染み込んだのは僕の汗で、

それでも、もしこのヤマアラシが
毎日毎日語りかけた僕の不安や鬱憤を
全て背負い込んだままなんじゃないかと思うと

いつも可哀想に思う

可哀想に思う、と抱きかかえて寝るが
本当は可哀想なのは僕のことで
どこまでも身勝手な僕のことを許してくれ
どうか君だけは

と、また強く抱き締めて涙を流す


母親に、邪魔だと言われて蹴飛ばしてしまった

あんなに毎日僕の味方でいてくれるヤマアラシを


「ごめんね、蹴飛ばして」


初めて声にして語りかけた


本当に伝わった気がして、
ヤマアラシの怒りも伝わった

君に魂が宿るかもしれない

今夜こそは、本当にそんな気がした

僕、怖いよ。ぎゅってして

僕は僕の惨めをヤマアラシに押し付けた

ヤマアラシは喋らなくなった



ヤマアラシのジレンマってあるじゃない

寄り添い合いたいけれど、
お互いの針が痛くて寄り添い合えないヤマアラシ

仲良くなろうと心の距離を近づけようとしたら、
互いに傷つき合ってしまうから
一定距離以上は近づけないことのたとえ



僕は毎日、君を抱きしめて寝る


今夜もおやすみ、また会おう

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