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ヤクザ映画とは思えぬ「色使い」がすごい♥|『東京流れ者』に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「東京流れ者」に【魅力的な色使い】を学びます。

※「東京流れ者」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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ヤクザ映画とは思えぬ「色使い」に注目!!


「到底ヤクザ映画とは思えぬ、カラフルでキッチュな色使い!」……これが、本作の特徴の1つです。


デイミアン・チャゼル(映画監督。代表作は「ラ・ラ・ランド」)は、本作を「ポップアートのような色合い」と評しています。


また映画に詳しい方なら、「さすがは鈴木清順監督の作品だ」と嬉しくなってくる色使いと言えるでしょう。


カラフルな世界【例1】


「カラフルでキッチュな色使い」が特に顕著なのは、登場人物のファッションです。


例えば主人公の哲也を見てみると……

▶ ジャケット、ズボン:水色

▶ コート、カバン、手袋:

▶ ネクタイ:グレー


哲也は、広い空の下を放浪する「流れ者」です。ゆえに水色(= 空色)がテーマカラーなのかなと推測されますが……まぁ、ヤクザの格好ではありませんよね。


ちなみに、哲也の家の壁紙もカーテンも電話機も、さらには彼が使う公衆電話も水色に統一されています。


カラフルな世界【例2】


続いて、大塚組(哲也が敵対する組)の組長のファッションをチェックしてみましょう。

彼が着用しているのは……真っ赤なジャケット!

それも、臙脂色とかワインレッドとかいった渋い色ではなくて、目が痛くなってくるような赤色です。ヤクザの組長というよりも、まるで奇術師。


なお、大塚組の事務所の灰皿も赤色、電話機も赤色です。


カラフルな世界【例3】


ファッション以外にも、様々なところで「色へのこだわり」が見受けられます。

例えば……

▶ ビルの配管(エアダクトなど)が赤色、青色、黄色、緑色と、やたらにカラフル

▶ ジャズ喫茶の壁が紫色

▶ 真っ白い雪原に、突如真っ赤なポストや赤ちょうちんが立っている


ところがクライマックスでは……


とまぁカラフルな本作ですが……ところがどっこい、最後の最後、「ナイトクラブを舞台に、哲也が敵と銃撃戦を繰り広げるクライマックスシーン」では雰囲気が一変します。


<1>

まず、彼らが戦う舞台が奇妙なのです。

▶ 天井も床も壁も、真っ白

▶ 部屋の各所に、真っ白い階段、真っ白い柱、真っ白いグランドピアノ、真っ白いテーブルと椅子、真っ白い照明などが配置されている


……つまり、ナイトクラブとは思えぬ真っ白な空間。

「抽象的」というか「前衛的」というか、そんな非現実的な場所で、哲也は敵と対峙することになります。


<2>

また、登場人物のファッションも一変します。

▶ 哲也:ジャケットからネクタイ、そして靴まで真っ白

▶ 敵:ジャケットからネクタイ、そして靴まで真っ黒(シャツのみ白)


上述の通り、哲也のテーマカラーは水色です。しかし、クライマックスでのみ、彼は全身真っ白になる。

もうね、結婚式の新郎ですよ。


一方敵は、全員が真っ黒

大塚組長も例外ではありません。真っ赤なジャケットではなく、礼服のようなスタイルになっている。

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つまり、「真っ白な舞台」で、「真っ白な哲也」が「真っ黒な敵」と対決する……これが本作のクライマックスなのです。


本作の特徴は「色使いのギャップ」


本記事の冒頭で、「本作の特徴 = 到底ヤクザ映画とは思えぬ、カラフルでキッチュな色使い」と申し上げました。

しかし、それだけではありません。

「『カラフルでキッチュな色使い』と、『クライマックスのシックな色使い』のギャップ」もまた、本作の特徴と言えるでしょう(というか、クライマックスを引き立てるために、敢えて過剰にカラフルな画面作りを目指したのではないかという気がします)。


以上をまとめると……

・1:その作品らしからぬ色使いをする(ヤクザ映画なのにカラフルでキッチュ)

・2:作中の一部のみ、ガラリと異なる色使いをする(クライマックスだけシック)


みなさんも試してみてくださいねー!!


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(担当:三葉)

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