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砂絵

その白砂は

君のその海よりずっと

深くて静かで

蒼い夜の隙間に

さらりさらさら

落ちてくる


天を仰いだことすら忘れ

眼を閉じて

その一筋の

砂の流れる様を

漆黒にのまれそうな

藍の中で

その動の存在を嗅ぐ


君は少し

首を傾げた

こちらで私は

桜貝を拾い続ける

どうか焦らず

過ぎ去ったばかりの朝凪を

もう少し

また待っていて


脳裏に浮かぶものは

既に色褪せた

過去の澱

あの瞬間のあの感覚は

もう

君のものではない


出来上がると

崩れ去るもの

触れようとすると

流れゆくもの

視界に映った泡沫は

形なきものでできた

砂の城


誰のせいでもなく

水分を帯びては

少し固まる

その水辺

打ち上げられた海藻は

光絖って曲線を描き 

黒い羊に咀嚼されゆく


動あるものはおそらく

逞しく

しかし

日の出ずる岸辺を

引き戻すことはできない

私達は

ただ佇む

それだけでいい

さすれば

打ち寄せる波の様に

笑みが

静かに

こぼれくる

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