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旅|太陽の街、青の世界|5

 松本バスターミナルからシャトルバスに乗り、アルウィンへと向かった。車窓に切り取られた風景はビルの群れから大地に広がる田へと姿を変える。遠くに連なる山々は堅牢な城壁を僕に連想させる。

 アルウィンは青い世界に存在している。澄み渡った空気を吸い込んだ。それは真水を口にするかのように、僕の乾きを癒してくれた。透明な海があるように、透明な空気がこの地を支配している。その空気は空の色を反射する。空は青かった。今までも青空を見てきたが、そんな思いが体内を駆け巡る。

 アルウィンとサポーターは自然と一体になる。観客が発する手拍子を遮るものは何もない。背に抱く北アルプスをも味方にし、大砲の砲撃音を彷彿とさせるその音は幾度も空気を震わせる。流れゆく雲。太陽と雲が織り成す変化により、ピッチには光と影が二分する。紛れなき”One Soul”。純度の高い魂を九十分間、存分に味わい尽くした。

 あずさ五十号に乗車し、東京へと戻る回路に身を落ち着かせる。松本にきてよかった。窓外は漆黒に染められているが、青き世界が僕の頭から離れない。

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