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評論

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2023年8月の記事一覧

トランプや小トランプに悩まされる米球界

去る6月19日(月)、日刊ゲンダイの2023年6月20日号27面に私の連載「メジャーリーグ通信」の第141回「トランプや小トランプに悩まされる米球界」が掲載されました[1]。

今回は、米国のドナルド・トランプ前大統領が連邦犯罪で起訴されたことに関連し、経営陣の多くが共和党を支持する大リーグにとって一連の出来事がどのような影響を与えるかについて検討しました。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介

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野村哲郎農水相の「全く想定していなかった」発言は何が問題か

8月25日(金)の閣議後の記者会見において、野村哲郎農林水産大臣が中国の税関当局による日本からの水産物の輸入を全面的に停止すると発表したことについて「大変驚いた。全く想定していなかった」と発言しました[1]。

これは、東京電力福島第1原子力発電所のいわゆる処理水の海洋放出を受けた中国政府の措置に関する発言であり、現行の制度では原発処理水の海洋放出に関連して海産物の売り上げや需要が減った場合に支援

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石橋湛山の「小日本主義」はいかに理解できるか

戦前の石橋湛山の議論のうち、代表的なものが植民地放棄論であるいわゆる「小日本主義」でした。

これは、日本の領土を北海道、本州、四国、九州に限定し、台湾や朝鮮半島を放棄するというもので、領土の大小が国家の国力の大小を規定すると考えられていた1920年代においては、画期的な議論とされています。

石橋が「小日本主義」を唱えたのは、『東洋経済新報』が創刊以来示していた反藩閥政治、反軍閥という論調の影響

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「原発処理水の海洋放出問題」の問題点は何か

本日、午後1時頃、東京電力は福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、政府の方針に基づき、基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めました[1]。

これに対し、中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止するとともに、韓国政府は過度の反応は禁物であると声明を出す[1]など、諸外国の対応は日本との関係を反映する形で賛否が分かれています。

一方、日本国内では、処理水に

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慶應義塾高等学校による「107年ぶりの優勝」という歴史的快挙を讃える

本日、第105回全国高等学校野球選手権大会の決勝戦が行われ、慶應義塾高等学校が仙台育英高等学校に8対2で勝利し、優勝しました。

慶應義塾高等学校は前身の慶應普通部が1916(大正5)年の第2回全国中等学校優勝野球大会で優勝して以来、107年ぶり2度目の全国制覇を成し遂げました。

ある大会で107年ぶりに優勝するというのは世界のスポーツ史上でも珍しい事例です。

それでは、107年前の日本の球界

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石橋湛山の評価において「議論の先見性」はどのような意味を持つか

石橋湛山に関する研究でしばしば言及されるのが、植民地放棄論である「小日本主義」や国際協調主義、あるいは金解禁論争といった1920年代から1930年代半ばにかけての石橋の主張の先見性です。

確かに、日米開戦の原因の一つがとりわけ満州事変後の日本の領土拡張政策にあることや、日本の経済状況を考えれば、金解禁の際に旧平価ではなく新平価を採用すべきといった石橋の主張が適切と考えられるのは事実です。

一方

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78回目の「終戦の日」からわれわれは何を学び得るか

本日、大日本帝国政府がいわゆるポツダム宣言を受諾したことを、前日に収録した天皇による放送の形で国民に伝えてから78年目を迎えました。

太平洋戦争の開戦以来の当局者、特に軍首脳の態度を考えると、むしろ「何とかなる」と事態を楽観視していたことが分かります。

その結果が敗戦であり、大日本帝国の消滅と進駐軍による占領という未曽有の事態へと至ったものです。

従って、人々の気持ちとは別に「何とかなる」と

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78回目の長崎原爆の日に考える日本政府が「核なき世界」の実現のために果たす役割の大きさ

本日、1945(昭和20)年8月9日(木)の午前11時2分に長崎県長崎市に原子爆弾が投下されてから78年が経ちました。

長崎市では市主催の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が挙行され、鈴木史朗市長が平和宣言の中で核兵器廃絶を強く訴えるとともに、台風6号の九州地方への接近により現地参加を見送りビデオメッセージを送った岸田文雄首相も核兵器のない世界を実現するために非核三原則を堅持しつつたゆまぬ努力を続け

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「国立科学博物館のクラウドファンディング」の問題は何か

昨日、国立科学博物館が標本の保管に必要な資金を集めるためのいわゆるクラウドファンディングを行い、開始から約9時間で目標の1億円を達成しました[1]。

入館料収入の減少や光熱費の高騰により標本の管理に支障をきたす事例が生じている一方で運営経費の合理化などの自助努力によっては対応が出来ないため、今回の措置に至り、無事に所期の目標額を集めました。

こうした様子は、一見すると人々の国立科学博物館への関

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大リーグ機構の国際戦略本当の思惑

去る7月3日(月)、日刊ゲンダイの2023年7月4日号26面に連載「メジャーリーグ通信」の第142回「大リーグ機構の国際戦略本当の思惑」が掲載されました[1]。

今回は、今年6月に4年ぶりに開催された「ロンドン・シリーズ」の意義について、大リーグ機構の国際戦略とともにロブ・マンフレッド・コミッショナーの公式戦の試合数削減を巡る談話から検討しました。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますの

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広島市への原子爆弾の投下から78年目に際して考える「科学精神」の意味

今日で1945(昭和20)年8月6日(月)に広島市に原子爆弾が投下されてから78年目を迎えました。

人類史上最初の惨事となった原爆の投下が多くの人々の命を奪ったことは周知の通りであるとともに、軍当局と報道機関が事態をより小さく見せようと試みたことも広く知られるところです。

ところで、当初は「新型爆弾」とされていた原子爆弾を生み出したのは科学技術であり、人間の頭脳に他ならないと指摘したのが石橋湛

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「自民党女性局のフランス研修問題」の問題点は何か

昨日、自民党の松川るい参議院議員がSNSに投稿した写真が不適切であったとして、一部の内容を削除しました[1]。

問題となったのは、自民党女性局に所属する国会議員や地方議員ら38名が行ったフランスへの研修中に撮影したとされる写真で、エッフェル塔の前で塔を真似て両手を頭の上で合わせる格好をした様子が批判を受けました[1]。

確かに、観光旅行のような写真を不特定多数が目にするSNSに投稿した点には改

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