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アメジストの魚。

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アメジストの魚のまとめです。 宜しければプロローグからどうぞ。
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#短編小説

アメジストの魚。6-2

アメジストの魚。6-2

―恋は盲目。―
茅尋は私が思っているよりもあっさりとその言葉を肯定した。自分から言った言葉なのに、肯定されたことに対して居場所のない不快感が熱を帯びる。

「ねぇ、茅尋。」

駄目、君だけは。
もう狡い私を捉えてしまったんだから、君だけはちゃんと私を見て。視て。お願い。

「一緒に、」
「嫌だよ。」
茅尋が言葉を遮る。
寄せては返す波の音が僅かな沈黙を作った。

「…まだ何も言ってないじゃん。」

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アメジストの魚2-5

アメジストの魚2-5

喫茶店を出て、商店街を抜けた先にある海の見える公園に着く。この街の唯一のシンボルだが、天候の影響のせいか人は少ない。僕らは自販機で飲み物を買ってからベンチに腰掛けた。

「今まで何してたの?」
先に沈黙を破ったのは僕だった。

「彼のところで一緒に暮らしてたよ。茅尋だって知ってるでしょ。」

「街を出てからずっと?」

「うん、つい最近まで一緒に暮らしてたよ。今は1人だけど。」

「なら、その傷だ

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アメジストの魚。2-4

アメジストの魚。2-4

「茅尋、やっぱりそうなんでしょ…?」

要が顔を歪めて僕を見る。その表情は何だか痛そうで辛そうな感じで今にも泣き出してしまいそうだった。

素直に明かすしかないんだろう。
中途半端な嘘をついたところで彼女にバレて詰められるのが目に見えている。それに、そんな苦しそうな顔をずっとさせるわけにもいかなかった。

「そうだ、僕は人魚症を患ってる。」

「いつから…?」

「2年前。」

「え…」

「要が

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アメジストの魚2-3

アメジストの魚2-3

要が入ったのは若者に人気のありそうなカフェではなくて、そのいくつか隣にある喫茶店だった。いわゆる純喫茶のような雰囲気の漂う扉を入るとどこか懐かしい匂いがした。

「マスター、こんにちはー。」
「やぁ、いらっしゃい。」

店主に挨拶を済ますと、迷うことなく店の奥のテーブル席に座った。

「ここのコーヒー美味しいんだよ。」
「そうなんだ。」

店員が来てオーダーを聞いて去っていく。
少しして運ばれてき

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アメジストの魚2-2

アメジストの魚2-2

幻だと思った。
目の前の光景を現実だなんて思いたくなかった。

「し、の…?」
「久しぶりだね、茅尋。元気にしてた?」
「…は、」
「おーい、聞いてるー…?」
「……」

呼び掛けに応えなければと思うのに言葉が出てこない。
鼓動が早くなっているのが分かる。思考も全く追いついていない。
どうして要がここにいるんだろう。

「ねぇ。」
「あ、えっと…」
「無視されると悲しいんだけど。」
「ご、ごめん」

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アメジストの魚2-1

アメジストの魚2-1

今年に入って何度目かの診察を終えて、症状の進行を遅らせる為の薬と鎮痛剤を処方された。

「症状は確実に進行しています。このままのペースだと数ヶ月の内には変異が著しくなるかもしれません。」

「そうですか、」

「今はまだ痛みも少ないようですが、念の為鎮痛剤も出しておきます。何か気になることがあればいつでも受診に来てくださいね。」

優しそうな若い先生はそう言って、カルテを置く。またなにか言おうと口

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アメジストの魚1-4

アメジストの魚1-4

ジリジリと時計が鳴る。
午前6時30分。あのまま眠ってしまっていたらしい。テレビもエアコンも点いたままで、乾燥してしまったのか喉が痛い。リモコンを手に取ってエアコンを消してベランダの窓を開けると、薄暗い街から冷たい風が吹いて頬を撫でた。テレビ画面の向こうではアナウンサーが笑顔で手を振っている。

「さむ……。」

こんなに寒いならエアコンを消したのは間違いだったかもしれない。窓を閉じてコーヒーを入

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アメジストの魚1-3

アメジストの魚1-3

懐かしい夢を見た。

「この歌好きなんだ。」 と彼女はイヤホンの片方を僕の右耳に挿した。聴こえてきたのは当時流行っていた曲で、曲名は何だったろう…、思い出せない。

「…さっきは、その、ありがとう。」
曲が終わったタイミングでやっとの思いで感謝の言葉の声を出す。

「いいよいいよ、それにしても間一髪だったね。あと少しで轢かれちゃってたよ?」
彼女はそう言ってクスッと笑う。さっきの切羽詰まった表情は

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アメジストの魚1-2

アメジストの魚1-2

「ただいま。」

玄関扉を開けると、静けさの際立つ1DKの部屋が僕を出迎えた。一人暮らしの部屋からは勿論返答などない。

靴と靴下を脱いで風呂場に向かう。歩いている間は気にならなかったベタベタと張り付く感触が鬱陶しくて脱ぎ捨てた衣類は洗濯カゴから外れて床へ落ちた。

(そろそろ髪、切らないと…。)
濡れた前髪は目が隠れてしまう程伸びてしまって、お世辞にもお洒落とは言えない。

お湯を張りたい気持ち

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