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【2023年4月〜6月】読んだ本

少し遅れましたが…ここ3か月で読んだ本です。
前回に比べて仕事が竜巻みたいに忙しくなってきたので少なめ。あとゲームも大作ラッシュでしたしね。
とはいえ素晴らしい本に出会えたのは間違いありません。現状今年ベストと言える作品もありました。




『ボトルネック』 著:米澤穂信

いくつか読んだ鬱小説の中でも最悪の後味と言っていいかもしれない。
読み進めることにどんどん世界が暗くなって、最後の最後に最悪すぎてもはや綺麗な展開。自分の周りで色々事件が起こるけど、それでもこの小説の主軸は自分という存在や自己愛について。別の世界に飛んでしまった主人公が、その世界を知ることで感じる絶望はちょっと終身刑と言えるくらい未来が暗くなる絶望。これはしんどい。
繰り返しになるけど後味が最悪で苦しい小説。素晴らしい鬱小説。



『低み』 (TBSラジオ)

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』の企画『アトロクブックフェア』にて購入。『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』にて放送されていた企画のひとつ。
いわゆる、自己啓発ではなく『自己低発』、つまり自分をより高めるような本では無く、ある意味「自分よりこんなに『低い』人達がいるんだ……」と安心する本。
くすっと笑う内容もあれば、普通に汚いでしょ!という意味で笑える内容も。

ついつい「そういえば低みなら俺も…」と実体験をTwitterに書き込みそうになるものの、決してそういう行為は素性を晒して人に見せるものではない、と冷静になりストップ。そんな、倫理観のハードルが異常に低くなる本でした。面白かった。



『向日葵の咲かない夏』 著:道尾秀介

これも鬱小説というカテゴリーで紹介されていたので購入。
いやあ、凄い話でした。そもそも序盤から虐待されている子どもの描写。しんどいなあ、と思いながら読み進めていくと、そのファンタジーとミステリーな物語が段々現実に着地していく様に背筋が凍りました。
特に、女郎蜘蛛のシーンの狂気は、もはやその部分のページだけ赤く染まったような印象を受ける迫力でした。怖い。
最後の終わり方もまた狂っていて恐ろしい。ああ、そういう……と思わずうなだれてしまいました。後味の悪さの極み、ここに。



『リーダーの仮面 ーー 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法』 著:安藤広大

1日2日で一気に読み終えた。大分スペースがあって行間、文字間隔が広いのでボリュームとしては少ない本。
さすがに30代半ば、どんな職場でも年下、後輩、部下がいるのがかなり多い年齢、何も勉強せずに指導するのは無責任すぎるよなあと思い購入。
当たり障りない正論だけ書いてたらどうしよう……と思ったけど、身につまされる思いになる部分もしばしば。
この本を鵜呑みにしてうまくいくと思える部分もあったし、逆に壊滅的になる可能性もあると思ったけど、でもまあ一つの尺度にはなった。なあなあは良くない。
個人的に、今まで経験した職場で「ついていきたい!」と思った先輩・上司は、「知らない間に仕事がやりやすいよう、嫌な役をこっそり引き受けていた女性の先輩」と、「厳しいけどそれ以上に自分に厳しい上司」だったから、そういう人になりたいなあ…と思った。特に女性の先輩のほうは本当に、生涯ベストの先輩。もう連絡も取っていないし、仕事も辞めたそうでどこで何をしているかわからないけど、仕事関係で一番尊敬できる人だった。
そう思われたいけど、俺はまだ足りないなあ。



『ラブカは静かに弓を持つ』 著:安壇美緒

本屋大賞2位の小説。
音楽関係っぽいな〜、楽器演奏系理解できるかな…と少し不安を覚えたものの、完全に杞憂だった。
物語は、ミカサ音楽教室での著作権違反の調査のため、著作権管理団体が社員をスパイとして送り込み、音楽教室の生徒として2年間学ばせるという話。当然ながら内容はフィクションだけど、この建て付け、音楽教室に著作権管理団体が社員を送り込むというのは実際にあった話なので一気に引き込まれた。
人付き合いが苦手な主人公がそのスパイ役として音楽教室に潜入するんだけど、その2年間での音楽教室での活動、人間関係、そして過去に辞めてしまったチェロへの思い、そういったものが徐々に主人公に変化を与えるのが読んでいてドキドキした。
音楽の力の有無を言わせぬ強烈さ、そして人と人との信頼関係、絆といったものが強く印書づけられ、幸せな気持ちになる本。そしてチェロを習いたくなる本だった。

ちなみに、リアルイベントに応募したら当選したので、渋谷で開催された生演奏+朗読イベントに行ってきたのですが、めちゃくちゃ最高でした。

https://eq.shueisha.co.jp/app/enq/bks_pr/rabuka_event/member/



『光のとこにいてね』 著:一穂ミチ

女性同士の、恋愛…というか、それ以上にお互いを求めあって、必要としている運命、絆の物語のような小説。
幼少期、高校生、大人、と3つの時代で話が分かれており、2人が出会った幼少期から、運命の再開を果たした高校生の時期、そしてお互い家庭を持っている状態で再会した大人の時期。
それぞれの時期で別れがあり、再会するのもほとんど偶然のような形。
だからこそ、無くしていた宝物が数年ぶりにふいに見つかるような喜び、驚きが毎回発生している。そして、その描写がとても丁寧。
再会してキャーキャー騒ぐのではなく、大事な人だからこそ、離れていた時期に心境が変化してしまったのか、そうでないのかを慎重に考え、でも本能は抑えられなくて……という、純粋な恋愛小説のような物語だった。どの場面でも、お互いがお互いを必要としている、しかし環境がそれを阻害するような展開。そして2人が、それぞれの時期でどういう決断を下したか、どういう決断を下さなければいけないかが、リアルであり臨場感とドキドキ感、やるせなさを強く醸し出していた。
2023年本屋大賞3位。素晴らしい読後感の傑作です。



『成瀬は天下を取りにいく』 著:宮島未奈

現段階で、今年のベスト小説かもしれない。
滋賀を舞台に、最高の主人公・成瀬あかりと、その周りの人々によって紡がれる、青空の下を駆け抜けるような爽やかな青春小説。
とにかく、主人公の成瀬あかりの魅力が素晴らしすぎる。閉店する西武大津店を毎日中継する地元ローカル情報番組に毎日映り込んだり、M-1に出たり……と、とにかくマイペースだけど、他人からどう思われようと何を言われようと、意に介さずやりたいことをやり遂げる姿は、見ていて本当に気持ちが良い。周りは当然「少し変わった人」というような印象を受けるものの、それでも成瀬の友人の島崎のように、一緒にM-1に出てあげたくなるような強い魅力を感じるのも確か。
何より成瀬が裏表のない存在で、かつ人に真摯であるところが好き。
繰り返しになるけど、間違いなく、最高の主人公。今後もずっと成瀬の物語が続いてほしい。
これは別noteで感想を書きたいな。あと聖地巡礼もしてきました。



『春や春』 著:森谷明子

俳句がテーマの青春小説。
鬱小説ばかり読んでいた時期を脱し、青春小説を読みたいなと思ってチョイス。
女子高校生が『俳句甲子園』で奮闘する物語です。
日本語は面白い言語だとは前々から感じていたのですが、俳句そのものについては全く詳しくなく、有名な句でも「ああ、聞いたことがあるなあ」という程度でした。
しかし、この本での俳句の読み方を知ることで、その俳句の書かれた時代や情景などの背景が浮かび、新たな視点が開かれたような感覚でした。

物語の前半はいわゆるスポ根ものの仲間集めのターンでやや冗長に感じましたが、中盤から『俳句甲子園』での戦いが始まってからの物語の求心力が素晴らしく、「えっ、そんなにきついこと言うの」というような描写に夢中になりました。アニメ「ハイキュー」を見たときのような熱い気持ちにさせられました。
実際の俳句甲子園の動画も見てみたほど俳句に興味を抱いた本。スポ根であり、青春! という感じの、熱い本でした。



終わりに

半年で20冊くらいですかね、まあ冊数はゲーム本数と同じであまり意味はないんですが、一応数字の目安として。
こう考えると年末までに40…は難しいかな、30冊くらいは読みたいところ!
この3か月だと、イベントまで行ったラブカと、聖地巡礼までした成瀬が特に気に入った作品。
こういう作品にもっと出会いたいなと思う。

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