【ショートショート】止まらない時計

２４時間３６５日休みなく働くことに耐えられないと、ある日突然全ての時計達が働き方改革を敢行し１ヶ月が経った。
各自、おもいおもいに休憩を取るようになり全ての時計は正確な時刻をしめさなくなった。
「母さん、もう１２時半だけど昼ご飯まだ？」息子は大げさに腹を抑えてリビングに入ってきた。
「えー、今あの時計で８時だからまだ１１時半じゃないの」壁かけ時計を見上げながら母親は言った。
「違うよ、アレ今休憩してるから動いてないよ」
「あらやだ、すぐ作るわ」「そもそも日時計見たら一発なんだからいい加減見方覚えてよ」
「なんで今さら日時計なんて原始的な時計覚えなきゃいけないのよ…よりにもよってスマホの時計までズレるとか考えられないわ」と母親はため息をついた。
「おい！やっと見つかったぞ！」
父親が興奮した様子で帰ってくると、テーブルに壁掛け時計を置いた。
「こいつは全然止まらないんだ。ずっと動き続けているのを店で何時間も見続けたから間違いない」
「それにしても何でかしら。でも良かったじゃない」と母親は時計を持ち上げると安堵した。
息子はその時計を受取りまじまじと観察すると、急に眉をひそめた。
「製造元はＺＵＫＯって……も、もしかしてこれって……」促された父親も同様に複雑な表情になった

「そうなんだ。皮肉にもブラック企業で有名なＺＵＫＯの時計は休んだりしないんだ。こんな時でも…」