マガジンのカバー画像

ショートショート・短編

61
さらっと読めて、ちょっと考えちゃうようなショートショートが書けたら良いなと思って書いてます。
運営しているクリエイター

記事一覧

【ショートショート】恐ろしい星

【ショートショート】恐ろしい星

(1712文字)

宇宙人の隊長(隊長)「なんとか着陸できたな」
宇宙人の隊員(隊員)「そうですね。しかし予定とは違うところに着陸してしまいましたね」
隊長「この星の気流が読みきれなかったからな。とりあえず無事に着陸できて良かった」
隊員「ここは公園というところみたいですね」
隊長「ああ。周りは人間の家だらけだ。まずはこの星の人間を探そう。翻訳機はセットしたか?」
隊員「はい。でも夜ですからね。こ

もっとみる
【ショートショート】ロボタ発進

【ショートショート】ロボタ発進

(2392文字)

登山口の駐車場に車を止め、登山靴に履き替える。
平日だからか、駐車場に他の車はなく、仮設トイレが一台立っているのみ。
よく見かける青いトイレ。トイレがあるのはありがたい。
それにしてもこのトイレは、後ろから見るとロボットに見えるなぁといつも思う。
換気口なのだろうけど、丸がふたつとその下に長方形が配置されていて、これがロボットの目と口に見えるのだ。なんだか可愛らしい。
登山靴の

もっとみる
【#毎週ショートショートnote】命乞いする蜘蛛

【#毎週ショートショートnote】命乞いする蜘蛛

(410文字)

「待て!殺さないでくれ」
そう念じると、私を潰そうとしていた人間の大きな手が止まった。人間は不思議そうな目で私を見ている。
「私たち蜘蛛がいるおかげで、この家に虫が少ないのが分からないのか?」
私を生かすメリットを念じてみたが、人間は「まさか命乞いする蜘蛛なんているわけないな」と言って私を潰した。あの冷ややかな目は忘れない。奴らにとって虫の命など取るに足らないものだ。私を殺したこ

もっとみる
【第3回54字の宴】チョコレート

【第3回54字の宴】チョコレート

これ、実はオリジナルじゃなくて、落語家の瀧川鯉昇のマクラから。さすがに上手いよねぇ。

というわけで、今回も参加させていただきました。
意外と難しかったなぁ。

【ショートショート】どこにでもある安心

【ショートショート】どこにでもある安心

(643文字)

登山口から見る真っ白な頂きの後ろには、濃い青の空が広がっていた。
私たちパーティは、今季初の雪山登山が絶好の天気に恵まれたことに笑顔を交わしながら、頂に向かって出発した。

ところが天候は急転。樹林帯を抜け、森林限界に出たところで吹雪となった。
視界が悪くなる中、撤退も考えたが、晴れの予報だったことが捨てきれず、もう少ししたら回復するのではないかという希望的観測で、私たちはゆっく

もっとみる
【54字の物語】2024年1月の54字

【54字の物語】2024年1月の54字

1月中に、思いついた時に作っていた54字の物語。
恋愛ものふたつにSFものふたつでした。
どうも、ボクが思いつくのはこのふたつのジャンルだなぁ。

画像は8739sshuhoさんがアップしたものを使わせていただきました。

【#毎週ショートショートnote】ツノがある東館

【#毎週ショートショートnote】ツノがある東館

お題:ツノがある東館 & 一行目で惹きつける
文字数:410文字

「あなたは人生の岐路に立たされている」
分かれ道の看板にはそう書かれていた。
片方の道の先を見るとツノがある東館が見える。
もう片方の道の先には輪っかのある西館が見える。
どちらを選ぶべきか。
ここは素直に西館か?いや、罠かもしれない。
だからといって東館に行く奴がいるか?
私は元来自分に甘い性格で、それが元で失敗することも多い。

もっとみる
【#シロクマ文芸部】布団から

【#シロクマ文芸部】布団から

お題:布団から
文字数:965文字

布団からもぞもぞと這い出して、欠伸しながら伸びをした。
隣で寝ているヤツはまだ起きない。
腹が減ったので起こしてやろうと思ったがやめた。気持ち良さそうに寝ているからだ。

俺たちが乗った宇宙船は着陸に失敗して大破したが、幸い乗組員の3名は全員無事だった。
通信機器も修理不能で、母船に連絡を取ることもできない。
そうなれば、なんとかこの星で生きていかなければなら

もっとみる
【#毎日ショートショートnote】アメリカ製保健室

【#毎日ショートショートnote】アメリカ製保健室

お題:アメリカ製保健室 さらにどんでん返し
文字数:410文字

アメリカ製保健室が校庭の隅に設置された。
保健室登校の児童の、校舎から離れた場所の方が安心するという意見でこの場所に設置されたそうだ。
保健室登校児童の増加に対応して「室」と呼ぶには大きく、3階建てで、雑居ビルほどの大きさがあり、災害を想定して堅牢な建物になっている。
保健室登校の児童からも好評だった。アメリカ製のゲームなどを楽しみ

もっとみる
【ショートショート】要精密検査

【ショートショート】要精密検査

(617文字)

「要精密検査」の連絡を受けた。
何事もないと思いつつも、やはり最悪の事態を想像してしまう。
私がいなくなったら、日本の政治はどうなるのか。
国会議員になって25年。政権を担う我が党で要職を歴任してきた。
私たち国会議員にとって、国民が主だということを忘れずに、クリーンで透明性のある政治を目指してきた。

とはいえ、多少の必要悪は仕方ない。政治の潤滑油とも言える。
人々が権力に群が

もっとみる
【#シロクマ文芸部】雪化粧

【#シロクマ文芸部】雪化粧

お題:「雪化粧」から始まる物語
文字数:595文字

雪化粧を纏って白くなった街は音を包み込む。
久しぶりに感じる静けさに、私はカーテンを開ける前から雪が降ったことを悟った。
朝の光はグレーの空にぼんやりと浮かび、その前を音もなく白い雪がゆっくりと落ちていく。
ここに暮らし始めて何度目の冬になるのか。私は数えようとしてやめた。数えきれないほどの季節を繰り返した気がする。
それでもまだ旅の途中だ。

もっとみる
【#毎週ショートショートnote】ドローンの課長

【#毎週ショートショートnote】ドローンの課長

お題:ドローンの課長
文字数:410文字

「角田君、最近頑張ってるね」
パソコンに向かって企画書を作っていると、ドローンの課長が後ろから声をかけてくれた。
「ありがとうございます」
振り向くと微かにプロペラ音を発する課長がふわふわと浮いている。
課長がドローン化してから、もう半年以上が過ぎた。

コロナ禍でのリモートワークが終了した日、課長は出社を拒否した。
「それでも私の営業一課の成績は上げて

もっとみる
【ショートショート】スキャンダルはガムの味

【ショートショート】スキャンダルはガムの味

(1481文字)

芸能界の裏組織があるという噂は聞いていた。しかし、本当にあるとは信じていなかった。
そして今、その組織の男が目の前にいる。

「Tさん、ずいぶんのご活躍ですね。今やテレビであなたを見ない日はない」
少し禿げかけた頭髪の男は、ソファの背もたれに体を預け、薄く色のついたメガネの向こうでニヤリと笑った。
「ありがとうございます」
私は警戒しながらそう答える。
「芸人だったあなたが、情

もっとみる