「森発言問題」に対して東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会評議員会が担う大きな役割

2月3日(水)に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長が女性の理事に対する差別的な発言を行ったことについては、菅義偉首相が2月8日(月)の衆議院予算委員会で「国益にとって芳しいものではない」[1]と発言するなど、民間組織の代表者の不適切な発言という域を超え、国家的な問題となりつつあるかの観を呈しています。

一方、菅首相が森会長の進退は人事にかかわることであるため、組織委員会が判断するものであると指摘したこと[1]は、適切な対応です。

何故なら、組織委員会は定款の第27条において「理事又は監事は、任期の途中においても辞任することができる。」と理事が任意に退任することを認めるとともに、第28条では理事が「職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。」ないし「心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。」に評議員会の決議により解任することが出来ると定めるからです[2]。

定款は公益財団法人を設置するための根拠法である公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律に基づき定められたものです。

従って、たとえ「森憎し」という世論が高まったとしても、定款に沿わない行為は公益財団法人としての組織委員会の組織統治の問題となります。

また、例えば評議員会ではなく理事会が森氏の解任を決めたとしても、定款の規定に明記されていない方法による処分は、かえって組織委員会の存立を揺るがしかねません。

われわれはこのような点に留意することが必要であり、「相手が憎いから法を曲げてでも解決しろ」と求めることは控えなければならないのです。

それだけに、組織委の評議員会が担う責務と果たすべき役割は大きいのであって、評議員たちが評議員会以外の力を利用して事態を打開しようと考えることは決して許されるものではありません。

[1]接種遅れ 首相「安全配慮」. 読売新聞, 2021年2月9日朝刊2面.
[2]公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 定款. 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 定款, 公開日未詳, https://gtimg.tokyo2020.org/image/upload/production/dnibzgn6uy1agqu6oynt.pdf (2021年2月10日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Role of the Councilors of the Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games for the "Mori Issue"? (Yusuke Suzumura)

Mr. Yoshiro Mori, the President of the Tokyo Olympic and Paralympic Games Organising Committee President, said women talk too much in meetings and suggested speaking time for women should be limited on 3rd February 2021. It might be a kind of serious issue for the TOCOG and the members of the Board of the Councilors shall solve the problem by their own efforts, since everything must be decided by the Articles of Incorporation.

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