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2021年2月の記事一覧

二・二六事件の発生から85年目に振り返る戦前の政党政治の展開と衰亡

本日、1936(昭和11)年に陸軍のいわゆる皇道派の将校らに率いられた勢力が蜂起した二・二六事件の発生から満85年が経ちました。

二・二六事件についての研究はこれまで相当の蓄積がなされてきました。

そこで、今回は村井良太先生(駒澤大学)の著書『政党内閣制の展開と崩壊 一九二七~三六年』.(有斐閣、2014年)の記述に基づきつつ、二・二六事件に至るまでの政党政治の展開と、二・二六事件が日本の政党

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「菅首相長男の総務省幹部接待問題」について国会が明らかにすべき問題は何か

昨日、菅義偉首相の長男らから総務省幹部が接待を受けていた問題について、総務省は国家公務員倫理規程に違反したとして谷脇康彦総務審議官ら11名に減給などの処分を下しました[1]。

菅首相の長男による総務省幹部への接待問題に関しては、個別の事例はともかく、現時点で自民党内から公然と批判の声が挙がる様子はありません。

いわゆる総主流派体制の中で批判的な態度を取ることは、自民党政権下での栄達を阻みかねま

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橋本聖子東京オリ・パラ組織委会長は「5つの資質」をどのように満たしているか

昨日、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会(TOCOG)の会長に前国務大臣で参議院議員の橋本聖子氏が就任しました。

橋本氏がTOCOGの会長として果たすべき役割については、昨日の本欄で検討した通りです[1]。

そこで、今回は橋本氏がTOCOG会長としてどの程度まで適性を持つかを考えます。

TOCOGが会長の選考のために設けた候補者検討委員会は、「会長に求められる資質」として以下の5

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橋本聖子氏が東京オリ・パラ組織委員会会長として果たすべき役割は何か

本日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(TOCOG)は評議員会を開催して橋本聖子参議院議員をTOCOGの理事に選出するとともに、理事会において森喜朗氏の後任の会長とすることを決めました[1]。

これに先立ち、TOCOGに設置された検討委員会は橋本氏を会長候補とすることを決定したため、橋本氏は2001年に閣議決定された「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」における「公益法人その他

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検討委員会が「森喜朗会長の後任候補」の選考に際して注意すべき点は何か

昨日から、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(TOCOG)に設置された候補者検討委員会の会合が開かれ、辞意を表明した森喜朗会長の後任の人選を進めています[1]。

選考に際しては「透明性の確保」が強調されるものの、検討委員会の顔触れや具体的な発言が非公開という点は、TOCOGにおける「透明性」が何を意味するのか、疑問が残ります。

もちろん、事前に委員が公表されれば、報道陣が過剰な

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見せかけの「政治献金停止」

去る1月18日(月)、日刊ゲンダイの2021年1月19日号27面に連載「メジャーリーグ通信」の第84回「見せかけの「政治献金停止」」が公開されました[1]。

今回は米国の企業や大リーグ機構による政治献金停止問題の持つ意味を検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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見せかけの「政治献金停止」
鈴村裕輔

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『青天を衝け』は大河ドラマの限界を突き破れるか

本日20時から、NHKの大河ドラマ『青天を衝け』が始まります。

1963年以来続くNHKの看板番組である大河ドラマは、2009年以降平均視聴率の低下が進んでいます[1]。

もとより、視聴者のテレビ番組の受容の方法が多様化した現在においては、平均視聴率のみが番組の価値を決めるものではないことは明らかです。

その一方で、すでに本欄が指摘するように、2001年以降の大河ドラマの主役は、以下の3つの

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「適切で自律的な会長人事」が求められる東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会

本日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は評議員、理事、監事による臨時の合同懇談会を開催し、席上、森喜朗会長が辞任の意向を表明しました。また、後継の会長については選考のための機関を設けて進められることになりました[1]。

2月3日(水)の日本オリンピック委員会の臨時評議員会において女性に対する差別的な発言を行ったことを踏まえれば、森氏の辞任は当然のことと言えるでしょう。

また、

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「森氏の不適切発言問題」で主体性を発揮できない東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会

本日、森喜朗氏が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長を辞任する意向を示したことが明らかになりました[1]。

森氏が辞任の意向を示したのは、2月3日(水)に日本オリンピック委員会の臨時評議員会において女性蔑視と受け取られる発言を行い、国内外から批判を受けたためです。

これは、一面において森氏が「軽率な発言」の責任を取るように見えながら、他面においては理事の人事権を持つ評議員会の

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「森発言問題」に対して東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会評議員会が担う大きな役割

2月3日(水)に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長が女性の理事に対する差別的な発言を行ったことについては、菅義偉首相が2月8日(月)の衆議院予算委員会で「国益にとって芳しいものではない」[1]と発言するなど、民間組織の代表者の不適切な発言という域を超え、国家的な問題となりつつあるかの観を呈しています。

一方、菅首相が森会長の進退は人事にかかわることであるため、組織委員

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「東京オリンピック組織委員会による声明」はいかなる意味を持つか

昨日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、2月3日(水)に森喜朗会長が女性を蔑視する発言を行ったことを受け、声明を公表しました。

すなわち、声明は以下のような内容でした[1]。

弊会の先週の森会長の発言はオリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切なものであり、会長自身も発言を撤回し、深くお詫びと反省の意を表明致しました。
「多様性と調和」は東京大会の核となるビジョンの一

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森喜朗氏による「女性蔑視発言」はわれわれに何を教えるか

2月3日(水)に行われた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会における森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の発言については、森氏が「軽率な発言であった」と釈明し、国際オリンピック委員会(IOC)も森会長の謝罪によって問題が終了したという立場を取る一方、世論だけでなく閣僚からも不適切な発言であったと批判が起きています[1]。

もとより、発言を謝罪したり撤回したからとい

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「情実人事のつけ払い」となった森喜朗氏による「軽率な発言」

昨日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会が開催され、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」[1]と発言し、本日「軽率な発言であった」と釈明しました[2]。

森会長の発言は以下の通りでした[1]。

これはテレビがあるからやりにくいんだが。女性理事を選ぶというのは、日本は文科省がうるさくいうんですよね。
だけど、

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国会議員は「銀座の夜問題」を他山の石と出来るか

昨日、衆議院議員の松本純、田野瀬太道、大塚高司の3氏が自民党を離党するとともに、公明党の衆議院議員遠山清彦氏が議員を辞職しました。

これは、松本氏ら自民党の3氏は新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた緊急事態宣言の発令期間中に深夜に、また遠山氏も3議員とは別に、緊急事態宣言発令中に東京都内の飲食店を利用していたことを受けたものです[1]。

飲食店を利用することそのものは日常的な活動の一環である

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