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四年目

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2022年の詩まとめ
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#詩的散文

夜に溢す

夜に溢す

こんばんは三日月、真夜中は心がからっぽでも許されるよね、深い闇が隠してくれるから、からっぽであること、触れなければわからないから、きみはいつも僕よりすこし先を歩いてる、その先は明日で、未来で、朝であるのに、夜を愛しているきみは気づいているのか、気づかないふりをしているのか、その横顔は闇に隠されたままで、あなたを連れ去ってしまう夜明け前の静かさが嫌い、永遠に夜が続けばいいのに、それでも朝日に照らされ

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しねないわたしたち

しねないわたしたち

僕もきみもたとえ死んだとしても、僕やきみであった肉体や生活の痕跡や卒業アルバムのくそださ写真も無くならないし、人生で関わった他人の記憶からは居なくなれなくて、それは僕たちの望む「死」とは遠くて、「死にたい」という感情はやっぱり誰にも理解されないし共有できないから、今日も生きているよ、家族が嫌いで他人が嫌いで自分も嫌いでどうしようもなく世界を恨んでいても、君はちゃんと「死」を恐れるからすきです、死ん

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みえる

目薬をさして視界がぼやける、ゆらゆらする、世界が揺れている、遠くて近い国で人が殺して殺されていても平気な顔して飲む新作フラペチーノ、甘ったるさでつらいことをシェイクして薄めてしまえ、目にみえない花粉やウイルスに人間は弱すぎる、ついでに絆とか愛情とかにも弱すぎる、Wi-Fiがとんでる、受話器から聴こえるあなたの声をきちんと拾いたいから、夜に電話をかけてもいいですか

愛していないあなたへ

愛していないあなたへ

あの子は好きな人の話をするとき、とても可愛くてきらきらしていて清くて、尊いなぁとお日様の光を浴びるように聴いているよ、好きという感情は誰にもおかされず純度100%でいてほしい、その好きを向けられているのは自分ではないとしても愛しいなと思ってしまう、性のこと、自分のこと、こそこそするのは嫌だっていうけれど、それは相手がいいですよって聴くことを受け入れている状態だから許されるわけで、そうじゃない場合は

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居なくなる

居なくなる

ひとりで居るときに他人は孤独だと認識してくるけれど、ひとりでいるわたしは「わたし」と一緒に過ごしているから孤独を感じない、むしろ集団で行動しているときの、ふとした瞬間に孤独を感じてしまう、いざ死の過程を想像してしまうととてもこわくなる、死の完結のその瞬間がきっといちばんこわい、なにかに怯えて夜に一番星をさがす、手の届くことのないそれに安心する、帰りたいと居なくなりたいってすこし似てる、理由なんかな

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