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動物愛護精神に囚われた男の末路は悲惨!!|『クラッシュ』(4)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「クラッシュ」に登場する「トムの物語」をベースに新しい物語を妄想します。


※【参考】「クラッシュ」の作品概要などはこちら


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。「クラッシュ」は、人種差別をテーマにした群像劇です。

嘉村 ええ。

三葉 そして、「群像劇」というからには作中に複数の物語が登場するのですが……その内の1つが「トムというキャラにまつわる物語」。今回は、この「トムの物語」のストーリー構造を利用して、新しい物語をアレコレ考えてみましょう!

嘉村 承知しました。

三葉 まずは、「トムの物語」の概要を振り返ります。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。


案①


三葉 さて、以上を踏まえて「『トムの物語』をリスペクトした物語案①」ですが……。

嘉村 はい。

三葉 ズバリ!「一見すると性差別を嫌う『理想の上司』だが、じつは『性差別はダメ!絶対ダメ!』という考えに囚われて現実が見えなくなっているだけで、結果的に悲劇を引き起こしてしまう男性の物語」です。


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嘉村 ほぉ!

三葉 まずは、「トムの物語」と比較してみましょう。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は男性会社員です。30代中頃で、マネジャーとか課長とかそういった類の中間管理職に就いている。そんな彼は……性差別を嫌う「理想の上司」だった!

嘉村 ほぉ。

三葉 「男性だから○○」「女性だから□□」だなんてことは、決して言わない。男女を問わず、対等に接する。無論、女性を侮蔑するようなジョークを口にすることもない。

嘉村 ふむふむ。

三葉 あるいは、酒の席でのこと。酔っぱらった重役が、若い女性社員にセクハラめいたことをする。

嘉村 ふーむ。

三葉 ほら。いまのご時世、大っぴらにセクハラをする人は少ないと思いますが……アルコールが入るとたがが緩む人はいますよね。「ただのジョークだよ」「酒の席で無粋なことを言うなよ」なんて言葉を免罪符にして。

嘉村 あー、確かに。

三葉 しかし、この主人公は違う!スッと席を立ち、重役と女性の間に割って入る。そして、お世辞の1つや2つも並べて重役を気持ちよくさせつつ、女性を背中にかばうのです。

嘉村 なるほど。

三葉 とまぁ、この主人公は「性差別はダメ。女性が嫌がることをしてはいけない」と考える良識的な男性です。

嘉村 じつに紳士だ。

三葉 さて……そんなある日のこと。主人公が、部下の女性社員(以下、Aさん)を昇進させます。社内がざわつく。

嘉村 ほぉ……と言うと?

三葉 彼の会社には旧体質的なところがあり、「同程度の能力・社歴を持つ場合には……というか、多少男性社員の方が劣っていたとしても、男性社員を先に昇進させる」という暗黙のルールがあったのです。

嘉村 なるほど。確かにそういう会社はありますね。

三葉 ところが……彼は女性社員を先に昇進させた!

嘉村 ふむふむ。

三葉 重役は戸惑う「きみの部署にはBくんがいるだろ。彼は、Aさんと同期だったはずだ。彼を昇進させなくていいのかい?」。主人公は言う「2人を比べれば、Aさんの方が優秀です。彼女を先に昇進させるべきでしょう」。

嘉村 「昇進するのは優秀な人。性別なんて関係ない」というわけですね。さすが!

三葉 ええ。主人公のこの「英断」は、社内でも高く評価されました。女性社員らは、「理想の上司よね♡」と噂する。重役らも、「まぁ、いまの時代、彼のやり方が正しいのかもしれんな。わが社も変わらねば」と納得する。

嘉村 ふむ。

三葉 しかし……彼の部署のメンバーだけは異なる反応を示した!

嘉村 ほぉ。

三葉 なぜならば……AさんとBくんを比べると、じつはBくんの方がずっと優秀だったのです。だから、2人の力量差をよく知る同部署のメンバーは驚き、困惑した。……さて、ここで種明かしをしましょう。一見すると、彼は「性差別を嫌う理想的な上司」に見える。しかし、それは彼の本質を捉えているとは言えません。では、彼の本質とは何か?すなわち……彼は「性差別はダメ!絶対ダメ!」という考えに囚われて現実が見えなくなっている頭でっかち野郎だったのです。

嘉村 「頭でっかち野郎」と言うと……?

三葉 主人公は、幼い頃から「性差別はダメ!絶対ダメ!」と教えられて育ちました。真面目な彼は、両親や教師の言うことに従おうとした。その結果、彼にとっては「性差別を避けること」が至上命題となり、ごく普通の現実的な判断ができなくなってしまったのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 具体的には、「2人の部下の実力を見極めて、どちらを先に昇進させるか判断する」……彼にはそれができなかった。無意識の内に、「女性を差別してはならぬ!ってことは、よし!Aさんを昇進させよう」と考えてしまったのです。言うまでもなく、主人公のこのやり方は本末転倒です。「性差別はよくない」と言いつつ、やっていることは男性差別ですからね。

嘉村 なるほど……。

三葉 そして、このように女性に甘い彼ですから、例えば……ハニートラップに簡単に引っかかってしまう。


三葉 常識的に考えれば、「この女、おかしいぞ」「このシチュエーション……罠ではないか!?」と感じるはずのシーンでも、彼は一切疑問を抱かないのです。なぜなら女性を疑うだなんて失礼なことであり、それは彼の「性差別を避ける」という至上命題に反するからです。

嘉村 ふーむ。

三葉 だから、彼はコロッと騙される。

嘉村 ええ。

三葉 あるいは、彼もアホではありません。土壇場になって違和感を覚えるかもしれない。

嘉村 ふむふむ。

三葉 その場合には、彼は強い恐怖を感じるでしょう。そして、普通では考えられぬ行動を取るはずです。人は、予期せぬことが起こると混乱し、とんでもないことをしでかすものですからね。例えば、相手の女性を殺してしまうとか。もしも彼が、最初から少しでも警戒心を抱いていればそんな悲劇は防げたのでしょうが……。

嘉村 なるほど。ハニートラップに引っかかるか、あるいは女性を殺してしまうか……いずれにせよ、この主人公に明るい未来はないわけですね……。

三葉 ええ、その通りです。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「一見すると『野生動物を愛する善人』だが、じつは『動物はかわいがらねばならぬ!』という考えに囚われて現実が見えなくなっているだけで、結果的に悲劇を引き起こしてしまう男性の物語」です。


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嘉村 今度は、野生動物!

三葉 ええ。まずは、「トムの物語」との比較表をご覧ください。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。……主人公は、若い男性会社員です。彼は元々都会に住んでいましたが、仕事の都合で地方都市へ引っ越すことになりました。そこは、いまも自然が残る街です。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公が借りたアパートの傍にも雑木林があり、さらに10分も歩けば山がある。自然が大好きな主人公は、緑豊かな新生活を喜んでいました。

嘉村 なるほど。

三葉 ちなみに……主人公は、アパートの1階の部屋を借りました。特に理由はありません。たまたまその部屋だけが空いていたのです。1階の部屋には小ぶりな庭が付属しており、毎朝小鳥が集まってくる。

嘉村 ほぉ。主人公はきっと喜ぶでしょうね。

三葉 ええ。彼は、休みの日にはパン屑を与えるなどして野生動物との交流を楽しんだ。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、そんなある日のことです。ふと庭を見ると……おお!タヌキだ!彼は興奮する。残飯を与えてみる。ムシャムシャと食べ始めた。彼は思いきって庭に出て、タヌキにそっと近づく。タヌキは食事に忙しそうで、逃げ出す気配はない。頭を撫でてみる。かわいい♡

嘉村 随分と人懐っこいんですね。

三葉 翌日も、そのまた翌日もタヌキはやってくる。彼は喜んでエサを与える。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公が職場でタヌキの話をすると、彼と同じく都会から転勤してきた者は興味深そうに耳を傾けます。「今度見に行っていいかな?」なんて言う者もいる。ところが……地元出身者の反応は違った。彼らは一様に眉を顰め、「餌付けしてはならぬ」と言う。「餌をもらおうとして、山から下りてくるのが常態化しては困る。畑や菜園を荒らし、場合によっては民家に立ち入ることもある害獣なんだ」。

嘉村 あー、なるほど。

三葉 それを聞いて、主人公はムカッとする。害獣だと!?勝手なものだ。タヌキだって、好きで山を下りるわけではない。人間が山を荒し、彼らの棲みかを奪った。だから、仕方がなく町にくるのだ。餌ぐらいやったっていいだろ!彼は反発心を覚え、餌をやり続ける。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、ここでネタ晴らしです。以上ご説明した通り……一見すると、主人公は「野生動物を愛する善人」に見える。しかし!実際には、「善人」とは言いきれない。むしろ、「『野生動物はかわいがらねばならぬ!』という動物愛護精神に囚われ、現実が見えなくなっている」と言う方が適切でしょう。

嘉村 ほぉ。

三葉 だからこそ、彼は「餌付けしてはならぬ。タヌキは害獣にもなる」と指摘された時にカッとした。そして、聞く耳を持たず、餌付けを続けたのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 彼が本当に「野生動物を愛する善人」なら、地元の人間の言葉に耳を傾け、人と動物が共生する方法を考えるはずです。しかし、彼にはそれができなかった。なぜなら、「人間 = 身勝手な加害者」「野生動物 = 哀れな犠牲者」「野生動物はかわいがらねばならぬ!」という考えに冒されていたからです。

嘉村 なるほど。

三葉 そんな彼ですからね。「案①」の主人公同様、物語はバッドエンドにならざるを得ない。

嘉村 ふーむ……。

三葉 例えば、こんな具合です。主人公が今日も餌をやろうとカーテンを開けると……驚愕!無数のタヌキが庭にひしめいていたのです。50匹……いや、もしかすると100匹はいるかもしれない。主人公は呆気に取れる。間もなく、タヌキたちも主人公に気がつく。タヌキらの瞳が、一斉に主人公を捉える。その目がギラリと光ったかと思うと……次の瞬間、タヌキが窓に向かって突進!

嘉村 おおっ!

三葉 彼らは、次から次へと窓ガラスに体当たりする。主人公は、あまりのことに微動だにできない。やがてサッシが歪み、窓が外れる。タヌキたちは主人公に飛びかかる。

嘉村 ほぉ……。

三葉 その後、15分ほど経ってから警察がやってきます。隣家の住人が異変に気づき、通報したのです。警官が主人公の部屋を覗き込む。部屋はメチャクチャに荒らされていた。しかし、タヌキの姿はない。もう去った後のようだ。では、主人公は?彼の姿も見当たらない。しかし……やがて警官が気づく。部屋の隅に、人骨が転がっていることに。

嘉村 うわぁ……食われたわけですか。

三葉 ええ。タヌキは雑食ですから。

嘉村 ふーむ。

三葉 そして、主人公の訃報が会社にも届く。それを聞いた地元出身者……そう、主人公に餌付けを止めるよう警告した者が呟く「だから止めとけって言ったのに」。……で、おしまいです。

嘉村 なるほど。確かにバッドエンドだ……。

三葉 以上、「『トムの物語』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!



続きはこちら!!

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(担当:三葉)

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