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書評まとめ

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書いてきた書評を纏めています。 気になるものがあれば、ぜひ読んでみてください。
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記事一覧

【書評】庄野雄治『たぶん彼女は豆を挽く』 コーヒーが好きなあなたに

【書評】庄野雄治『たぶん彼女は豆を挽く』 コーヒーが好きなあなたに

皆さんの常飲飲料って何かありますか?
緑茶、麦茶、お水、はたまた健康に気に使う方は白湯やレモン水だったり?
私はコーヒーです。同じ方いらっしゃるかな。

最近はアイスばかりですが、仕事に向かう時に2本買って(BOSSと日替わりで1本)、大抵仕事中にもう1本買い足しているものですから、1日に3本は飲んでいます。なんて不健康なんでしょう。
飲んだ時の香りが好きなんですよね。アイスだと特に。

実家暮ら

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【書評】三浦しをん『エレジーは流れない』 社会人でも自分が「何者」か分からず足掻いているのに、高校生がどうしろっていうんだ。

【書評】三浦しをん『エレジーは流れない』 社会人でも自分が「何者」か分からず足掻いているのに、高校生がどうしろっていうんだ。

作者買いしている方が何人かいるのですが、そのうちの1人が三浦しをんさんです。待ちに待った長編小説でした。買うっきゃないよね。

しをんさんは、キャラ造形が本当に上手で、あたかも現実の人物が掛け合ってるかのように、会話を繰り広げるのが凄いところ。

本作の主人公、穂積 怜(ほずみ れい)は高校生。同級生が、将来のことを薄々と考えているのに、何をしたら良いのかが分からない、典型的なモラトリアム期を過ご

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【書評】平野啓一郎『本の読み方』 スローで意義ある読書をしたい!

【書評】平野啓一郎『本の読み方』 スローで意義ある読書をしたい!

本日は、『マチネの終わり』で有名な平野啓一郎さんの『本の読み方』をご紹介します。みなさんはスロー・リーディングされていますか?
 
私は、noteを毎日更新するようになってから、ネタ探しに奔走していて、
今まであまり感じてこなかった、「この本読んで感想文書かなきゃ」なんて強迫観念にかられることがあります。

今までの自分は、好きなタイミングで読書をしがちだったので、「noteを書くために今日はこれ

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このノート術を身につけたい 西寺郷太『伝わるノートマジック』

このノート術を身につけたい 西寺郷太『伝わるノートマジック』

 本日ご紹介するのは、音楽グループ「ノーナ・リーヴス」のボーカル、西寺郷太さんのノート術が纏められている『伝わるノートマジック』です。

 ノート風の装丁からして、好きをくすぐるのですが、中身もそれに違わず濃密。「見返したくなるノートのまとめ方を知りたい」「人のノートを見るのが好き」「ノーナの音楽が好き」という方は是非とも手に取って欲しい。

 こんな感じで、郷太さんが実際に書いたノートが、そのま

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【書評】綿矢りさ『手のひらの京』 慣れって怖い

【書評】綿矢りさ『手のひらの京』 慣れって怖い

 ひとり暮らしを始めてわかることは多いなあ、としみじみ思う。
 親元で暮らしていると、自分が狭い殻の中にいることは、自覚しにくいものだ。

 本作は、京都で実家暮らしをしている三姉妹の、末っ子である凛が主人公となっている。長女の綾香、次女の羽衣も実家で暮らしていて、冒頭は家族の夕食シーンから始まるのだが、それはそれは温かい家族であることが明示される。

 「けれど、このままずっと京都で家族で暮らし

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【書評】原田マハ『フーテンのマハ』 旅をしたいよ

【書評】原田マハ『フーテンのマハ』 旅をしたいよ

 p.11
  人生で失くしたら途方に暮れるものは何か? そんなふうに誰かに訊かれたら、私は迷わず答えるだろう。
 それは旅。
 旅が好きだ。「移動」が好きなのだ。移動している私は、なんだかとてもなごんでいる。頭も心もからっぽで、心地よい風が吹き抜けていく。

 いきなり引用から始めてしまいましたが、皆さん、旅はお好きでしょうか。
 嫌いな人は、少ないかもしれませんね。
 社会人になって、なおのこ

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【書評】先崎学『将棋指しの腹のうち』 読む将のススメ

【書評】先崎学『将棋指しの腹のうち』 読む将のススメ

 将棋。
 今や藤井先生のおかげで、人気は鰻登りです。
 老若男女が楽しめる、最高のボードゲームだと思っていますが、
「駒の動かし方は分かるんですけど、指せないんです」という方が多いのも事実。
 そんな方にオススメしたい。「読む将」になりませんか?

 勝負の世界に生きる棋士たちは、普段何を食べ、何を話し、何を考えているのだろう。その一端を垣間見ることができるのが、今回取り上げる『将棋指しの腹のう

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宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』

 今まで生きてきた軌跡に、自信が持てない方にお勧め。
 「何かやらなきゃ……」と火をつけてくれるのだが、それがよくある自己啓発本みたく、火炎放射器で無理やり着火するようなものじゃないのが、この本の良いところだと思う。
 今の自分には見えないのだけれど、身体の芯に埋まっているろうそくに、燈を灯してくれる、そんな優しさに溢れる小説である。

p19.
 鍋を買いに行く約束だった。ずっと実家にいてろくに

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