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クソ野郎かと思いきや……お前、本当はいいヤツなの!?|『クラッシュ』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「クラッシュ」に登場する「ライアンの物語」をベースに新しい物語を妄想します。


※【参考】「クラッシュ」の作品概要などはこちら


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。「クラッシュ」は、人種差別をテーマにした群像劇です。

嘉村 ええ。

三葉 そして、「群像劇」というからには作中に複数の物語が登場するのですが……その内の1つが「ライアンというキャラにまつわる物語」。今回は、この「ライアンの物語」のストーリー構造を利用して、新しい物語をアレコレ考えてみましょう!

嘉村 承知しました。

三葉 まずは、「ライアンの物語」の概要を振り返ります。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。


案①


三葉 さて、以上を踏まえて「『ライアンの物語』をリスペクトした物語案①」ですが……。

嘉村 はい。

三葉 ズバリ!「『一見するとゲイを差別するクソ野郎だが、本当は悪いヤツじゃないのかも……』という中学生の物語」です。


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嘉村 ほぉ!

三葉 まずは、「ライアンの物語」と比較してみましょう。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は男子中学生。彼は……クソ野郎だった!

嘉村 ふむ。

三葉 ある日、主人公ら男子生徒が車座になり、好きな女の子の話をしていた時のことです。すなわち、「お前は誰が好き?」「お前から言えよ!」「えっ!オレかよ!オレは……○○さんだけど……」「うわっ、趣味悪!」「うるせぇ!そういうお前はどうなんだよ!」「オレは……□□先生だ!」「何だよ、ババア趣味かよ!」「聞き捨てならねぇなぁ!」なんて具合ですね。

嘉村 まさに青春ですね。

三葉 ええ、甘酸っぱい青春です。

嘉村 なるほど。

三葉 そんな中、主人公の友人の1人(以下、Aくん)が打ち明けたのです「僕は△△先生かな」。その瞬間、一同水を打ったように静まり返る。なぜなら……そう!Aくんが口にしたのは男性教師の名だったのです。

嘉村 ほぉ。

三葉 こうして、Aくんがゲイだということが明らかになりました。友人らは戸惑いつつも、特に嘲ったり、侮辱したりすることなく受け入れる。……まぁ、令和時代の子どもですからね。よくも悪くもクールでクレバー。同性愛者を露骨にはやし立てるようなことはしません。

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかし……何事にも例外はある。すなわち、主人公だけは違った!その日から、彼はAくんに強く当たるようになったのです。直接暴力をふることはないものの、仲間外れにしたり、聞こえよがしに悪口を言ったり、学校中に「あいつはゲイだ!気持ち悪っ!」「男子は気をつけろよ!襲われるぞ!」なんて吹聴したり、さらにAくんの教科書に卑猥な落書きをしたりする。

嘉村 ふーむ。中学生といえば、やっていいことと悪いことの分別がつく年頃でしょうに……クソですねぇ。

三葉 おっしゃる通り、彼はクソです。性的マイノリティを差別する悪人です。ところが次第に……主人公が、Aくんをはじめとするゲイを嫌悪する理由が明らかになってくる。

嘉村 ほぉ……一体何です?

三葉 主人公の両親は、主人公が小学生の頃に離婚していました。

嘉村 まぁ、いまの時代さして珍しいことではありませんよね。

三葉 離婚の理由は、父の不倫です。

嘉村 うーむ……まぁ、これもよく聞く話ですね。

三葉 しかし!一口に「不倫」と言っても、それはただの不倫ではなかった。相手が男性だったのです。

嘉村 つまり……主人公の父はゲイだった?

三葉 その通りです。不倫の発覚後、父が告白したところによると……彼は幼い頃から男性に恋愛感情を抱いていた。しかし、彼は自分の性的指向を受け入れられなかった「まさか……そんな!オレがゲイだなんて……そんなことあるわけがない!」。彼は、幼い頃から1人で悩み続けた。そして20代半ばになり、手近なところにいた女性と結婚した。それが主人公の母です。彼は、10年以上連れ添った妻にいま初めて本音を打ち明けた「本当にすまない。家族としての情はあるんだ。しかし……それは愛ではない。いつか愛が芽生えると思っていたが……無理だった。オレは女性を愛せないんだ……」。

嘉村 なるほど……。

三葉 かくして、父は出ていった。離婚後、母は毎日泣いて過ごした。激しい鬱状態になり、息子の前でも感情を抑えられないようだった。

嘉村 ふーむ……無理ないですね。恋愛し、結婚し、家庭まで築いたパートナーに、「これまで1度たりとも愛を感じたことがなかった」なんて告げられたら……それはショックですよ。

三葉 まったくね。

嘉村 ええ。

三葉 そして……みなさんご存知の通り、すべての男性はマザコンです。母を愛している。しかも、それが幼い頃となれば尚更です。主人公も例外ではありません。彼は、母を愛していた。彼は、母を泣かせた男を許せるでしょうか?いや、許せるはずがありません。かくして、彼はゲイに対して強い嫌悪感を抱くようになったのでした。

嘉村 ははぁ……無論、だからといって性的マイノリティを侮蔑していいことにはなりませんが……同情の余地はあるかもしれませんね。一概に「主人公は悪!」とは言えないかも……。

三葉 ええ。

嘉村 ふむ。

三葉 そんなある日、街を歩いていた主人公は、Aくんのピンチに偶然遭遇します。すなわち……Aくんが、見るからにヤバそうな連中に囲まれている。おそらく恐喝でしょう。Aくんは女性的な部分があり、時にナヨナヨして見える。だから、金を脅し取ろうとする連中にはいいカモだったのでしょう。

嘉村 ほぉ。

三葉 さて、主人公はどうするでしょうか?Aくんを嫌っている彼のことです。当然素通りする……かと思いきや、彼はAくんの元に駆け寄る。そしてAくんを背中にかばい、不良らと対峙する。殴り合いになる。主人公は善戦する。しかし多勢に無勢。ボコボコにやられる。やがて不良らは去る。主人公は立ち上がり、唾を吐く。血が混じっている。全身が痛む。そんな彼を、Aくんが少し離れたところから見つめている。Aくんの瞳は、「一体なぜ?なぜ、きみは僕を救ってくれたの?」と問うている。当の主人公も当惑していた。なぜ自分が危険を冒してまでAくんを救ったのか、彼自身にもわからなかったのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかし、私たち鑑賞者にはわかっている。……そう、主人公は悪人ではないのです。根はいいヤツ。だから、クラスメイトのピンチを放っておけなかった。この先、主人公がどうなるかはわかりません。明日になれば、またAくんを侮蔑するクソ野郎に逆戻りしてしまうのかもしれない。しかし!この主人公ならきっと変われる。不幸を乗り越え、性的マイノリティと対等に付き合える日がやってくるに違いない……そんな希望を漂わせつつ、物語は幕を閉じます。

嘉村 なるほど!


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「『一見すると男性を差別するクソ女だが、本当はいいヤツなのかも……』という女性の物語」です。


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嘉村 今度は男性差別!

三葉 ええ。まずは、「ライアンの物語」との比較表をご覧ください。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は女性転生者で、舞台は異世界。……そう!これは「異世界転生もの」のアイデアです。


嘉村 ふむふむ。

三葉 主人公ら女性転生者は、転生時に神から授かったチート能力をフル活用し、素晴らしい世界を築いていました。

嘉村 ほぉ。

三葉 しかし、「素晴らしい世界」と言ってもそれは「女性にとっての素晴らしい世界」であって、では男性にとってはどうかと言うと……ズバリ地獄だった!

嘉村 地獄!

三葉 ええ。と言うのも、どうしたことか、神からチート能力を授かるのは女性のみ。男性は、着の身着のままで転生してくる。性別によって、スタートラインがまったく違うのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 女性転生者は協力し、幸福に暮らしていました。一方、男性転生者は?彼らは、「下級市民」として扱われている。あくまでも「労働力」。要するに……そこは、女性が牛耳る「女性上位の世界」だったのです。

嘉村 なるほど。

三葉 男性には厳しい世界です。最低限度の賃金で働かされ、少しでも気を抜こうものなら鞭で打たれる。万が一にも逆らったりしたら、市中引き回しです。かと言って、どれだけやる気を出しても報われることはない。何しろ、女性でなければ出世できぬ世界なのですから。

嘉村 つまり、主人公を筆頭に、この世界の女性は総じて性差別者……。

三葉 ええ、その通りです。……が、しかし!何事にも理由はあるものです。次第に、彼女らがなぜ男性を差別するのか、その理由が明らかになっていきます。すなわち、彼女らは、転生する前の世界では性犯罪や性差別の被害者だったのです。ある者は男性からレイプされ、別の者は痴漢に苦しんでいた。また、「女性だから」という理由だけで、学校や職場で冷遇されていた者も少なくない。

嘉村 ははぁ……つまり、男性に対する差別は、彼女らの復讐なんですね。

三葉 ええ。「江戸の敵を長崎で討つ」ならぬ、「元の世界の仇を異世界で討つ」ですね。かくして多くの鑑賞者は、主人公ら女性転生者に同情し、「彼女らが、男性にきつく当たるのも無理ないかも……」と感じることでしょう。

嘉村 ふむ。

三葉 そして、物語はクライマックスに進みます。……ある日、街外れの作業場にドラゴンが襲来!ドラゴンは恐ろしい存在です。チート能力を持つ女性転生者が束になっても敵わぬかもしれない。

嘉村 ほぉ。

三葉 女性転生者らは、飛行能力や瞬間移動能力などのチート能力を使って避難する。ところが……男性転生者はそうもいかない!

嘉村 あー……彼らは能力を持っていませんもんね。

三葉 ええ、その通りです。彼らはただただ悲鳴を上げ、逃げ回ることしかできないでいる。……このままでは、彼らは皆殺しにされるでしょう。哀れなことです。しかし、所詮は男性。この世界では下級市民に過ぎません。どうなろうと知ったこっちゃない……はず。ところが、一度は安全な場所に避難した女性転生者らが間もなく作業場に戻ってきて、ドラゴンと戦い始めるのです。死闘の末、主人公らはドラゴンを追っ払うことに成功する。

嘉村 ふむふむ。

三葉 はて、一体なぜ彼女らは、自らの命を賭してまで男性転生者を救おうとしたのでしょうか?……答えは簡単。彼女らは、一見クソに見える。しかし、その心までクソ色に染まっているわけではない。根はいいヤツらだったのです。だから、憎き男性といえども、人が食い殺されるのを見過ごすことはできなかった。

嘉村 なるほど。

三葉 以上、「『ライアンの物語』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!



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(担当:三葉)

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