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《思考の柔軟性が弱いタイプ》のアセスメントとその支援の方法   その28 実例の細部から、支援の方法の本質を学ぶ-㉒ 言葉通りに受け取って、叱られてしまう

事例22 先生が困らない選択肢を使う

  中学校2年生のV君。体育の先生が、バスケットのルールを説明している。かなり詳しく説明しているので、時間がかかる。V君は退屈してしまって、隣のクラスメイトと話を始めた。その内、話に夢中になって大きな声で話し始めた。

先生「V、何喋っているだ。うるさいわ。やる気がないんだったら、教室
  に帰って宿題でもしとけ。やる気があるのなら、しっかり説明を聞け。 
  そうじゃないとうまくならないし、ケガするぞ。分かったか!」

V君「分かりました。」

 そう言って、V君が立ち上がって教室に帰ろうとすると、先生が肩をつかんで引き戻した。

先生「どこに行くんだ。」

V君「やる気がないので、教室に帰ります。」

先生「お前は、バカか。」

V君「バカ、とは何だ。」

そう言ってV君は、先生につかみかかった。

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【解説】先生は、「やる気がないなら教室に帰れ。やる気があるなら話を聞け」といえば「すみません。話を聞きます」と答えると思ったのです。「今は、授業中だ。だから、ここから抜け出して教室に行くはずがない」と無意識に思っているからです。

 しかし、V君にはそんな暗黙の了解はがありません。先生が「やる気がないなら教室に帰れ。やる気があるなら話を聞け」と指示してきたので、純粋にどちらしようか考えたのです。そして、教室へ帰る選択をしたら、先生が引き止めたので切れて怒っているのです。「あなたの素直に指示に従ったのに、『バカ』とはなにごとか」という考えです。

 このように、暗黙の了解を含んだ指示を「言葉通り」に取る生徒がいるなら、叱責するときの選択肢に気をつける必要があります。選択されたら、困る指示を出さないことです。

【セリフ】
先生「V君。喋っていて先生の説明聞いてないね(「想像」)。」

V君「・・・」

先生「君は、先生の説明を聞かずむちゃくちゃバスケットやって先生に怒ら
   れたり、失敗して怪我したりしたいか?それとも、先生の話を聞いて   
   みんなで楽しくバスケットをやりたいか?どっちだ。」

V君「楽しくやりたい。」

先生「楽しくやりたいんだね。それじゃ、どうするのが正しいんだ?」

V君「先生の話を聞いてルールを覚えます。」

先生「分かってるじゃないかV(「共感」)。じゃ、説明を聞きなさい。先
  生もできるだけ短く話して、バスケットする時間をたくさん取るように
  するから。」

V君「分かった。」

先生「『分かりました』だ。」

V君「分かりました。」

先生「次からは、先生は君たちに関係ないことを話さないんだから『先生の
  話は、全部聞く』と覚えておきなさい「覚えて」)。よろしく。」

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