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「半径○m以内の敵は皆殺し★」というキャラの作り方!!|『東京流れ者』に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「東京流れ者」に【「半径○m以内では最強」というキャラの作り方】を学びます。

※「東京流れ者」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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哲也のガンプレイに注目!!


本作の主人公は、哲也。

彼はつい最近引退したものの、長年ヤクザでした。「不死鳥の哲」という二つ名を持ち、拳銃の名手として知られていた。


そんな哲也のガンプレイが、本作の見どころの1つです。

本記事では、彼のガンプレイに注目してみましょう。


哲也の腕前


哲也の特徴は、「有効射程距離 = 10m」ということ。

作中では明言されていませんが、どうやら哲也は10m以内のターゲットに対しては百発百中の腕前を持っている様子です。

つまり、「半径10m以内では最強」というわけですね。


※補足:「有効射程距離 = 10m」と聞くと、「案外短いんだな」と感じる方もいるかもしれません。しかし、実戦で10m先のものに命中させるのは相当の腕前のようです。


【Point①】敵との「距離」を上手く表現することで、鑑賞者に興奮してもらう


まずは、「南組の事務所での戦い」(映画開始から45分50秒経過した場面)を見てみましょう。


敵はおよそ20人。全員がヤクザで、銃やらドスやらを携帯しています。彼らは、哲也を待ち構えている。


対する哲也は1人きり。彼は物陰に隠れ、素早く辺りを見回した。何かを探しているように見える。

何を探しているのか?

……「目印」を探しているのです。

やがて彼は、ゲタを見つけた。そして思う「よし、あのゲタは敵から10mほどのところにある。つまり、あのゲタのところまで行けばオレの勝利だ!」


かくして哲也は、ゲタに向かって駆け出していきました。

敵の銃弾が彼を襲います。鑑賞者はハラハラドキドキです。果たしてゲタまでたどり着けるのだろうか……!?

哲也は床に伏せたり、床を転がったりして銃弾を避けつつ前進する。やがてゲタに到着。鑑賞者はガッツポーズをするでしょう「よっしゃ、有効射程距離に入ったぞ!」。

そう、ここまで来ればあとはやりたい放題です。哲也は引き金を引いて、引いて、引きまくり、敵を血祭りにあげていく。

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さて、このシーンに使われているテクニックを整理すると……

・1:「ゲタまでたどり着けば勝利」というシンプルでわかりやすい勝利条件を示す

・2:「哲也は無事たどり着けるだろうか?」と鑑賞者にハラハラドキドキしてもらう

・3:哲也が勝利条件を達成。鑑賞者に喜んでもらう


ポイントは「ゲタ」です。

ゲタというわかりやすい目印があるからこそ、「哲也は有効射程距離に入れるのだろうか?」「まだだ!まだ遠すぎる!」「よーし、いいぞ!もう少し!」「やった!ついに10m以内に入った!」などと、鑑賞者に興奮してもらうことができるのです。


もしゲタがなければ?

鑑賞者は、「哲也と敵との『距離』」を把握できなくなってしまう。

ゆえに、「哲也が勝利するのを見て、ようやく彼が有効射程距離に入っていたことを知る」ということになる。

鑑賞者がハラハラドキドキすることはないでしょう。「いつの間にか有効射程距離に入っていたんだ。ふーん。あ、そう……」なんて具合に冷めてしまうはずです。


【Point②】敵に近づく方法


続いて、「ナイトクラブ『アルル』での戦い」(映画開始から1時間17分5秒経過した場面)を見てみましょう。


舞台は広い部屋。あちこちに敵が潜み、哲也の出方を伺っている。

対する哲也は、ここでも1人きり。彼は物陰に身を隠している。


緊迫感漂う中……哲也がふいに拳銃を投げ捨てました。拳銃はスーッと床を滑り、部屋の真ん中辺りで止まった。

敵は戸惑う「一体何事だ!?」「なぜヤツは拳銃を捨てたんだ?」「降伏する気か?」。彼らはポカンとする。


と、次の瞬間です。哲也が拳銃に向かって駆け出した。

敵は哲也を撃とうとして、あるいは哲也が放り投げた拳銃を先に拾おうとして、慌てて物陰から飛び出してきました。しかしポカンとしていた分、反応が遅れた。その一瞬の遅れが致命的だった。

哲也が素早く拳銃を拾い上げた。そして引き金を引きまくる。

かくして敵がバッタバッタと倒れていく……!

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哲也がなぜ拳銃を放り投げたのか、おわかりでしょうか?

……そう、敵が遠すぎたのです。

哲也の有効射程距離は10m。そこまで敵に接近する必要がある。しかし、敵は臨戦態勢。銃を構えている。迂闊に近づくことはできない。


だから哲也は……

・1:拳銃を部屋の真ん中辺り(= 部屋の中に潜むすべての敵が有効射程距離に入る位置)に向かって放り投げた

・2:敵が戸惑い、隙が生まれる

・3:その隙を突いて哲也は駆け出し、部屋の真ん中へ

・4:哲也は拳銃を拾い上げ、そして敵を皆殺しにした


まとめ


以上、哲也のガンプレイをご紹介してきました。


ざっくりまとめると……

1:主人公は、スーパーパワーを持っている(拳銃の名手)

2:しかし彼の能力は、半径10m以内の敵にしか使えない(有効射程距離は10m)

3:主人公は、敵に接近すべく工夫を凝らす(拳銃を部屋の真ん中あたりに放り投げる)


これ、いろいろと応用が利きそうですよね!

例えば、哲也を「異能力バトル」の世界に転移させ、拳銃の代わりに刀を握らせれば……まぁ、大体「HUNTER×HUNTER」のノブナガになる(彼は、「半径4m以内に入った敵は即座に斬り殺す」というキャラです)。


キャラを考案する際に、ぜひ参考にしてみてくださいねー!!


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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