見出し画像

2024年1月~3月に読んだ本

2024年最初の本まとめです。
この3ヶ月、特に後半は本屋大賞候補作を読み始めたこともあり、全体的に電子書籍ではなく紙媒体での購入が多め。あとなんか最近ドライアイか花粉かコンタクト長時間着用の弊害か、スマホのKindleだと目の疲れが強いときがあり、本での購入に移行中。部屋がどんどん文芸書・文庫本に浸食されていく……。
【2023年分→】1-3月 4-6月 7-9月 10-12月



『武士道シックスティーン』
『武士道セブンティーン』
『武士道エイティーン』
『武士道ジェネレーション』
著:誉田哲也

ふと手にした武士道シックスティーンにハマり、1週間でシリーズ全4冊を読破。
狂気を感じるほど剣道および勝利に執着する香織と、勝ち負けより剣道を楽しみ、剣道そのものを楽しむ「お気楽不動心」な早苗。正反対な二人だが、ある日圧倒的な強さを誇る香織が、とある大会で早苗に負けてしまう。
そこから二人のライバルかつ親友関係が始まり、高校三年間を描いた『武士道シックスティーン』『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』、そしてその後が描かれた『武士道ジェネレーション』。
香織の挫折、早苗の迷い、それらがやはり高校生の悩みであり瑞々しく、まさに青春と言えるような人間関係も見事な描写。
香織の人格の変化や早苗の優しさと迷い、この二人のキャラクター性が非常に魅力的かつ文章も読みやすいので、スイスイ読める素晴らしい作品だった。
4冊あるものの登場人物はそこまで多くなく、それぞれのキャラクターへと感情移入できることもあり、やはり剣道の試合のシーンは熱くこみ上げるものがある。やはり、香織と早苗の試合は物語のピークであり、涙無しでは読めなかった。
スポーツものでもあり、青春物でもあり。熱く優しい、大好きな作品だった。



『成瀬は信じた道をいく』著:宮島未奈

昨年読んで大好きだった『成瀬は天下を取りにいく』の続編。発売日前にフライングで購入。
今回は成瀬の高校生以降の話。前作が中学生だったので、行動範囲も広くなったと同時に、新たな成瀬の交友関係も生まれ、そのたびに成瀬に対してびっくりする周りの人の反応が面白く、愛おしい。観光大使となった篠原かれんとのやり取りはもう漫才コンビのようで笑いが止まらなかった。
全ての話が面白いものの、やはり島崎の視点から描かれた章「探さないでください」は、本作を締めくくるのにぴったりの話。置手紙を残し失踪した成瀬はどこに行ったのか、何をしているのか、それを追いかける登場人物たち。結末は笑えるものの、心にじんと来る優しさ、思いやりも感じた。
本の帯で新川帆立先生が「すっかり成瀬中毒」と書かれているが、まさに自分も。読むたびに心が晴れやかになる、素晴らしい本。



『ルビンの壺が割れた』著:宿野かほる

全てがFacebookのメッセージのやり取り、という建付けの小説。とある男女のメッセージのやり取りで話が進んでいく。
過去の話や結婚、失踪など、2人の間で起こった様々な事実が徐々に浮き彫りになっていくことで、物語が展開され、最終的には予想もしなかった結末に……という話。
帯に「日本一の大どんでん返し」と書かれていたので買ったものの、日本一ではないだろう……というのが感想。どちらかというと「意外な結末」というほうが正しいかと思う。前提の条件が少し弱かったかなと。
一方、前述の通り、メッセージ形式なので一般的な小説に比べて非常に読みやすく感じた。これから小説を読んでみよう、という人はこの本を取ってみてもいいかもしれない。



『君が手にするはずだった黄金について』著:小川哲

どういう小説かわからなかったけど、これはもしかすると著者の小川先生の体験した事実なのではないかと思えるくらいの、現実感。短編集となっており、どの話も「なんとなくありそうで無さそうだけどあるかもしれない」という現実と虚構の距離感が抜群。そして、どの話も読み終わった後になんだか魂の1%が消失したような、不思議な違和感を感じた。
結局読み終わって、何かカタルシスを得られるわけではないものの、なんというか……日常全てが少し歪んで見えるような奇妙、そうまさに奇妙な感覚になる本だった。



『存在のすべてを』著:塩田武士

2児同時の誘拐事件が発生、片方の誘拐事件は囮で子供は帰ってきたが、もう片方、本命の事件は結局犯人も誘拐された児童も見つかることが無く、警察は犯人に負けた。
しかしその3年後、誘拐された児童がふらっと戻ってきた、それも礼儀や生活態度などしっかり躾けられた状態で…。
この未解決事件を、30年後に追い続ける記者の視点を中心に、徐々に徐々に真実に迫っていく小説。
とにかく文章が上手くて、本当に読みやすい。魅力的なフックである誘拐事件と、絵画という世界、現実を描写する画家など美術の世界からの視点が交差していく。この美術業界の視点は新鮮で、現実味があると同時にキャラクターの描写、物語の展開に強く影響しているのが唸る。
登場人物の描写も丁寧で、年齢性別にかかわらず存在感がある。そして主要キャラクターが実は微妙に交差しているもどかしさもまた幸せ。
最終的な真実はどうしても涙が出てしまった。あれはずるい。
まさに「面白い」という言葉がぴったりな小説。



『レーエンデ国物語』著:多崎礼

引き続き本屋大賞候補作を攻略。
直球のファンタジーもの。普段ファンタジーは固有名詞を覚えたりするのが苦手で読まなかったりしていたものの、本屋大賞候補は気になるのでノートに用語をメモしていきながら読んだ。
ファンタジーというといわゆる剣と魔法の壮大な世界かなと先入観があったものの、レーエンデ国物語はもっとピンポイント。死に至る病の「銀呪病」にかかる可能性があり、あくまで自治的に人々が暮らしている地域「レーエンデ」。そこに踏み入れた、隣国の領主の娘であるユリアと、レーエンデに暮らすトリスタンを中心とした、成長と恋愛の物語と言えそう。

ベタベタした恋愛ではなく、命の危険や自立、未来といった現実的でどこか緊張感のある、非日常な「レーエンデ」だからこその、信頼という繋がりが良かった。
何より、レーエンデ国物語はこれが1巻で、このあとに4巻続くらしく(2024年3月時点では3巻まで出版)、しっかりした物語がありつつ確かに序章感もある。
一つの素晴らしい恋愛と信頼、未来に向けた物語が終わり、そしてそこから2巻への物語が続いていくのが嬉しい。すぐに本屋で2巻『レーエンデ国物語 月と太陽』を購入。これはシリーズ追いかける。



『推しの殺人』著:遠藤 かたる

とっても今風のタイトルとイラスト、そしてこのミス大賞という帯の文句に惹かれて購入。

3人組の地下アイドルのひとりが、とある事情から殺人を犯してしまう。そして警察に自首しに……ではなく、アイドルを続けるために3人で協力して死体を隠蔽、殺人を隠すという話。
ばれないのかばれるのか、若い女の子が考えた隠蔽だからこそ、そのさじ加減が絶妙。プロの殺し屋とかじゃないので、万全を期したように見えてどこか綻びが見えたり。そのドキドキハラハラな感じが面白く、また文章も読みやすいので1日で読んでしまった。
登場人物も少ないし、次々新たな展開が繰り広げられて飽きないのでこの本はかなりおすすめ。アニメ化とか、映画化とかしてほしい……というか、そういう情景が浮かぶ作品だった。



『三体』著:劉慈欣

アトロクなどで以前より紹介されていて、気になっていた作品。
とりあえずボリュームが凄いという印象だったので二の足を踏んでいたけど、ネトフリのドラマ配信が始まり、居ても立っても居られず購入。
SFはファンタジーと同じく専門用語がな……と思っていたけど、三体は翻訳がいいせいか非常に読みやすい。
科学者が絶望したとある出来事、そしてそれがなぜ起こったのか、さらにはその現状が起こった理由は……など、徐々に解き明かされていくのが最高。三体というVRゲームもまた素晴らしい。人力コンピュータは痺れた。
ネトフリ版は中盤くらいまで見たけど、かなりオリジナル要素強め。そして二巻の内容も入っているようなので、二巻を読むまでストップしようかと思ってる。
文庫本600ページを読んだところでまだ助走段階という印象が強く、慌てて本屋に行ったものの二巻は売り切れ。さすが三体ブーム。



終わりに

月3-4冊ペースで読めました。
武士道シリーズにハマって、今年の読書スタートダッシュをいい感じで斬れたのかなと。
あとはやはり本屋大賞ノミネート作品に手を出しましたね。
仕事で泊まり出張が多く、ゲームが出来ない時間を読書に費やしていたのもあり、長編の本もしっかり読めました。
あとは最近ほろ酔いで本屋に入るのが最高だということに気づいたので、これからもやっていきどんどん本屋にお金を落としていきたいところ。

当面は三体を追いかけて読んでいくのをメインにしたいと思います。


【今読んでいる本】
・『自転しながら公転する』著:山本文緒
・『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』著:ガブリエル・ゼヴィン、翻訳: 池田 真紀子
・『レーエンデ国物語 月と太陽』著:多崎礼
・『三体Ⅱ 黒暗森林(上)』著:劉慈欣
・『ヴァイタル・サイン』著:南杏子


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?