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5人の女、ひとりの男-コンサート制作記⑥

4/17に、無事に『ふたりの女』公演を終えた。

終えたというよりは、遂げた、という方がしっくり来るかもしれない。
終わって1週間以上経ってしまったけれど、ずっと制作記を読んでくださっていた皆様に当日の様子をお伝えすべく筆をゆっくり取った。


山の上のホール 

初めて訪れた山口県岩国市は、本当に清々しい場所だった。眩しいほどの緑がそこかしこに輝いて、どこにいても流れる綺麗な水の音が小さく聞こえるよう。
そして会場となったパストラルホールは、予想していたよりもずっと山深い場所にあった。

ホールへの道中であまりに川が綺麗だった
山とアートディレクターなっつん
差し込む光が本当に素敵だった

とにかく、静か。夜には周りで鳴くカエルの声がしたのがとても愛おしかった。

そしてコンクリート造りなことに加え感染対策でホールのドアを開け放っているので、とにかく残響が長くてクリア!本当に響きの美しい場所である。ホールの方は1.7秒程度のリバーブと仰っていたが、体感としてはもう少し長く、例えるならばヨーロッパの教会とかにかなり近い。歌い手的にも無理に大きな声を出さなくて良いという印象だったようで、とても音が良かった。

写真展

かねてより実現させたいと話していた、アートディレクターなっつんの手がけた写真の展示がものすごく素敵だった。

抜け出してきた本人、みたいな図
順路も設定している
特大ポスターでお出迎え

実はかなり、パネルの処理や貼り方に工夫していて大変だった部分でもある。が、とてもとても美しい仕上がりだっただけでなく、当日ご来場くださったお客様にかなり楽しんでいただけたとのことですごく嬉しかった。なっつんの美意識とふたりの綺麗さを、思う存分に堪能できる企画だったと思う。

プログラム

当日配布のプログラムも実はすごくこだわって作っていたので、宜しければぜひ一部をご覧いただきたいです。

おさとによるごあいさつ
曲目解説

文面はおさと、デザインはなっつんです。

曲目解説は、いわゆる「○○年に××才のモーツァルトが☆☆というオペラのために書いた曲…」的な、ファクトだけを述べる形式のものとは一線を画している。
設定上の存在である、愛人と妻。このふたりが歌い手として、そしてふたりの女としてそれぞれの曲をどう見るか?という観点から構成を提案させてもらった。

ちなみに、参考にしたのは香水の解説文である。まず香りの成分(ファクト)を提示した上で、ともすれば抽象的でもある香りの根拠となった物語や設定を美しい言葉で紡いでいくのを読むのが昔から好きなのだが、目に見えない美しいものを語る上で用いられる手法を今回の芳しい演奏会に応用したかった。

舞台

眩しいおさと
チェック

今回、かなりしっかり照明を作っていただけたことがとても大きい。舞台上にはピアノと演者のみで装置や小道具はなしという選択をしたが、情景の描写のために光はものすごい力のある存在だった。

と言っても、私たちからは切り替えのタイミングと色の寒暖などをお願いしただけなのだが…照明をご担当くださった方が本当に種々のお心配りをくださっていたのだ。配信があるから通常よりもやや強め、とか、肌を綺麗に見せるために常にブルーの光を仕込む、とか、あげたらキリがない。月の光の下で切々と歌った次の曲では朝の太陽の光が降り注ぐ、みたいな表現がほんとうに魅力的だった。

字幕

こだわった部分だ。
実は当日、私は客席ではなく舞台袖でオペレーションをしていた。当初、楽譜を見ながら切替をしていたのだが入りハケのタイミング制御をしながらだとうまくいかなかった部分もあり、当日は口パクで一緒に歌いながら切り替えを行ったらこれが大成功だった。字幕を歌い手の言葉を伝えるツールだと考えたとき、単純に音の切れ目が文脈の切れ目ではないんだな、というのは学びだった。

スライドを作ってくれて、今回もスタッフで入ってくれたなっつんのパートナーのマグ氏となっつんと三人で、コンビニのお菓子をつつきながら深夜まで字幕を総修正したのがマジで楽しかった。大人になってからの方がずっと理想の青春をやっているが、理想の青春というものは大人が作ったものだからしょうがないな、なんて思ったりした。

そして迎えた本番

もしよかったら、こちらダイジェスト映像なのですが…少しお時間をいただけませんか。
ぜひ、見ていただきたいです。

不思議なもので、当日、本当に今までの中でいちばん素敵だったのです。
ふたりの女はそこにいました。そこにいて、命を燃やして歌っていた。今はいないモーツァルト、もういないモーツァルト、彼の足跡と筆跡は音となり、彼女たちの体を通してホールに満ちました。なんて、叙情的な感想を言いたくなるくらい…

オペレーター席にいても震え上がるほどの瞬間が何度もあって、ああ、こんなふうに音楽を届けられたなら大成功だな…と噛み締めたものです。

最後の曲は根本さんによる新曲なのですが、モーツァルトがもし今このふたりに音楽を遺すなら、を少し超えたところで筆を取って下さりました。
系譜であるシュトラウスの筆致も混ぜつつ、日本語をはじめそれぞれの言語の歌詞が、2人の声域でいちばん美しく響く音を紡いでくださった傑作です。

ちなみにアーカイブは5/31まで配信しております。宜しければ本編も、お楽しみいただけたら…嬉しいです。チケットはこちらから、税込1000円で配信終了まで何度でもお楽しみいただけます。

うちらとモーツァルト

ふたり、いえ、まりえとなっつんと私も加えたら5人の女はモーツァルトというひとりの男の存在に向き合い続けておりました。
彼は決してこっちを振り向いてくれない。その代わり、宝石箱みたいな音楽と、天才の物語と、音楽家とお客さまへのいっぱいの愛を残してくれました。その愛を紐解いて、今度は私たちがお客さんに届ける。加えて、歌い手たるおさととまいまいの魅力も余すところなく伝えたい。
そんな願いがほとばしって、あの演奏会があったと思います。

こんな風に向き合える音楽があること、そして同じ目標を目指せる友人に恵まれたこと。今回の出来事で、彼女たちと今までなかったくらいいろんな話をして、10年の付き合いながらまだまだ知らなかった魅力的な一面がたくさんあったことを知りました。

モーツァルト、見てますか。
あなたの音楽を北斗七星みたいに目指して、私たちは歩きました。そしたらね…

ほんとに楽しかったよ!ありがとう!!
今はその気持ちでいっぱいです。

ここまで制作記をお読みくださった皆さまもありがとうございました!
この演奏会に続きがあるかも知れない、そうなったらぜひまた、お知らせさせてください。

たべもののはなしも引き続き、おいしく楽しく書いていきますので宜しくお願いします。

ドンまりえ、おさと、まいまい!お疲れ様でした。

あー、終わっちゃった!楽しかった!うふふ。 モーツァルト、大好き!

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