【ショートショート】均等の波
青年は黒縁のメガネをクイと押し上げると皆を見据えた。
「犯人は分かった。精巧なトリックもこの真実のメガネを素通りすることなんてできな……」
「ちょっと待て!」
トレンチコートの男が遮った。帽子を正すと窓際までゆっくりと歩を進める。皆が見つめる中、空を見つめながら口を開く。
「その前にこの屋敷の秘密を紐解く必要がある。今、真実が私に語りかけてい……」
「わたくし、気づいてしまったの」
婦人の透き通る声が広間に響き渡った。そして花瓶から1輪のバラの花を抜き取るとその香りを嗅いだ。