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「主人公が敵と戦う → 勝利」の繰り返しでマンネリだなぁと感じた時の対応策!|『東京流れ者』に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「東京流れ者」に【「主人公が敵と戦う → 勝利」の繰り返しでマンネリだなぁと感じた時の対応策】を学びます。

※「東京流れ者」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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「マムシの辰」に注目!!


本作の主人公は、哲也

彼は「不死鳥の哲」という二つ名を持つヤクザ(正確には元ヤクザ)です。拳銃の名手であり、その強さには定評がある。


一方、辰造

彼は大塚組(哲也と敵対する組)の組員で、腕利きの殺し屋です。

そして、彼も二つ名を持っている。すなわち……「マムシの辰」


本記事では、辰造に注目します。


辰造は、哲也を狙う


物語冒頭、辰造は組長から命令を受けます「哲也を殺せ」。

かくして辰造が動き出した。


ところが哲也の方が一枚上手。辰造は哲也を襲撃するものの、逆に哲也にボコボコに殴られたり、腕を撃ち抜かれたりしてしまいます。

どうしても敵わぬ!


とはいえ、さすがは「マムシの辰」。彼は、執拗に哲也をつけ狙います。

※補足:「マムシのような男」という慣用表現があります。これは「執念深くしつこい男」という意味です。


辰造、最期の戦い


映画開始からおよそ1時間3分、辰造に絶好のチャンスが訪れます。

舞台はとあるキャバレー。

辰造は物陰に潜み、様子を伺う。哲也は、そんな辰造に気づいていません。


タイミングを見計らい……辰造が発砲した。直後、哲也が倒れ込んだ。

辰造の顔に笑みが浮かぶ。ついにやったのだ!彼は、傍にいた知人に言った「見てみろ!哲はちっとも動かねぇや!」。


しかし、その時です。

ふいに口笛が聞こえてきた。

辰造の顔色が変わる。

そう、哲也が床に寝ころんだまま口笛を吹いていたのです。


辰造はショックを受ける。

哲也は生きている!それどころか、かすり傷ひとつ負っていない様子です。


辰造は、ごくりと唾を飲み込んだ。そんな……そんなバカな!!

辰造は放心状態です。

彼はすっと腕を持ち上げ、自身のこめかみに銃口を当てた。そして間髪入れずに引き金を引く。

かくして辰造は絶命したのでした……。


【問1】哲也は、なぜ無事だったのか?


さて、いまご紹介したシーンについて3つ考えてみましょう。


まずは、哲也の行動に関する疑問

▶ 辰造に撃たれたはずなのに、哲也はなぜ無事だったのか?

▶ ケガひとつしていないのに、哲也はなぜ倒れたのか?

▶ 哲也は、なぜ口笛を吹いたのか?


これらについては、作中では一切説明がありません。

「いやいやいやいや。いくら何でもふいに撃たれたらケガをするだろ!」とツッコみたくなるところではありますが……まぁ、それは野暮というもの。

「哲也がカッコいいんだから、それでいいじゃない!細かいことは気にするなよ!」というわけですね。


【問2】辰造は、なぜ自殺したのか?


続いて、辰造の行動に関する疑問

▶ 辰造は、なぜ自殺したのか?


これまた、作中では説明がありません、

しかし、哲也の口笛が聞こえてきた時の愕然とした表情から推測するに……おそらくは「不死鳥の哲」のあまりの不死身っぷりに、辰造は恐怖を覚えた。どう足掻いても勝てぬと確信した。ゆえに、自殺を図ったのでしょう。


つまりこれ、「主人公のあまりの強さに敵が絶望し、自殺を図る」というシーンなのです。

しかも、敵はそこらのザコではありません。腕利きの殺し屋です。そんな強敵が絶望してしまうほどの強さを持つ主人公……超カッコいいですね!


【問3】銃撃戦は、なぜ描かれなかったのか?


最後にもう1つ。

▶ 制作者(監督、脚本家)は、なぜこのシーンに銃撃戦を描かなかったのか?


だって、銃の名手たる辰造が死ぬシーンですからね、「激しい銃撃戦の末に息絶える」というのが普通だと思うんですよ。

ところが上述の通り、辰造は一方的に発砲し、一方的に絶望し、そして一方的に自殺してしまった。

一体なぜ銃撃戦は描かれなかったのか?


これ、ポイントは、

・1:辰造の自殺から約12分後に、本作のクライマックスが始まる

・2:クライマックスでは、哲也が10人ほどのヤクザを相手に派手な銃撃戦を繰り広げる

……ということでしょう。


似たようなシーンが続けば、それがどれほど見事なものでもインパクトは薄れるものですよね。当然カタルシスは得られず、鑑賞者は飽きてしまうでしょう。

つまり、クライマックスの銃撃戦を最大限盛り上げるために、「辰造との戦い」では銃撃戦が描かれなかったのだと推測されます。

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「『主人公と敵が戦う → 主人公が勝利する』の繰り返しで、どうにもマンネリだなぁ」と感じた時には、「主人公と敵が対峙する → 主人公のあまりの強さに敵が絶望し、自殺する」というエピソードを挟んでみてはいかがでしょうか。

いい具合にメリハリがつきそうですよね。ぜひ試してみてくださいねー!!


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(担当:三葉)

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