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アメジストの魚2-2
幻だと思った。
目の前の光景を現実だなんて思いたくなかった。
「し、の…?」
「久しぶりだね、茅尋。元気にしてた?」
「…は、」
「おーい、聞いてるー…?」
「……」
呼び掛けに応えなければと思うのに言葉が出てこない。
鼓動が早くなっているのが分かる。思考も全く追いついていない。
どうして要がここにいるんだろう。
「ねぇ。」
「あ、えっと…」
「無視されると悲しいんだけど。」
「ご、ごめん」
「驚いた?」
当たり前だ。もう二度と会うことの無いと思っていた相手に何の準備もなく再会を果たしたのだから驚かない方がおかしい。
そう思っていると不意に頬に鈍い痛みが走る。
どうやら要が僕の頬を抓ったらしい。
「難しい顔してまた無視しないで。」
「いっ…た…っ」
「ぼやっとしすぎじゃない?寝不足?」
「ちゃんと寝てるよ…」
「そっか。それよりさ、もう用事終わった?」
「診察は終わったけど薬の受け取りとかがまだ。」
要は頬から手を離すと少し何かを悩んだ様子を見せてから、
「じゃあ行こっか。」と言った。
「どこに?」
「いいから、ほら行くよ!」
「ちょ、引っ張るなって…!」
半ば強制的に手を引かれて病院を出る。
薬はまだ貰っていないから日を改めるとして、騒がしくしてしまったことを
後で先生達に謝らないといけないと思うと今から気が重い。
要に抓られた頬が少しだけ熱を帯びている。
聞きたいことは山ほどあるけれど、まずはついて行くしか無さそうだ。
外はちらほらと雪が降り始めていた。