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【#毎週ショートショートnote】命乞いする蜘蛛

(410文字)

「待て!殺さないでくれ」
そう念じると、私を潰そうとしていた人間の大きな手が止まった。人間は不思議そうな目で私を見ている。
「私たち蜘蛛がいるおかげで、この家に虫が少ないのが分からないのか?」
私を生かすメリットを念じてみたが、人間は「まさか命乞いする蜘蛛なんているわけないな」と言って私を潰した。あの冷ややかな目は忘れない。奴らにとって虫の命など取るに足らないものだ。私を殺したことなど明日には忘れているだろう。次は人間に生まれ変わってやる。

「今まで私がどれだけ苦労してきたと思ってるんですか!」
「有難いと思ってるよ。だけど仕方ないんだ、党からの命令でね。君には人柱になってもらうしかないんだ」
そう言い放った時の議員の冷ややかな目は忘れない。
明日になれば私は裏金作りの首謀者として逮捕される。真実を訴えても握り潰される。党からしてみれば、議員の秘書など虫ケラだ。明日には存在すら忘れているだろう。
あれ?この感じ、どこかで…。

久しぶりに参加させていただきました。
たらはかにさん、よろしくお願いします。



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