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【映画評】『汚れた血』 レオス・カラックスの80年代
寡黙な鬼才と知られる、フランスの映画監督レオス・カラックス
この『汚れた血』を初めて深夜のテレビ映画で観たとき、高校生のわたしにとっては強い衝撃だった
しかもその衝撃は二重の衝撃だった
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全編のセリフはまるで独白のような詩で構成されているかのようで、しかしながら物語の筋はきちんと飲み込めることに驚き、次に、この映画に出てくる二人の女優、若いジュリエット・ビノシュとジュリー・デルピーの透明度の高い美しさにただただ画面を魅入っていたのだ・・・
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ストーリーはパリを舞台にした、ディストピアとも取れる終末観のある暗い世界で、愛無しの性交で感染するSTBOという伝染病が蔓延し、主人公のアレックスは、今の生活を捨てとにかく一から生活をやり直したかった
バイクに乗った美しい恋人のリーズ(ジュリー・デルピー)を捨て、とにかくここではないどこかに行かなければ・・・おれの腹にはまるで・・・コンクリートの塊が・・・
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やがて自殺して死んだ父親の仕事仲間に誘われ、開発されたばかりのSTBOの治療薬を盗み出す仕事に加わり、その一味にいるアンナ(ジュリエット・ビノシュ)の美しさにどうしても心を引かれ始める
リーズは執拗にアレックスを探し続けてバイクを駆り、アンナは将来に対する不安を抱え込み、アレックスの腹には銃撃で受けた傷から大量に出血が―
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この『汚れた血』が公開されたのは1986年
製作されたのはそれより少し前の年のはずだが、この映画は80年代にこそ誕生しうえた名作なのかも知れない
すでにクラシカルな作品ともいえなくもないが、この物語が持つ普遍的な、若者の揺れ動く気持ちと、率直な衝動と行動が80年代のパリを疾走するかのように描き出されている
もしも可能ならば、この映画のような80年代のパリに行ってみたい
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