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easy poem

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簡単な詩を掲載。自由に。詩誌に投稿はしないだろう詩、のちのち推敲して投稿するかもしれない詩。
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easy poem「季節のころ」

easy poem「季節のころ」

節分を迎えるころは
最期の一輪の花殻が立つ
四匹のうち一匹の鬼が
くしゃみをしながら
それを摘みとり
ぱきっぱきっ
と、手もみをする

衣装ケースの中の古くなって
捨て時がきた服を袋に詰める
行事ごとに写るどうしても
名前を思い出せない人の顔
色褪せたアルバムの写真は
記憶の抜け殻さえ
アイロンをあてたとして
シワが伸びることはない

橋を渡りきるまで
ごみ収集車を見送る
足りない気がして
橋へむ

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easy poem「灰」

easy poem「灰」

グレーのセーターを着ているのに
曇り空の日が恋しいのに
猫を飼うならのならば
ロシアンブルーと決めているのに
世の中から
生活から
コンクリートがなくなったら
鈍色の家電がなくなったら
きっともっと素敵な景色が広がる
と、思っている

黄色信号は進む派
白バイが少し決めかねている間に
50m先のファミレスに入庫する

年齢確認という制度が
曖昧な時代に生きていた
17歳で飲酒を覚え
18歳で喫煙を

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easy poem「赤」

easy poem「赤」

「帰り道」
は、うまくできている
同じ距離でも
行き道より早く感じるように
そうゆう風にできている

「帰り道」は言う
赤信号を短くしてるんだよ
思考回路が狂わないように
止まる隙をなくしているんだよ
帰るべき場所を間違えないように
しなければならないからね

帰りたくない時は
どうしたらいい?

「帰り道」は言う
思考回路を元に戻さなくてはならないね
次の信号を渡る時は
ひとつ向こうの信号を渡る

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easy poem「橙」

easy poem「橙」

欲しいものは
手に入らないものばかり
朝焼けを見るには
早起きをする必要がある
夕焼けを見るには
誰かが教えてくれたらいい

JR武蔵野線は東京23区の外側を
扇状にぐるりと回る橙色で
いくつもの私鉄とJRと繋がり
便利な路線だが
どちらかと言えばマイナー路線だ
JR武蔵野線に乗れば
都心でも田舎でもどこにでも
乗り継いで行ける
だから今でも好きだ
子供の頃
祖父母の家に預けられる時は
母が駅の自

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easy poem「桃」

easy poem「桃」

「クリトリスにバターを」

蜂蜜よりもメイプルシロップ
が、好きですし
バターよりもメイプルシロップ
が、好きです

透明を説明する為には
色がない
という事を証明する必要があります
描かない、こと
書かない、こと
はたまた
欠かない、こと
青い透明ならば
白い湯船の水紋
あるいは北欧人の瞳
もしくは単純に空や海

さて、わたくしは
ある男を決して
呼び捨てにしたりは致しません
読者のいない物語の

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easy poem「緑」

easy poem「緑」

最後に教わったのは
黒で書かれた数種類の記号が
赤と緑の枠の中にあって
緑の枠の方がはっきり見えたら
度数が強すぎるということ
片目ずつ行い最後に両目で行う
それで赤と緑のバランスとる

これは眼鏡店における検眼の話である

父は分厚いレンズの眼鏡をかけていた
母は77歳の今も裸眼で視力は良い
13歳の頃に父の遺伝子が蠢きだし
赤と緑のバランスを測るようになった
他人の赤と緑のバランスを測ることも

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easy poem「青」

easy poem「青」

青空の月をスプーンで掬って
コップの水に浮かべて
飲み干したならば
月夜の湖で月のボートに乗り
岸辺を探して進む途中で
陸には何もないと
櫂を沈めて小さな波に
逆らわず漂い続けたらならば
きっと朝が来ない幸せが
待っているのかもしれない
なんて感傷的な気分も
青い食べ物は食欲を無くすのに
青い飲み物は夏によく似合って
海の家ではよく売れるのだと
バイトの男の子が言っていたけど
あれは暑い夏の出来事

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easy poem「白」

easy poem「白」

白は正しい
白は清い
白は美しい

白星
白衣
白無垢
美白化粧品

校則
白い下着以外は着用禁止

警察
奴にはアリバイがある白だ

私は牛乳が飲めません
薄茶色の豆乳で育ちました

私の胸に赤い痕があります
あなたがつけた痕です
正しくないのか
清くないのか

乳白色の入浴剤を入れましょう
白い泡をいっぱい立たせましょう
それから一緒に白い湯に浸かりましょう
そうして私たちは真っ白になりましょ

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easy poem「あっちの空」

easy poem「あっちの空」

ひときわ大きなゴールデンレトリバーの吐く息がとても白く、それは昔テレビで観たたばこを吸うゴリラの吐く煙に似ているが、私の吐く息は少し白いだけであり、朝のお散歩にはマスクを外すようになって日々その白さは濃さを増しているように思うも、ゴールデンレトリバーはマスクをしないから相変わらずとても白いままであるのが少しうらやましい朝で、あっちの空は晴れており影のあるのとないのと境い目はどのあたりなのだろうか気

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easy poem「私ABC」

easy poem「私ABC」

目が覚めると
私Bはよく動いた
朝ごはんを作り
洗濯物を干した
私Aの下着は
箪笥の奥にある

私Cはよく笑った
友人とウォーキングをしながら
互いの夫を褒め合いながら
子供の受験について語った
私Aの夫は
友人の評価「は」高い

私Aは透明人間であろう
が、実在する
私Bと私Cは
私Aと結託している

(B=C)≒A

私がベッドに入って眠る
私Aは箪笥の奥を漁っている
#日記 #詩

easy poem「nostalgie」

easy poem「nostalgie」

ブランコに乗りたい
シーソーに乗りたい

椅子取りゲームがしたい
花いちもんめがしたい

50m走のタイムを測りたい
走り幅跳びがしたい

英単語のテストをしたい
漢字のテストをしたい

木登りがしたい
砂のお城を作りたい

初めてのキスをしたい
初めてのセックスをしたい

太陽が当たるのに
外に干した洗濯物が
凍って固くなってしまった
氷点下の一日だった

夜に玄関先に
水を入れたグラスを
置い

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easy poem「脈」

easy poem「脈」

1月23日 AM8:13

空にも脈がある、と思う。
裸木が教科書でみた毛細血管に
とてもよく似ていたから。

踵にも脈がある、と思う。
靴下がゆっくりと赤く
染まってゆくから。

脈打つリズムで踵が痛む
乾燥して固くなった踵の
ひび割れの一筋が
深くなった模様である
ひび割れが血管に
達したのだろう
歩くと痛い

今日はもう歩けそうにない

生きる事に
脈絡なんてない
#日記 #詩

easy poem「晴れのち曇り」

easy poem「晴れのち曇り」

良い天気だ
と、いうのは晴れのこと
と、誰が決めたのだろう
曇りが好きな人は
曇りが良い天気だし
雨が好きな人は
雨が良い天気だ

理由なく悲しい朝があって
嫌な夢に寝返りを繰り返す眠りがあって
私の一日はひどく退屈である

気象予報士に不意に
明日の天気を聞いてみるといい
答えはいつでも
晴れのちくもり
なんだって
冬は快晴が多いこの街で
木枯らしが吹いたら
砂埃で空が茶色くなる
それでも冬晴れ

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easy poem「陸橋」

easy poem「陸橋」

電車は西に向かっている
日の入りの太陽を
追っているわけではない
私は私を追いかけて
あるいは
あなたがあなたを追いかけて
北へ向かっているように

音が変わる瞬間の
車輪の決意は
遠くへ響いてから
私の耳に食い込む
その瞬間がとても好き
耳の裏のGIVENCHYが
鼻腔をくすぐる
河川敷を歩く犬たちに
感ずかれているに違いない
それならば、おもしろい
紐を操る人を困らせるほどに
走ってみたらいい

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