すこし不思議サイコな文章を書きます。写真好き。サギです。 好きなもの→川/暗渠/夜散歩…

すこし不思議サイコな文章を書きます。写真好き。サギです。 好きなもの→川/暗渠/夜散歩/井上靖/太宰治/北方水滸伝など 最近は安倍公房とミステリー小説にハマっています。      📷https://www.instagram.com/meltyphoto

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  • 小説

    生き恥を晒しています。

  • ギャグ

    大体深夜テンションで書いています。 文体もとってもライト。

  • 飯と法螺

    気まぐれ連載。 ご飯美味しい🍚

  • 散文

    短くて読みやすい文章のまとめ。

最近の記事

植木鉢に私を半分やる事にした話

202303052342 ** 植木鉢に私を半分やる事にした。 大した理由はない。毎朝通勤時によく見る植木鉢が三回連続で風に煽られて倒れていたからだ。それだけ。 今朝三回目の助け起こしのち修復をやってのけた後、急に思いついた。 「いいかい、よく聞いて。君に私を半分あげるから、これからは倒れそうになったら、半分の私でエイッと踏ん張るんだよ」 早速植木鉢に言い聞かせる。 「君は不服に思うかもしれないが、この提案にはちゃんとした理由がある」 私は得意げに続けた。 「なぜ君だけ毎

    • 『』

      201902261427 ** 相も変わらずよくこんな話ばかり書くと思う。 とにかく人が起き出す前に書かなくてはいけないと必死だ。 時刻はもう少しで5時。 本当はもっと早い時間にしたかったのだが、気付いたらもうこんな時間になってしまっていた。 少し動揺していたのかもしれない。 ** 午前3時 夏季休業中。 寮の自室。 ここ数週間で癖になった自堕落な昼夜逆転の生活。 外が明らむまで起きている事も増え、目の下には隈がくっきりと貼りついて取れない。気分も変調だ。 自律神

      • あかい、くに

        202101192000 ** 死にたくて堪らない男がふと目を覚ますと、そこは異空間だった。 どうやらこの空間にいる者は皆先の大火災で死んだらしいのだが、何だか黄泉の国へ行けない蟠りが有って皆々ここに留まっているらしい。 周囲は阿鼻叫喚で、肉か血か分からないピリリと鼻を焼くむせかえるような臭気が漂っている。 しかし男は実に陽気だった。 二十何年間生きてきて今日が最高の日だったのだ。 なにせ、ようやく死ねたものだから。 男は周囲のヒトらしい形をしたもの全てに順繰りに声をかけて

        • わくらば 後編

          202007131052 ** ハッと気付いて部屋を見回した。 ざあっと血の気が引いて、部屋の温度が固く冷えていく。 このピンポン、確かに鳴っているのじゃないか。 しかも気のせいでなければさっきも一度鳴っていなかったか? おそる、おそる玄関に向かって、途中で気が付いて念のために包丁を、出しかけて、取られて子どもに万一があったら下手に出さない方が、と考えてやめて、結局盾にも使える一番使い慣れたフライパンを後ろ手に握って、 覗き穴を覗くと誰もいない。 ふうーっと息をついて、

        植木鉢に私を半分やる事にした話

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        記事

          わくらば 中編

          202007131052 ** 蝉の声が五月蝿くて目が覚めた。 子どもができてから蝉の声が苦手だ。0歳育児の頃を思い出すのだ。 ああまた泣いてる、早くオムツを替えて、いや授乳か、何でもいい、とにかく早く起きなきゃ、でないとあの人が来る、と心臓がバクバクしながら飛び起きて、ああもうあの男は居ないんだった、と複雑な気持ちで暫し呆然とする。 ハッと気付いて横を見て、三歳児がまだ寝てくれている幸運に胸を撫で下ろす。 朝が来る前の時間はポツポツと感傷が湧いてくる。 これに呑まれると

          わくらば 中編

          わくらば 前編

          202007131052 ** ピン、ポン 掃除機をかけていたり、テレビの音楽番組を流して洗い物をしていたり、ふとした瞬間子どもの声がサラウンドのように意味を成さないわあわあと襲いくるだけの音声になったりする時、 その裏にうっすらとピンポンの音が鳴ったような、気のせいか気づかれかも分からない一瞬が有って、その瞬間、 ぞおっとあの男の姿が脳裏を過ぎって、もう怖くて恐ろしくて堪らなくなるのです。 必死になって掃除機のスイッチを切り、コンセントを引きちぎるように引き抜いて、そ

          わくらば 前編

          傷をつける

          201904212036 ** 自傷行為をする人間が、理解できなかった。 何故わざわざ痕が残る様な傷を付けるのか、神経が知れないと思っていた。 土台痛いじゃないか。傷痕を見るだけで眉間に皺が寄る程、傷を付けた時の痛みが想像できて、不快。 本当にどうかしていると思っていた。 若く潔癖な頃には、心の弱さ故だといっそ嫌悪していた。 何の益も無いどころか、傷痕まで残ってその後の人生に影響を及ぼす様な事。 馬鹿らしい。どうせ周囲の気を惹きたいからやっているだけでしょ。 パフォーマ

          傷をつける

          イルミネーション、やってるらしいよ

          202212032342 ** 街の様子がおかしいのだ。 こちらの通りには人っ子一人居ないのに、確かに遠くの方に人の騒めきがある。恐らくは四百や五百くらいの人数がひとところに拡散している気配がするのだが、歩けど歩けど誰も居ない。 ビル街を次々に抜けていくと、ビルの狭間に少し開けたところがあって、四十メートル四方の空間だけ木々に電飾が点いている。 なかなか見事だが誰も居ない。 と、ふと耳に入ってきた言葉が、 「イルミネーション、やってるらしいよ」。 ハッと気付いて耳を押さえ

          イルミネーション、やってるらしいよ

          世界が桜の花びらに包まれたみたいにふわふわひらひらに黴びてしまう話

          桜黴 202103282051 202211122022 ** 最初の桜黴は、そこそこ人気だった。よくあるふわふわの刻みチョコをトッピングしたような廃工場の壁が発見されて、瞬く間にSNS映えする写真スポットとして広まった。淡い桃色が可愛らしいし、ふわふわ散る黴が幻想的でとても綺麗だったので、「桜黴」と命名された。 おかしな事になったのは二週間経った後だった。 それまでは何ともなかったのに、桜黴を見に行った人たちが一斉にけほけほ咳をし始めた。 医者は黴アレルギーを発症した

          世界が桜の花びらに包まれたみたいにふわふわひらひらに黴びてしまう話

          男が春画の女に囚われる話

          春画のある風景 202102251956 ** ある男が中世の春画を買って家に飾った。 絵に特段興味がある訳でもなかったが、何か惹かれるものを感じたのだ。 毎日見て慣れ親しむ内に、はじめは変な顔だなあと思っていた女の顔と肢体が妙に色っぽく魅力的に思えてきた。なるほど、昔の人もこんなふうに想像を働かせたに違いない。 ある日、夢に春画の女が出てきた。朝見ると夢精していた。 それから毎晩のように春画の女は夢に出るようになり、夢も女に合わせて何やら幻想的で色褪せた独特の彩りに変化

          男が春画の女に囚われる話

          スマホに謎のもやもやが住み着く話

          202211022104 ** 夜中夜勤明けの昏睡から覚めると、スマホの液晶画面に得体の知れないもやもやしたものが住み着いていた。 寝ぼけて見る幻覚の類だろうとさほど気にせず放っておいたが、なかなか消えない。 もやもやはどろりとした粘体で、ほぼ透明に透けている。ぱっと見た印象では美容液の類のようにさらふわりとくびれて見えるのに、動きがやけに鈍いのだ。 意思を持った生命体の類では無いように思えたが、柔らかく呼吸するように微動している。 しかも何とも言えず薄気味悪いのは、明ら

          スマホに謎のもやもやが住み着く話

          靴底の温もり

          202002110526 ** 地下の温度はひどく鈍く重たい。 行き交う人々の華やげで気安げなさまを見ると、げに人の世は眩しく。 今の自分はいっそ幽霊か何かであれば良いと思う。 この臭気さえきっと届かないでいればと。 そうやって消え入りそうに沈む反面、 おのれ私だって、という気持ちもある。 今通り過ぎたサラリーマンの時計は、私が愛用していたブランドの廉価版だ。 今はもうこの手に無いけれど。 今日はどうも虫の居所が悪くて、いや実際虱の所為かも知らんが、 痛痒いような吐きそ

          靴底の温もり

          春眠

          201812300739 ** 「人生を季節に例えると、何から始まって何で終わると思う?」 教室でふとそんな話題が出たのは、放課後の掃除をしている時だった。 担任の長話のせいで、よそのクラスはとっくに掃除を終えて散会しており、うちのクラスがどんじり。教室にはHR教室の清掃当番の僕等5人のみ。 校庭からは既に野球部の準備運動の声が聞こえている。遅刻して行くとこっ酷く怒鳴るコーチの事を思い浮かべて、ずるずると教室に留まりたい気持ちが僕たちの間を支配していた。 「春で始まって

          春眠

          体温計買った

          202007231045 ** ※コロナで体温計が見つからなかった時期に書いた話です。 A「体温計買った!!」 B「え、有ったの!?すげーじゃん」 A「うん、めっちゃ探した!やったぜ」 A「これで毎日がエブリデイで体温測り放題だ〜!!」 B「いろいろおかしい」 A「早速測っとこ」バリバリポイッ B「躊躇なく箱ごと説明書捨てた〜〜!」 A「全然鳴らない」 B「気が早すぎる」 A「アイス美味え〜」 B「今食うなよ!!」 A「そろそろ良いだろ」ルンルン B「鳴るのを待って

          体温計買った

          出されなかった手紙

          202210302048 ** 兄弟へ この手紙を読んでいるとき、私は上手くいけばこの世にいないだろう。なぜなら私は三日後に死ぬことになっているからだ。死因はアナフィラキシーショックである。 実は二十年ぶりに父母と会う事になった。私が昨年短い私小説で賞をとったのを聞きつけて出版社づたいに連絡をとってきたのだ。彼らは私のアレルギーを覚えているのかいないのか、そば屋を指定してきた。 勿論それだけなら私も警戒するには至らないが、実は最近私に多額の保険金がかけられている事が分かっ

          出されなかった手紙

          出涸らしの茶漬けが食べたい女子大生の話 前編

          202008170909 ** 居酒屋のバイト明けの朝、ふっと茶漬けが食べたいと思った。何の脈絡もなく浮かんだばっかりに涎が出るほど食べたくって食べたくって仕方がない。 折り良く駅前の茶漬け屋が朝メニューをやっているのを見つけて、これは良いぞといそいそ入り、食券機に定期を裏表に翳してどうにか首尾良く食券を取り、気持ち良く奥の座席に落ち着いた。 つと運ばれてきたお膳には、オクラと湯葉のかかった米茶碗にひじきと梅の小皿が添えてあって、急須からは触れてもないのに心地良い茶葉の熱

          出涸らしの茶漬けが食べたい女子大生の話 前編