「菅首相長男の総務省幹部接待問題」について国会が明らかにすべき問題は何か

昨日、菅義偉首相の長男らから総務省幹部が接待を受けていた問題について、総務省は国家公務員倫理規程に違反したとして谷脇康彦総務審議官ら11名に減給などの処分を下しました[1]。

菅首相の長男による総務省幹部への接待問題に関しては、個別の事例はともかく、現時点で自民党内から公然と批判の声が挙がる様子はありません。

いわゆる総主流派体制の中で批判的な態度を取ることは、自民党政権下での栄達を阻みかねません。そのため、たとえ一人ひとりには思うところがあるとしても表立って批判する議員が少ないことは、こうした党内の事情が影響しているかのようにも見えます。

また、当初、菅首相が「普段、ほとんど会っていない。完全に別人格だ」と発言し、今回の問題が菅首相の長男自身にまつわるものであることを強調した際に、党内で異論が表面化しなかったことも、有力な議員であれば誰もが類似する経験を持っているため問題されなかった可能性を示唆します。

その一方で、こうした問題が起きるたびに官僚が処罰されるのは、国家公務員倫理規程に照らして当然の措置であるとともに、綱紀粛正のためにも規程の適正な運用は重要です。

それとともに、類似の問題が生じると政治家や官僚は深い反省の念を示すものの、同様の事例は根絶されないまま、現在に至っています。

こうした状況は、問題の根深さとともに、一部とはいえ関係者の中に事態を必ずしも深刻に受け止めていない者がいることをわれわれに伝えます。

何より、事態が明らかになった当初は国会での答弁において「記憶にない」と発言した秋本芳徳氏が、後に「天を仰ぐような驚愕する思い」、「自分の記憶力の乏しさを恥じた」[2]と驚くべき発言とともに前言を撤回した様子からは、物的証拠が出ない限りは国会で虚偽の答弁を行っても問題ないという考えがあることを窺わせます。

それだけに、今回の一件を通して国会が明らかにすべき問題の数は多く、そして一つひとつが重要であると言えるでしょう。

[1]総務省接待 7人減給. 朝日新聞, 2021年2月25日朝刊1面.
[2]接待 崩れる政府答弁. 朝日新聞, 2021年2月20日朝刊2面.

<Executive Summary>
What Is a Lesson for the Both Diets on the "Prime Minister Suga's Son Issue"? (Yusuke Suzumura)

The Ministry of Internal Affairs and Communications punished eleven officials on charge of a violation of the National Public Service Ethics Code on 24th February 2021. In this occasion we have to examine a lesson of the issue for the Both Diets.

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