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バックパッカーズゲストハウス

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二〇〇九年、二十七歳の時に、秋葉原にあるゲストハウスへ四ヶ月滞在したときの旅行記です。 著者の記憶違い、主観が多分に含まれています。また、主に登場人物に関して名前や設定を故意に…
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バックパッカーズゲストハウス②「寂しい男」

バックパッカーズゲストハウス②「寂しい男」

*この話は実体験ですが、著者の記憶違い、主観が多分に含まれています。また、主に登場人物に関して名前や設定を故意に変えている部分があります。

 東京で暮らす必要があった訳ではない。あえて理由を探すと、地方で暮らすフリーターという、つまらない役どころに飽きていた。そこで自分の役を変えようとしたのだ。本当はF1レーサーになりたかったが絶対に無理なので、努力も才能も必要無く、それでいて面白そうな役を探し

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バックパッカーズゲストハウス③「高速バス」

 仕事柄、稼ぎに浮き沈みはあるが、出費は常に多かった龍の懐事情に合わせて、送ってくるのが飛行機代かバス代か、その時によって違った。バスで東京を離れるときはいつも、
「もし、この街にもっと長いこと滞在したらどうなるのかな」と思いながら車窓を眺めた。

 東京、愛媛間をバスで移動するのはつらい。肉体的なことだけではない。私は酔うので、バスでも電車でも本を読めない。精神的に、何時間もただ座って、目を閉じ

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バックパッカーズ・ゲストハウス㊾「エサを付けなければ釣れるわけない」

バックパッカーズ・ゲストハウス㊾「エサを付けなければ釣れるわけない」

 前回のあらすじ:親友の龍と釣り堀に行く約束をしていたが、待ち合わせ場所に現れた彼の顔色はメチャクチャに悪かった。聞くと前日に、成り行きでリストカットをしたらしい。【これまでのお話https://note.com/zariganisyobou/m/mf252844bf4f2

 私はこの話を聞いてまず、なんでたまたま鞄の中に、糊とカッターナイフが入っているのか気になったが、「なにを工作」したのか

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バックパッカーズ・ゲストハウス㊿「靴下とうまい棒」

バックパッカーズ・ゲストハウス㊿「靴下とうまい棒」

前回のあらすじ:灰色のハット、茶色のジャケット、灰色のジーンズ、茶色のブーツという見事なミルフィーユコーデで釣りをした。追伸、親友の龍がホストの仕事をバックレると、私の元に色んな人から龍の行方を探る電話が掛かってきた。【これまでのお話https://note.com/zariganisyobou/m/mf252844bf4f2

 歌舞伎町から一人ホストが消えたのと同じ時期に、新たなホストが一人

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バックパッカーズ・ゲストハウス.51「一三〇円を二度払うというライフハック」

バックパッカーズ・ゲストハウス.51「一三〇円を二度払うというライフハック」

前回のあらすじ:ゲストハウスで上段のベッドに住む男が脱ぎ散らかした靴下を片付ける代わりに、毎日うまい棒を二本もらうという生活をしていた私にも給料日がやって来た。それで親友の龍に金を返すことにした。【これまでのお話https://note.com/zariganisyobou/m/mf252844bf4f2

 それまで龍との待ち合わせは大体新宿だったが、この時は秋葉原まで彼がやって来た。新宿で万

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