見出し画像

【毎週ショートショートnote】天ぷら不眠

(410文字)

電話の音で起こされた。テレビをつけると試験放送の画面で静止している。
なんでこんな真夜中に天ぷらを揚げなければならないのか。
良く溶いた卵に冷やしておいた水を注いでかき混ぜ、さらに小麦粉を入れて少しダマが残る位に混ぜる。
鍋に油をたっぷり入れて火にかけ、冷蔵庫から具材を取り出す。
海老にキスの海鮮2種にシシトウ、ナス、カボチャだ。それぞれに打ち粉する。こうすると衣が均一につくので綺麗に仕上がる。
油の温度は175℃くらい。温度が下がらないように火加減に気をつける。
衣に潜らせ鍋に落とすと花が咲く。この瞬間が好きだ。
今日もカラッと揚がった。我ながら惚れ惚れする。
箱に並べ終わると、ちょうどUberの配達員が取りに来た。
配達員の背後はうっすらと朝焼けが始まっていた。
それにしても、なぜ普通のサラリーマンの俺の家に天ぷらの注文が来るようになったのか。以前は週に一度くらいだったが、最近ではほぼ毎晩だ。
おかげで天ぷら不眠が続いている。


たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加させていただきました。
久しぶりですが、よろしくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?