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繰り返し読みたい現代の話

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時事問題として取り上げましたが、現代の問題の基礎知識等を書いています。
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#国際政治

不安定な韓半島 朝鮮戦争まで

金日成総書記の勝算①日本の遺産
アメリカとの取り決め通り、ソ連軍は38度線以北まで軍政を敷きました。当初東ドイツと同様、日本が残した工場設備や社会インフラ等を解体し本国へ輸送しましたが、すぐにやめ、スターリン書記長の眼鏡にかなった金日成を1945年9月に北朝鮮に送り込みました。(北朝鮮の歴史的には、金日成が抗日運動を指揮したことになっていますが、ソ連や中国が異なる史料を公開しています)

ここで、

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すれ違いの米中関係 その1

絶妙な2024年台湾総選挙
2024年1月台湾での総統選挙は与党・民進党、第一野党・国民党、第二野党・台湾大衆党の党首による三つ巴でしたが、反中派と呼ばれる中国警戒派、親中派、とその中間としてよく政策の違いを説明されていました。親中派とその中間が、野党として統一候補に絞ることができれば、政権交代もあり得ましたが、統一できずに与党が総統選を制しました。その一方、立法院では与党が過半数席を失い、いわゆ

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アメリカ単独覇権から激動のリバランス時代へ

ロシアに降り立つシカゴ・ボーイズ
以前ラテンアメリカ諸国のお話で、シカゴ学派(シカゴ・ボーイズ)の指導の下、いかに国家資産が欧米企業の餌食になったかをお話しました。そのシカゴ・ボーイズが次に向かった先は、ソ連崩壊直後のロシアでした。全ての企業が国営企業であるため、得意の民営化を進めるにはあまりにも莫大な量(そして欧米企業にとっての利潤)があることは明らかでした。

ソ連崩壊直後の混沌の中、シカゴ・

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パレスチナ・ハマスの勝算

今年10月9日より、パレスチナの武装集団ハマスがイスラエルへ攻撃を仕掛け、1000名強を殺害し、200名余りを人質に取りました。これに対し、イスラエルはハマス殲滅を掲げ、大規模な空爆を中心に既に9倍以上のパレスチナ人を殺害し、パレスチナでの電気・水道等の社会インフラを止め、外国からの人道支援物資搬入ルートもほぼ閉鎖し、200万人ともいわれるパレスチナ人への報復措置を続けています。(十分国際法違反で

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イスラム・現代 後編 イスラエル・パレスチナ

パレスチナ問題の起源
パレスチナ問題のそもそもの発端は、第一次世界大戦中のイギリスの三枚舌外交のせい、と言われます。3枚の舌の1枚目は、イギリスはフランスとオスマン・トルコ帝国解体後の領土分割を協議し結んだ、サイクス・ピコ協定です。以前お話しました通り、英仏の資本の集中投下場所に応じて、中東の南部をイギリスが、北部をフランスが、その勢力下に持つことになりました。その一方、パレスチナは国際委任統治と

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「ワグネルの乱」のメッセージ

不可解な「ワグネルの乱」
2023年6月23日、「ワグネルの乱」が発生しました。それまでウクライナ戦争で活躍していた、ロシアの民間軍事会社、ワグネル社の一部が戦線を離脱し、モスクワに向かいましたが、ベラルーシ大統領の仲裁により一日で解散したという、何とも不可解な事件です。

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静かに進行するBRICS+

中ロの世界構想:BRICS+
先日、岸田首相がウクライナを電撃訪問する同タイミングで、中国の習近平総書記がロシアを訪問しました。世界の注目が岸田首相に逸れてしまった感がありますが、世界全体からすれば、中ロのこれからの意図を読み解く方が重要です。その声明には、彼らの新しい世界構想がおぼろげながら表現されているからです。

中ロの世界構想に関する指針*は、以下の通りです。
・国際法を遵守し、機能不全の

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SCOサミット会合から視る多極化世界(2022年9月執筆)

SCOは中央ユーラシア町内会
今年9月中旬に上海協力機構(SCO)のサミット会談があり、話題になりました。日米欧の悪の権化的な扱いを受けているプーチン大統領が出席し、加えて中国の習近平総書記とのサミット会談がありました。その時は中露の結束だとか言われましたが、実際にはどうだったのでしょうか?

このSCOという組織は、元々冷戦終結後中国と旧ソ連の衛星国であった中央アジア間の国境付近での治安維持につ

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サウジ皇太子の野望

3月10日サウジアラビアとイランが中国の仲裁で国交回復するという電撃ニュースが報じられました。どこが電撃かと言えば、それまで犬猿の仲と評されており、それが火種となり、紛争が起きているからです。

従来の構図:犬猿の仲のサウジアラビア・イラン
イスラム教の宗派上からも意見があわない両国ですが、勢力的にいえば、イランはレバノン、シリア、イラク東部、イエメンの一部に、サウジアラビアはイエメンの一部を除く

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危ない米中関係

アメリカに根強い反中国感情の根源?
バイデン政権発足後、米中間のオンラインサミット会談の直後にアメリカ側が突然中国を挑発する行動を起こすパターンが見られます。前回はクアッド(日米印豪戦略対話)&オーカス(米英豪軍事同盟)発表、今回はペロシ下院議長の訪台です。これまで米台間では現職実務者レベルの官僚交流以上はしないことになっていますから、影響力の大きな現職政治家の訪台はタブーです。(決していいパター

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