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芸術一般

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芸術について、なんでも書きます。はじめはヨーロッパ絵画をかなり題材にしていましたが、現在は映画評論・芸術論・文学論などが多くなっています。
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2022年5月の記事一覧

<芸術一般>三年目の『ゴドーを待ちながら』――あるペシミティックな芸術限界論――

<芸術一般>三年目の『ゴドーを待ちながら』――あるペシミティックな芸術限界論――

(注1:もう今から37年前の、まだ20代後半だった頃の心境です。当時の私は、仕事が社会貢献につながるとは考えられませんでした。私にとって最も大切な「自分自身のやりたいこと」を阻害するものだと認識しながら、生活のために止む無くやっているものが仕事でした。その不誠実さを反省することもなく、私はこの考えに従って、定年まで仕事をしました。その好悪について議論することは、既に停止していますので、ここで議論は

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<閑話休題>『なんじゃもんじゃ博士』の名言と永遠のイメージについて

<閑話休題>『なんじゃもんじゃ博士』の名言と永遠のイメージについて

 長新太著『なんじゃもんじゃ博士』の『ハラハラ編』と『ドキドキ編』には、合わせて200話の一話完結式の漫画が描かれている。そして、各漫画の枠外に著者の言葉が短く添えられている。この言葉が意外といい。

 それで、「これは良い!」と思ったものを、各話の番号とともに抜き出してみた。

『ハラハラ編』

13 世の中には、わからないことがたくさんある。だからオモシロイのであーる。ハハハ

16 あめは、

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<芸術一般>マイフェイバリットフォトから

<芸術一般>マイフェイバリットフォトから



「写真の神様」アンリ・カルティエ・ブレッソンに、似たような作品があったと思う。

 2017年アラブ首長国連邦アブダビの、グランドモスク(掲題画像も同じ)にて。

<映画評>ロードオブザリングス(指輪物語)

<映画評>ロードオブザリングス(指輪物語)

 これは友情の物語である。主人公フロドをめぐる邪悪な指輪を廃棄するための友情(フェローシップと英語で言いたい)の他に、フロドとサム、ピピンとメリー、レゴラスとギムリ、ガンダルフとアラゴルン、そして友情の裏切り例としてスメアゴルとデアゴルのケースも含めて、あらゆる関係が「友情=フェローシップ(相互扶助)」に集約されている。

 物語自身についても、人間、エルフ、ホビット、ドワーフ、エント(木の種族)

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<芸術一般>ジョットー、ボッカッチョ、パゾリーニ

<芸術一般>ジョットー、ボッカッチョ、パゾリーニ

 今、ダンテ『神曲』を読んでいて、「地獄篇」、「煉獄篇」を読了し、こらから「天国篇」へと進む。その途中、ダンテがルネサンス美術に関心が深いことを知り、そこからジョットーの挿話を描いたボッカッチョ『デカメロン』、そして『デカメロン』を映画化したピエロ・パオロ・パゾリーニを思い出した。

 もしかして?と思い、Youtubeで検索したら、イタリア語のままだが、私の大好きなパゾリーニ自身がジョットー役を

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<閑話休題>映画の幸福な時間

<閑話休題>映画の幸福な時間

#映画館の思い出

 人には誰にでもお気に入りの場所とお気に入りのものたちによる幸福な時間がある。

 たとえば、海辺で遠く客船の彼方に沈む真っ赤な夕陽を眺めながら語らう、恋人とともにいる幸福な時間。仕事から帰ってきた父親が、愛する妻がやさしくあやす赤ん坊をみるときの幸福な時間。自分が最もお気に入りのお人形とともに遊んでいる女の子の幸福な時間。

 ずっと欲しかった戦車の模型が、近所の野原の小山を

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