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アメジストの魚。2-4



「茅尋、やっぱりそうなんでしょ…?」

要が顔を歪めて僕を見る。その表情は何だか痛そうで辛そうな感じで今にも泣き出してしまいそうだった。

素直に明かすしかないんだろう。
中途半端な嘘をついたところで彼女にバレて詰められるのが目に見えている。それに、そんな苦しそうな顔をずっとさせるわけにもいかなかった。

「そうだ、僕は人魚症を患ってる。」

「いつから…?」

「2年前。」

「え…」

「要がこの街から出ていって暫くしてからかな。自分の声が変わってることに気付いたんだ。変声期なんてもうとっくの昔に終わってるし、喉を痛めたわけでも無かったから変だなと思ってすぐ病院に行ったんだ。そしたら人魚症だって診断された。」

要の手は少しだけ震えていた。

「今は定期的な受診と薬で何とか症状を抑えてる。」

「…。」

「大丈夫だよ、すぐ死ぬわけじゃない。」

嘘はついていない。この病はすぐに死に至ることは無い。ただし、完治もしないけれど。

「すぐ、言って欲しかった。」

「ごめん。」

「私も、ごめん、なさい。」

「要が謝ることじゃないよ、運が悪かっただけさ。」

そう、運が悪かった。それだけだ。

「コーヒー冷めるよ。」

「うん…。」

「飲み終わったら少し歩こうか、僕も要に聞きたいことがあるんだ。」