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3泊4日強盗の旅にようこそ!!|『コラテラル』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「コラテラル」をベースに新しい物語を妄想します。

※「コラテラル」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「コラテラル」は、「か弱き善人が哀れにも悪行に巻き込まれるが、むしろそのおかげで人間的な『成長』を遂げる物語」ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「『コラテラル』 ~『北国ヒッチハイク』編」でした。


案②


嘉村 それでは「案②」にまいりましょう!

三葉 はい。「案②」は、「『コラテラル』 ~『3泊4日強盗の旅』編」です。


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嘉村 ダーツの旅!

三葉 いえ、強盗の旅ですね。

嘉村 なるほど。

三葉 詳細をご説明する前に、「コラテラル」風の物語を作る時に注意すべきポイントを振り返っておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは第1回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、「コラテラル」にしろ、前回ご紹介した「案①」にしろ、大雑把に整理すれば……「【うだつのあがらぬ主人公】が【百戦錬磨の殺し屋】の『仕事』に巻き込まれる物語」と言えるでしょう。

嘉村 ふむ。

三葉 しかし、主人公の相棒は必ずしも「百戦錬磨の殺し屋」、つまり「クールでカッコいいプロフェッショナル」である必要はないと思うんですよ。

嘉村 ほぉ……と言うと?

三葉 ええ。例えば、主人公の相棒がポンコツ野郎だとしても、「コラテラル」風物語は成立し得るでしょう。ということで……「案②」!「コラテラル」と比較すると以下のようになります。


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嘉村 「粗野で頭の悪いヤクザ2人組」……なるほど。「百戦錬磨の殺し屋」とは大違いだ。

三葉 ストーリーをご紹介しましょう。ある日、主人公の青年がコンビニで買い物をしていると……「ゴラー!金を出さんかい!」と怒声。見ると、目だし帽をかぶった2人組がレジの店員にナイフを向けているではないか!強盗である。見紛うことなき強盗である。ひえー……恐ろしい。主人公は、そっとその場にしゃがみ込む。じっとしていれば、すぐに嵐は去るでしょう。商品棚の隙間から様子を伺いつつ、「レジのオッサン、素直に従った方が身のためですよ」だの、「オレも警察に証言を求められたりするのかなぁ」だのと考えていると……ん?何だ、何だ。なぜ強盗がオレの方に近寄ってくるんだ?おい!レジの金を奪い取ったら、すぐに逃走するのが定石でしょ!?えっ、ちょっ、ちょっと!こっち来るな!……しかし主人公の願い虚しく、青い覆面をかぶった男は主人公に一直線に近づいてきました。

嘉村 ほぉ。

三葉 そして声をかけた「おぅ、ニイチャン。車の鍵を出せや」「……えっ、えっ!?」「辺りを見回しても、誰もいねぇよ。お前だよ、お前。お前に話かけてんの」「あっ、あっ……」「駐車場の車はニイチャンのだろ。よぉ、鍵を出せよ。痛い目に遭いたいのか?」。主人公は慌てて鍵を差し出す。青い覆面が受け取る。

嘉村 ふむふむ。

三葉 難は去った……かと思いきや、また一難。もう1人の強盗、すなわち赤い覆面がやってきました「……待て」。青い覆面が訊きます「兄貴、どうしたんだい?」「そいつも連れて行こう」「ん?」「車の運転や、ちょっとした買い物をそいつにやらせることにしよう」「えー、兄貴。こんな腰抜けを連れて行くのかい?パッとしねぇなぁ。車の運転も買い物もオレがやるよ」「お前じゃ目立ちすぎなんだよ。一目でヤクザじゃねぇか」「仕方ねぇじゃん。だってヤクザなんだから!」「不貞腐れんなよ」「だって……」「つまりな、お前は印象に残りすぎるんだよ。サツが『最近怪しい人を見かけませんでしたか?』なんて聞き込みを始めた途端、誰もがお前を思い出すよ。それじゃまずいだろ。オレたちは目立ちたくないんだ」「ふーん」「そこでコイツだ。どうだ?コイツ、印象に残るか?」「んー……すごいや!まったく印象に残らない!」「だろ。存在感皆無だ」「透明人間みたいだね!」「努力して覚えようとしても3秒で忘れちまう顔だ。こりゃあ貴重だぜ。まったく目立たない」「兄貴、わかったよ!コイツを連れて行こう」。赤い覆面が主人公に言う「ってことでよ。ニイサンに恨みはねぇんだが、袖振り合うも他生の縁ってヤツだ。付き合ってくれよな」。

嘉村 なるほど。

三葉 無論主人公は、「なぜオレが!?」「冗談じゃないよ!」とショックを受けますが……相手は刃物を持ったヤクザ。逆らうことはできぬ。渋々従う。

嘉村 ふむ。

三葉 そしてこの2人組の正体や目的は、旅を続ける内に明らかになっていくのですが……ここでは、まとめてご紹介しましょう。すなわち、彼らはヤクザです。赤い覆面が兄貴分、青い覆面がその舎弟。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ある日、2人はドジを踏んでしまった。そうとは知らずに、上位団体の幹部をボコボコに殴ってしまったとか、そんなところですね。兄貴分は小指を詰めて詫びようとしましたが……時代が違う。トラブルは小指ではなく、金で解決する時代です。親分が命じた「いいか。300万だ。1週間で300万用意しろ。それでオレが話をつけてやる」。

嘉村 なるほど。

三葉 300万といえば大金です。下っ端ヤクザには荷が重い。しかもこの2人は、粗野で頭の悪い武闘派でした。

嘉村 うーむ。

三葉 いわゆる「経済ヤクザ」「インテリヤクザ」ではありません。特技は胸倉をつかんでから0.5秒で繰り出す右ストレートです。300万円って……!!2人は頭を抱えた。しかし、いつまでも頭を抱えていても仕方がない。2人はアイデアを出し合う。カツアゲ……300万円貯まるまでに何人ぶん殴ればいいんだ?女を性風俗に沈める……女がいない!ギャンブル……元手がない!クスリ……これまた元手がない!誘拐……卑劣だ。男のやることじゃねぇ。

嘉村 ふーむ。

三葉 こうなったら……こうなったら……強盗だ!強盗しかねぇ!

嘉村 強盗……。

三葉 かくして、3泊4日強盗の旅が始まりました。目標金額は300万円。4日目の朝までに、耳をそろえて組事務所に届けるべし。事情を聞いた主人公は、恐る恐る問うた「あの……もし失敗したら……」。兄貴分があっけらかんと答える「そりゃ死ぬしかねぇわな」「つまり、東京湾に……」「ニイサン、ヤクザ映画の見すぎだぜ。東京湾にドラム缶を沈めたのは、せいぜい90年代までだ。21世紀になってからは、まぁ、山だな。自分で掘った穴に埋められるわけだ」「……」。

嘉村 恐ろしい……。

三葉 主人公が再び問います「あの……ちなみにいま時点でいくら集まっているんですか?」「4万と……おぅ、いくらだっけ?」「兄貴ぃ、オレは算数が苦手なんですよ」「ふむ。まぁ、4万5千円くらいだ」「……えっ?」「ん?何だ?」「えー……つまり、あと295万5千円……?」「おぅ、お前、計算が早いじゃねぇか」「……さっきのコンビニ強盗が1件目だったんですね」「その通りだ」「あの……」「何だよ」「もしかして、この後もコンビニ強盗を繰り返して300万円集めようと計画されてます?」「いや、コンビニだけじゃねぇよ」「ですよねぇ!ってことは、やっぱり銀行とか宝石店とか……」「バカヤロウ。オレたちはヤクザだ。盗みは専門外。そんな警備のしっかりしたところを狙えるかよ」「……」「オレたちが狙うのは、コンビニ、ラーメン屋、ガソリンスタンド、田舎の小さな商店。まぁ、そんなところだな」「……」「1件あたりのアガリが小せぇのは承知の上だ。1件5~10万のアガリとして、1日15回ほど仕事をすりゃあいい」「つまり、3日で45回……」「おぅ。しかし、いくら何でも同じ街で45回も強盗をするわけにはいかねぇからよ。北へ南へ移動しながら仕事をしていこうって算段よ」「なっ、なるほど……」。

嘉村 うーむ。何というか……すごい計画ですね。

三葉 まぁ、頭の悪いヤクザですから。

嘉村 なるほど。

三葉 舎弟が兄貴分に憧れのまなざしを送る「兄貴はすげぇよ。オレなんて、ついついガバッといきたくなるもんな」「それがお前の悪いクセよ。人生、コツコツいかにゃならんぜ」「さすが兄貴!よぉ、お前もそう思うだろ?」「えっ、ええ。本当に……」「まぁよ。効率は悪いが、これも急がば回れってヤツよ。ヤクザたるもの、カタギになるべくご迷惑をおかけしねぇように注意しなけりゃならねぇ。他の極道とゴタゴタを起こすわけにもいかねぇ。そうなると、このコツコツ強盗作戦がベストってわけよ」。

嘉村 あー、アホはアホなりに考えているんですね。

三葉 ええ、そうですね。彼らもヤクザなりの矜持というか、心意気は持っている。したがって最初の頃、彼らはある意味では紳士でした。ナイフで脅して金を奪うだけ。誰かを傷つけることはない。

嘉村 ふむ。

三葉 しかし……期限が迫ってくる。金は貯まらない。焦りが出る。ヤクザとしての矜持なんてすっかり忘却してしまう。彼らはドンドン乱暴になっていきます。

嘉村 ほぉ。

三葉 道行く老婆を突き飛ばして財布を盗んだり、焦燥感を鎮めるために女性をレイプしようとしたり。

嘉村 ふーむ。

三葉 一方主人公は、旅の中で「成長」していきます。彼は元々、うだつのあがらぬ青年でした。頭でっかちで、行動力や決断力を欠く。口ばかりで腰が重い。心配性で、いつもオドオド。

嘉村 ふむ。

三葉 しかし、ヤクザ2人組との旅が彼を変えた。バカでアホな連中が、バカでアホながらも着実に「仕事」をこなしていく。期限が迫る中、何とかして目標を達成しようとあがく。……無論、彼らのやっていることは犯罪です。極悪であり、非道です。しかし、その「何が何でもやり抜こう」という覚悟や、ど根性には学ぶものがある。主人公は次第に感化されていきます。……考えてみれば、オレはこれまで人生から逃げていたのかもしれない。ブーブー文句を言うだけで、自ら手を汚すことはなく、事なかれ主義だった。例えば……いまだってそうだ。ヤクザ2人組が強盗を繰り返している。老婆を突き飛ばしてなけなしの金を奪い、若く美しい女性の心に深い傷をつけようとしている。で、オレはこの3日間何をしてきた?彼らの行動に憤り、被害者に同情してきた。しかし結局のところ……オレは今日もハンドルを握り、そして彼らの命じるがままに食料を調達したりしているではないか!犯罪の片棒を担いでいるも同然だ!オレは傍観者を気取り、いつの間にか共犯者になっていた!

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして……主人公は腹を決めます。オレがこいつらを止める。もうこれ以上被害者を増やさない!……チッ、チクショウ。刃物を持ったヤクザ2人組を相手に大立ち回りを演じようとするなんて、オレはバカか?いつからそんな向こう見ずになった?しかし……ええい、ままよ!ということで、主人公はヤクザ2人組と対決し、死闘の末に勝利します。こうして主人公は、「1人前の男」に成長したのでした。……で、物語はおしまいです。

嘉村 なるほど。

三葉 以上、「『コラテラル』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 「コラテラル」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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