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すーこ
2021年12月30日 21:14
飛び起きると、辺りはまだ暗闇に包まれていた。時計を見れば、深夜二時を回ったところだ。寝直そう。いつもならそう思うのに、胸がざわざわと落ち着かない。顔を洗い、コートを羽織り、鍵と財布を握りしめ、玄関のドアノブに手をかけた。 外はしんとして、冷気が満ちていた。月も星も雲に覆い隠され、周りの家もみな灯りが消えている。ぽつぽつと点る街灯の先にある、ぼんやりと光を放つ電話ボックスへ、吸い込まれるように向
2021年12月17日 23:48
高校二年の冬、僕たち三人は、ふたご座流星群を見に、とある屋上に上った。 寒い寒い夜だった。 小白千尋、平山賢治と、エレベーターで上がる。「楽しみだね!」 とびきりの笑顔が輝く彼女を連れて、賢治と僕は、屋上へと続く扉を開けた。 頭上に星空が広がる。「結構見えるもんだな。」「そうだな。」「綺麗ね。晴れてよかった。」 街明かりの滲む星空に、彼女は目を輝かせる。「寒くない?」
2021年12月12日 21:30
童謡「ちいさい秋みつけた」を歌うにぎやかなこどもたちの声が、外まで聞こえてくる。目前に迫る目的地へ続く坂道を、あと少し、と心の中でつぶやき、登っていく。*** 私の目指す管理栄養士になるには、座学に実験、施設と病院での実習を経て、国家試験に合格する必要がある。 再来週から、その保育園の臨地実習が始まる。今日はその事前打ち合わせ。緊張した面持ちで、お世話になるいちょうの丘園の門を潜った。
2021年12月5日 23:13
今日も残業。もう定時という概念は頭の片隅に追いやった。へとへとになりながらも、あるものを楽しみに今夜もがんばっている。厚手の上着に身を包み、底冷えのする室内で一人、手を動かし頭を回す。 やっときりがついた。明日は休みだから、職場の戸締まりのため、念入りに見回りをする。 しーんと静まり返った廊下。もう社屋には私一人。音のない世界に取り残されたような気持ちになりながら、ゆっくりと歩みを進める。