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【2023年1月~3月】読んだ本感想


昨年から本を読む習慣が少しずつ生まれてきたので感想を残します。
なんかトップ画像の解像度が粗いな……。


『恋愛中毒』 著:山本文緒

これは読んだ小説をTwitterで書いていたら友人に「ゆーすけさんは『ヤバい性格なのにいかにも普通だと自覚して過ごしている女』が好き」と言われ、勧められた小説。
なんなんだこの終盤。主人公である女性・水無月が、タレントで自分勝手な創路という男に振り回されつつも好意を抱き、創路の事務所で働き、でもそこには他の女もいて……という話だけど、徐々に徐々に創路の近くのポジションを掴もうとする水無月の姿。少し不穏なものを感じつつ、終盤のまさかの展開は1行1行読み進めるのが怖くなったし、ジェットコースターのような面白さだった。さすがに好きというよりは怖さが先に来る女の人だったかな……。



『かわいそうだね?』 著:綿矢りさ

続けて綿矢りさ氏の本。
2編の小説からなる本で、これもまた主人公の女の子が素晴らしい。表題作の『かわいそうだね?』は、彼氏の家にかわいそうな状況の元彼女が住み始める話。かわいそうという言葉の意味と、そう言われそうな状況の人に対する自分の態度が傲慢であるという認識の微妙な差が描かれていた。何より終盤の熱い展開が最高。好きなように本音を出す人は好感が持てる。
後者『亜美ちゃんは美人』は、圧倒的な美人の亜美ちゃんと常に比較されて生きていた自分の話。
超絶美人で周りがとにかく特別扱いする女の子、そしてそんな子の友人のさかきちゃん。常に比較され、常に可愛くないほうとして、やや離れたいと思っているものの、亜美ちゃんはとにかくさかきちゃんと一緒にいたがり、さかきちゃんを気に入っている。それがなぜなのか、そして亜美ちゃんはどんな男の人を選んだのか。
亜美ちゃんに対する印象が、ぐるぐると変わり最終的には納得できるのが不思議だった。そしてさかきちゃんの大きな理解力と包容力や、周りの男性の描写が面白いと同時にリアル。新歓コンパのシーンはムカつくけどありそうな描写で凄かった。綿矢りさ、ストレスのたまる飲み会の描写がうますぎる。



『憤死』 著:綿矢りさ

綿矢りさ氏ブームのためこちらの作品も。
短編集なんだけど、どれもちょっと不気味、というか奇妙な内容。世にも奇妙な物語といった感じ。
一番初めの『おとな』という物語は本当に短いのにいきなり鋭いボディーブローを受けたような奇妙さと嫌悪感で頭をいっぱいにさせられる。『トイレの懺悔室』も人間の狂気がひたひたと足元を漂っているような不気味な感じだし、『人生ゲーム』は常に頭の隅に居座る違和感のような話。転じて人生そのものについても考えられる話だった。
中でも表題作の『憤死』がすきだった。高慢な友人を物凄く下に見つつも、そこからイジメるわけではなくただ興味本位で観察し続ける女の人の話。
とにかく書き出しで一気に心を掴まれた。

小中学校時代の女友達が、自殺未遂をして入院していると噂に聞いたので、興味本位で見舞いに行くことにした。

綿矢りさ. 憤死 (河出文庫) (p.53). 河出書房新社. Kindle 版.

もう本当に最悪な性格だけどこんなに面白そうな書き出しは無い。
やっぱり綿矢りさは凄い。



『ひらいて』 著:綿矢りさ

映画化もされた恋愛小説。
好きな男には彼女がいた。そこから彼女を奪ってしまえばいいという思考へと繋がる、とんでもない女子高生の話。
客観的に見れば破滅型の行動をしていて、何をどう頑張っても入り込めない好きな男とその彼女の間に入りたくて、もがいていく姿は狂気。でもその行動、気持ちが突飛というよりは筋が通っているように感じてしまうのが綿矢りさの恐ろしさ。
そしてとにかく映画が凄い。今も小説を思い出しながら書いてるけど、どうしても映画のシーンが思い起こされてしまうくらい強烈。山田杏奈の演技を始めとして、出演者さん全員がめちゃくちゃうまい。この小説自体もかなり尖って強烈だけど、映画も凄いのでぜひ見てみてほしい。



『夢を与える』 著:綿矢りさ

小さい頃から芸能界で生きる「夕子」の話。
親の意向、芸能人ということで周りと違う視点を「持ってしまった」夕子、そして周りが「普通に経験することを経験しなかった」夕子。彼女の特異な人生と思考、そして恋愛と凋落。外から見たら夕子は失墜したようなものだけど、でもきっとそれは救いだったように思える。本編後の解説にある通り、何の変哲もない、同級生とのシーンがとても眩しかった。どこか力をもらえるような小説だった。



『数値化の鬼 ーー 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』著:安藤広大

去年からちょいちょい読んでいた本を読破。
読みやすいし、文量も少ないし、わかりやすかった。
こういうビジネス書をいくつか読んできたけど、結局共通するのってちゃんと定量的に言葉で伝えましょうってところだと思う。
とにかく定性的な評価って、良い評価でも悪い評価でもだんだん不満や不安が強くなっていくから良くないなあと実感。



『護られなかった者たちへ』著:中山七里

生活保護制度と行政、そして殺人事件の物語。
福祉関係の仕事をしていたことがあるので、全くフィクションとは思えなかった。話の中に出てくる、北九州市で生活保護を受給できなかった方が「おにぎり食べたい」と書き残し餓死された事件は、当時学生であった自分にも大きな衝撃だった。生活保護制度が機能していないし、何よりこの極めて平和で外国に比べて治安の良い日本で、餓死する人がいることにショックを受けた。
私も生活保護の受給のお手伝いをやったことがあるが、受給された方は今も元気に生活されているだろうか。ふとそんなことを思った。
この本ではとある殺人事件が主軸になっているが、読み終えてみればまさに「いったい誰が悪なのか」がわからなくなる。それでいて終盤のどんでん返しには驚いたので、ミステリ小説としても素晴らしい作品。少し自分を見つめ直すきっかけになる本だった。



『両手にトカレフ』 著:ブレイディみかこ

アトロクブックフェアが開催されていた有隣堂の恵比寿アトレ店で購入。ジャケが良い。
話は、貧困家庭で苦しい思いをするミアが、同級生からラップのリリックを書いてほしいと頼まれ、徐々に世界が変わり始める話。そしてもうひとつ、ミアが出会った「カネコフミコ」という100年前に生きた日本人の自伝を読み、同じように世界が変わっていく話。
ミアが母親も弟も世話しないといけない、どこか共依存的にも感じられた環境が延々と続く世界と、カネコフミコの体験した世界、そしてラップという表現方法との出会いによる静電気のような小さな化学反応が、確かにミアの世界を変えていく。子供から見える世界とどうにもならなさ、そして世界の見え方の違い、そのあたりが繊細に描かれた素敵な小説だった。


『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』著:桜庭一樹

Twitterで、鬱小説第1位と紹介されていたので購入。
元々ライトノベルで発売されたと思えないくらいの凄みのある小説だった。
これも『両手にトカレフ』と似たような、やや共依存的な家族関係が登場するものの、その世界がどうというよりはその当事者を救えなかったという暗黒さがメイン。転校してきた女の子が「海野藻屑」という名前であるというところから引き込まれた。この掴みはとても強烈。そしてその子が自らを人魚と名乗り物語の主軸となっていくところも、奇妙でありながら無視せずにはいられなくなる。設定はありふれたところがあるものの、無力さと鬱さは確実に体感できる作品。



『告白』著:湊かなえ

これも鬱小説ランキングに載っていたので購入。
物語の展開、鬱と狂気、登場人物の描写、全て一級品。一気に読み終えた傑作。
松たか子主演で映画化もされた有名作だけど、本当にその物語の素晴らしさが群を抜いていた。
生徒に娘を殺された母親である教師、殺した生徒、その母親、クラスメイト、いくつかの登場人物がそれぞれ抱える闇とそれぞれが主張する正当性、そして起こる殺人と復讐。それぞれの視点で描写されるからこそそれぞれの人物に感情移入する場面もあれば、感情移入できなくて恐ろしいからこそ次にどんな行動をするのか気になってページを進めてしまう魅力もあり。
何より、どう着地するかわからない中でのあの最後の締めくくりはもはや鬱小説、狂気の小説として見事。芸術作品のような素晴らしい小説だった。



『一冊でわかる幕末』 著:大石学 

「龍が如く 維新!極」をプレイし、坂本龍馬や新選組、幕末というものについて勉強したくなったので読破。もちろん、人物名や地名も多く一回読んだだけで理解できるものではないものの、幕末が主に外圧をきっかけにしていたとか、安政の大獄がどういうものだとか、学生の頃は授業中寝てばっかりいて理解できていなかったものを20年越しに理解。読みやすい本だったので、繰り返し読んで知識を定着させたい。



『データ分析の先生! 文系の私に超わかりやすく統計学を教えてください!』著:高橋 信

ド文系、数学は赤点しかとったことがない自分だけど、統計の知識は持っておいて損はない、というか持っておかないといけなそうな気がしたので購入。これ以外にも統計勉強の本は買っていたけど、どうもなかなか読み進められず。
この本は多分初級の初級くらいだけど、わかりやすかったので読破できた。
とは言え理解度は25%くらいなので、繰り返し読む。でも偏差値の求め方とか標準偏差とか、今まで全く知らなかったことをしれて世界が少し広がった感じはある。



終わりに

月4冊ペースですね。通勤中に集中して読めると3日で1冊小説を読めるのでいい感じ。でも、ビジネス書とかはじっくり家で読まないといけないのでなかなか進まず。
ゲームをやる時間も欲しいのでこのペースの維持は難しいと思うけど、年間30冊くらいは読みたいと思う。

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