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北国のロクデナシ v.s ユーモアを解する殺し屋!!|『コラテラル』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「コラテラル」をベースに新しい物語を妄想します。

※「コラテラル」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「コラテラル」は、「か弱き善人が哀れにも悪行に巻き込まれるが、むしろそのおかげで人間的な『成長』を遂げる物語」ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「コラテラル」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 要するに「コラテラル」は……【ロサンゼルス】で、【うだつのあがらぬタクシー運転手】が【百戦錬磨の殺し屋】の「仕事」に巻き込まれる物語です。もしもいまリメイクするなら、「主人公はタクシー運転手ではなくて、Uber(ウーバー)の運転手になるのかな?」なんて空想したりするわけですが……それはさておいて。

嘉村 はい。

三葉 これ、舞台を日本に移しても面白くなると思うんですよ。例えば……【雪の降る北国】で、【うだつのあがらぬタクシー運転手】が【百戦錬磨の殺し屋】の「仕事」に巻き込まれる物語!

嘉村 なるほど。

三葉 ただ、さすがにこれでは「コラテラル」の丸パクリになってしまうので、「案①」は……「『コラテラル』 ~『北国ヒッチハイク』編」!


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嘉村 ヒッチハイク!

三葉 ええ。「タクシー」の代わりに「ヒッチハイク」です。「コラテラル」と比較すると以下のようになります。


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三葉 ストーリーはこんな具合です。すなわち……ある日、北国に1人の殺し屋がやってきた。彼はその日の内に、5人のターゲットを始末することになっている。

嘉村 ふむふむ。

三葉 殺し屋はのと里山空港に降り立ち……。

嘉村 あっ、舞台は石川県なんですね。


三葉 依頼主が事前に用意しておいてくれた車に乗り込む。彼は自ら車を運転してあちこち回り、ターゲットを片付けていく予定でした……が!山道を走っていると、突如目の前に黒い影が現れた。さすがの殺し屋もこれには仰天。慌ててハンドルを切り、車は山肌に激突して停まった。殺し屋は幸い無傷です。はて、あの影は一体何だったのか。目を凝らすと……嗚呼恐ろしい!それはヒグマだった!


嘉村 ヒグマ!……石川県に生息していましたっけ?

三葉 まぁ、しているんじゃないですかね。

嘉村 ふーむ。

三葉 ヒグマといえば、わが国最大の陸棲哺乳類です。体長は3m、体重は500kg。そして強力な顎と鉤爪!人間が対峙してどうにかなる相手ではない。これにはさすがの殺し屋もひとたまりもない……かと思いきや、さにあらず。真に恐ろしきは殺し屋だった。彼はどこまでも冷静に、そして冷徹に、弾丸一発でヒグマの眉間を撃ち抜いた。ヒグマが絶命する。危機は去った。……が、しかし困った。車のエンジンからは白煙が上がっている。修理は難しそうだ。かといって、土地勘もないのに歩いて殺して回ることはできぬ。第一、寒くて凍えそうだ。殺し屋が呟く「まったくクマったものだ……」。

嘉村 ……はっ?

三葉 「まったくクマったものだ……」。

嘉村 ……。

三葉 つまり、ユーモアを解する殺し屋なんですよ。

嘉村 ははぁ……。

三葉 まぁ、それはいいとして……さて、ここからが本番です。殺し屋がクマっていると、1台の車が近づいてきました。殺し屋は思う。こりゃいい。運転手を殺してあの車を奪い取り……いや、山道は複雑だ。地元の人間に運転させた方がいいだろう。ヒッチハイカーを装って車に乗り込み、運転手として使役してやろう。なぁに、銃を突きつければ誰だって逆らえぬさ。

嘉村 ふむふむ。

三葉 とまぁこうして、偶然車でその場を通りかかった主人公は、殺し屋の「仕事」に巻き込まれることになったわけです。

嘉村 なるほど。

三葉 そしてこの主人公というのが、じつにうだつのあがらぬ男でしてね。

嘉村 「コラテラル」の主人公(タクシー運転手)同様ですね。

三葉 そうですね。30代後半の中年男で、未婚で恋人もいない。実家で親と同居しており、ついでに童貞。趣味は深夜アニメの鑑賞。

嘉村 ふーむ。

三葉 主人公は、「オレの人生は18歳でコケたんだ」と思っています。18歳……彼は大学進学に合わせて上京しました。が、どうにも都会暮らしに馴染めず、友だちの1人も作れず、すぐに通学しなくなってしまった。悶々としながらゴロゴロと過ごし、時々パチンコに行っては仕送りの金をする。そんな生活が長く続くはずもなく……間もなく中退。実家に戻ってきた。そして数年間のニート生活を経て、いまは地元の食品工場で非正規労働者として働いています。

嘉村 なるほど。

三葉 彼は、すべてに嫌気が差していました。例えば……まったくもって、両親が鬱陶しい。「まともな仕事に就け」だの「早く孫の顔を見せろ」だの、うるせぇんだよ!

嘉村 ふーむ。

三葉 昔馴染みにもうんざりです。地元に残っている友だちの大半は就職し、結婚し、子どもだっている。コンビニやイオン、パチンコ屋で偶然会おうものなら、地獄です。彼らは言うのです「○○に3人目の子どもが生まれたらしいぜ」「聞いたか?□□がオヤジさんの後を継いで社長になったってよ」「△△の浮気が嫁さんにバレたらしいな。まったくアイツも女好きだよな」。彼らにとってはただの世間話なのでしょうが……結婚、妊娠・出産、仕事……主人公は「うるせぇ!死ね!」と思う。

嘉村 まぁ、気持ちはわかりますねぇ。

三葉 主人公は親も、同級生も、故郷も全部大嫌い。滅べばいいと思っている。しかし、だからといって実家を出ることはない。故郷を出ることもない。彼は、心の中にどす黒いものを抱えたまま日々を過ごしているのでした。

嘉村 うーむ……要するに行動力がないというか、甲斐性がないというか……。

三葉 ええ、口だけ野郎ですね。

嘉村 ふむ。

三葉 一方の殺し屋は、容赦ない男です。ターゲットがどれほど泣き喚き、助命を乞おうが、彼の心はピクリとも動かない。ただただ殺していくだけ。

嘉村 ふむふむ。

三葉 当初、主人公は取り乱しました。こっ、殺し屋!?オレが殺し屋をターゲットのもとまで運ぶの!?冗談じゃない!……が、銃で脅されてはいかんともしがたい。致し方がなくハンドルを握る。そして行動を共にする内に……主人公は、徐々に「成長」していきます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 やがてクライマックス。ひょんなことから、話は主人公の「将来の夢」に及びます。主人公は言う「じっ、じつは昔、アニメの声優に憧れていたことがあって……」。

嘉村 ほぉ、声優ですか。

三葉 18歳の頃……アニメ好きの彼は、声優の専門学校に関心を持っていました。しかし、実際に進学したのは4年制大学。その時彼は、「アニメは趣味さ。仕事にしては、心から楽しめなくなってしまう。だから声優にはならないんだ」と周囲に吹聴していましたが……それは言い訳に過ぎません。本当は、彼は怖かったのです。声優になるのは難しい。あまりにも競争が厳しい。オレには無理だ。どうせ無理さ……彼は挑戦することなく、逃げた。そして、その時のことをいまも引きずっていました。もしも……もしもあの時、専門学校に進学していたらどうなっていたのだろう?オレの人生は変わっていたはずだ。声優になれたかもしれない。声優が無理でも、いまよりはマシな人生だったのでは?……しかし、後悔とは過去の自分の過ちを認めること。それは苦しいものです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 結局のところ主人公は、挑戦するでもなく、かといってスッパリ諦めるでもなく、過去の過ちを認めることもできず、いまも苦々しい気持ちを抱えたまま、宙ぶらりんな状態だったのです。

嘉村 なるほど。

三葉 主人公は言う「まっ、まぁ……声優なんてギャンブルみたいなものですからね。本気で声優を目指すなんて、正気の沙汰じゃありませんよ。ハハッ。ハハハッ」。沈黙。殺し屋は黙っている。主人公は気まずい。しばらくしてから、殺し屋が乾いた笑い声を漏らしました「クククッ。参った、参った。そこまでいくと立派なものだぜ。文句を並べるだけ並べて、何もしない。口から出るのは呪詛ばかり。傍観者気取りでな。クククッ。お前はかわいそうなヤツだよ。いや、貶しているんじゃねぇよ。人間味があっていいと思うぜ、お前みたいなヤツ。愛すべきロクデナシだ。だがな、覚えておけよ。少なくとも、闘ってもいねぇお前には、闘う連中を笑う資格はねぇよ」。

嘉村 中島みゆきさんみたいなことを言いますね。


三葉 主人公はショックを受ける。……貶された方が100倍マシでした。バカにされた方が1000倍マシでした。ところが、人を殺めてメシを食うクソ野郎に理解され、同情されてしまった!これは堪える。

嘉村 なるほど。

三葉 とはいえ……殺し屋の言うことはもっともです。確かに傍観者を気取り、呪詛を並べることしかしてこなかった。例えば……いまだってそうです。主人公は「人殺しなんてとんでもない!」「なぜオレが!?」と悲鳴を上げながら、結局は殺し屋をターゲットのもとに運んでいる。殺しの片棒を担いでいると言っても過言ではないでしょう。

嘉村 確かに。

三葉 しかし、主人公は「成長」しました。彼はいまや、自分が逃げてばかりだったこと、人のせいしてしてばかりだったこと、自分で何とかしようとしてこなかったことを自覚しました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さらに……どんなトラブルが起きようとも慌てず騒がず、冷静にターゲットを始末する殺し屋の姿を間近で見てきました。その行動力、その突破力、そのやり抜く力!

嘉村 ふむ。

三葉 殺し屋の行動に、そして言葉に刺激を受けた主人公は腹を固めます「オレがこいつを止める!」。かくして、主人公と殺し屋の戦いが始まり、やがて主人公が殺し屋の息の根を止める。主人公は1人前の男に「成長」したのでした……というところで、物語は幕を閉じます。

嘉村 なるほど。

三葉 以上、「『コラテラル』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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