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東京のBARにて

こんばんは。

久しぶりにある人からLINEが来た。
雪景色の写真と共に。

「おひとり様」なんて言葉が流行ったりもしたが、
みなさんは1人でどれほどの行動ができるだろうか。


幼少期、とんでもない人見知りだったわたしは、
中学生になっても1人でバスにさえ乗れない子供だった。
バスで向かわないといけないところは祖母についてきてもらうか、親から車で送迎してもらうのが当たり前だった。

大学生になってからはその性格が一変したように、
1人でどこかしらに行くことができるようになった。
むしろ、1人の方が気が楽みたいな考えも若干芽生え始めたためか。

大学生になって初めて1人で外食をしたり、
映画を観たり、カラオケに行ったり、
あるいは1人で飛行機に乗ったりもした。

できた理由としては、大学時代の生活や授業が大きく起因していると思うが、それは今回とは別の話なので省略。

大学を卒業し、就職のため1人で知らない土地に上京した。
東京はわたしの憧れの場所だった。
しかしながら、上京組は全然おらず、
知っている人も片手で余裕で収まるくらいの人数。
あとは、同期の友人たちと疎外感を抱きながらの交流など、心からの友達はできそうになかった。
(まだインスタは繋がってるけど)

東京の生活にも少しは慣れてきた頃、
「1人〇〇」をいろいろ試してみたく、
ある日、仕事帰りにずっと気になっていたバーに行った。
人とバーに行ったことも記憶にあるかないかのレベルで、
ましてや、1人で行くことはわたしの中で漫画やドラマの中の世界だったから、試してみたかった。

重厚なドアをあけ、木の床が軋む音を立てながら店内に入った。
目の前の棚にはキラキラ光る色さまざまなボトルたち。
バーってこういうところだよなぁ、の理想を詰め込んだような店内だった。

カウンターに座り、
何をしていいかもわからず、キョロキョロしていると、
マスターらしき人に、何にしますか?と聞かれた。
出たー。何にしますか?だ!!!漫画の中の世界だ!!!実際にも言うんだ!!!
とテンション爆上がりだったが、メニューないんかい。
田舎育ちのわたしは、バーに置いてあるおしゃれなお酒の名前なんて一つも知らない。
悩みに悩み抜いた末に、
「甘くて酸っぱいものありますか?」
と言って、あとはお任せで作ってもらった。

お任せってフレーズも言ってみたかったんだよなぁ。

ちまちまといくらするか分からないお酒を飲みながら、
特に仕事の悩みを考えるでもなく、
本を読むでもなく、とりあえず何か書こうと思い手帳にお酒の名前とか書いてた気がする。
バーでお酒を飲みながら何をするのが正解か分からなかったんだよね。

30分ほど1人で手帳に向かっていると、
別のお客さんが声をかけてくれた。
隣で飲まないか?と。
いやいやいや、漫画的展開すぎでは???
と思いながらも隣で初めましての人と飲んだ。
話す内容もないが、人見知りはある程度卒業したため、会話に困ることはなかった。
話していく内に、その人の地元はわたしと同じということが分かった。
ついでに、その人の子供はわたしが卒業した高校に在学中らしく、そこにまた不思議な縁を感じた。

東京で新たに友達を作ることもできず、
(というか機会がない)
家族が恋しかったわたしは給料の半分を飛行機代につぎ込み、帰省していた。
そんな中、まさか、ふと入ったバーで地元の話ができる人と知り合えるとは思ってもみなかった。

これも何かの縁だということで連絡先を交換した。
同郷同士、この土地で頑張って行こうと励ましてくれたその人とは、その一度きりしか会うことはなかったが、わたしが東京を去るという連絡をしてから、たまに東京で住んでいた時の最寄駅の写真などを送ってくれる。


先日は雪が降ったらしい。
ニュースでしか知ることのできない思い出の地の写真や動画を送ってくれて、嬉しかった。

正直、顔も名字も覚えていないが、
あの時のわたしの状況と心境に合った出会いをしてくれたその人とのエピソードは今後も忘れることはないだろう。


(イラストはバーの棚。その人からの連絡が来る時、東京で頑張っていた自分の感情を思い出す。1人〇〇チャレンジ、いつかは焼肉に行ってみたい)

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