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「SSSS.GRIDMAN」少女の心の闇が創造した世界

今回は、映画「グリッドマンユニバース」について書きたい。
これは、TVアニメ「SSSS.GRIDMAN」、ならびに「SSSS.DYNAZENON」の続編的劇場作品である。
全ては「SSSS.GRIDMAN」(2018年)から始まったシリーズなんだが、これの原作は、円谷プロの特撮ドラマ電光超人グリッドマン」(1993年)だという。
そんなドラマ、聞いたこともなかったけど。
どうやら「SSSS.GRIDMAN」は、円谷プロとTRIGGERのコラボによって実現した企画みたいだね。
いかにも相性のいい組み合わせである。
というのも皆さんもご存じのように、TRIGGERの元々の母体はガイナックスである。
そしてそのガイナックスの発祥母体は、大阪の円谷プロ特撮マニアの同好会だったといわれている。
そのDNAは、脈々とTRIGGERにも受け継がれているんだろう。

「グリッドマンユニバース」

最近は庵野秀明も「シンゴジラ」「シンウルトラマン」等を撮り、すっかり特撮畑の人になってしまった感もあるが、元々アニメと特撮の親和性は高いんだよ。
押井守だってその原点は特撮マニアで、彼が撮った「真・女立喰師列伝」という実写版の映画では、わざわざ「ウルトラマンセブン」アンヌ隊員こと、ひし美ゆり子さんをヒロインに抜擢してたことからして(当時の彼女は還暦ぐらいのオバサンだったと思うけど)、彼もまた相当な円谷プロ信者なんだろう。
こういうアニメ⇒特撮のアプローチが目立つ一方で、特撮⇒アニメという形のアプローチも確かに存在する。
たとえば、山崎貴監督とか「ドラえもん」や「ルパン三世」の3DCGアニメを作ってくれたよね。
そういう流れからして、円谷プロとTRIGGERのコラボは極めて自然な流れといえるんだ。

「SSSS.GRIDMAN」

「SSSS.GRIDMAN」は非常に評価の高いアニメだったんだが、何がよかったかって、3DCGと2Dの見事な融合の水準だよ。
もともと特撮モチーフだから3DCG主体になることはある程度予測がついたが、それ以上に目を引いたのは2D(手描き)の方である。
そこはいかにもTRIGGERという感じで、俗にいう金田伊功作画テクニックのオンパレード。
元々TRIGGERの母体・ガイナックスは、メンバー内に特撮のマニアの比率が多かった一方で、作画の系統としては金田伊功信奉者の多いところとしても知られていたんだ。
そもそも、TRIGGER創設者の今石洋之がその代表格ともいえたからね。

「SSSS.GRIDMAN」より

上の画の表現とか、あぁガイナックスっぽいなぁというか、TRIGGERっぽいなぁというか、金田伊功っぽいなぁというか、私こういうの、結構好きなんですよ。
とりたてて特撮ヒーロー作品に興味はないんだが、でもコンテンツとしてはアニメとの相性悪くないと思った。
あと、次に驚いたのは脚本である。
このプロット、誰が作ったんだろう?
めっちゃ秀逸じゃないか!

メインヒロインのひとり、新条アカネ

ネタバレしちゃうから、「SSSS.GRIDMAN」見てない人はここから先は読むのを禁止。
実は「SSSS.GRIDMAN」の世界って、現実の世界じゃなく仮想世界、上の画の新条アカネが創造した世界だということが物語の途中で判明するのね。
つまりアカネは、涼宮ハルヒ的な存在なわけだ
ただハルヒの場合は本人が無自覚だけど、こっちの方は完全に自覚ありで、この創造力も本人のものというよりは黒幕に付与されたものであり、どっちかというと、妄想に逃げ込む彼女の心の闇を利用されたニュアンス。
彼女は「神」として「自分を絶対嫌いにならない人たち」で構成された高校を作り、そこに普通の生徒として通っているという妙な構造になっている。
時に怪獣を生み出して町を破壊させ、気に入らない人を殺したりもする。
なんと闇の深いヒロインなのか・・。
どうやら、彼女の「実体」はこの世界じゃなくて別の世界にあるみたいで、つまり「ソードアートオンライン」状態。
どう考えても、実体の彼女は心に傷があって引きこもってる系の子だね。

本編ラストに挿入された実写パート、これがアカネの「実体」のようだ

何にせよ、この物語におけるグリッドマンvs怪獣の闘いの構図というのはvsアカネの心の闇ともいえて、このへんが往年の円谷プロ作品っぽいんですよ。
それも実昭寺昭雄監督の、怪獣と対話する系のやつ。

こういうもののオマージュがシリーズの中に挿入されてるフシもあるので、詳しくは本編で確認してみて。
「SSSS.GRIDMAN」の続編「SSSS.DYNAZENON」ではキャストが一新されてしまい、前作との繋がりは?となるんだが、途中から前作のキャラのひとりが成人した状態で登場し、このシリーズが「マルチバース」構造であることが示される。
なんか、「スパイダーバース」みたくなってきたな・・。
ひとつ面白いなと思ったのが、このシリーズのキャラたちは
「自分たちが今いるのは、作られた仮想世界」
「自分たちは、作られたNPCみたいな存在」

とはっきり自覚しつつも、別にこれまでと変わらずに日常生活を送ってるんだよ。
まぁ、そうなるわな。
実際、我々がいるこの世界だって必ずしも「現実」とは限らないんだからね。
ちゃんと別の世界に実在するプログラマー(神)がいて、我々の本質は彼らに作られたNPCなのかもしれない。
仮にそういうセカイの真実が分かったとして、じゃ明日から何かが変わるか?
変わらんさ。
それでも学校に行くとか会社に行くなどして、我々はこれまで通りに生きていくだけである。
あ、「この世に神はいない」とは、さすがに言わなくなるだろうけど・・。

「グリッドマンユニバース」より

「グリッドマンユニバース」は「SSSS.GRIDMAN」と「SSSS.DYNAZENON」の融合体であり、両作共通の続編でもあり、上の画なんて両作とも見てる人には泣きたくなるほどの贅沢さなのよ。
それこそ、ナウシカとアシタカが共演してるような感覚?
でもって、クライマックスには「神」こと、新条アカネまで出てきます!

この実写の人が、アカネの実体っぽい

もうね、TVアニメの劇場版としては完璧だった!
メンバーフル出演というファンサービス、本編後のキャラの顛末、本編ではやり残していた主人公の恋の行方、それらを見事に描きつつ、ちゃんと例の世界観をきっちり守っている。
いやマジで、このプロット作ってる人凄いわ。
こういう系統の作品って、どうしても【物語<映像】になってしまいがちなんだが、「グリットマンユニバース」は配分がしっかり5:5になってたと思う。
いや~、やっぱりいいよね、TRIGGER。
今はTVアニメだと「ダンジョン飯」がTRIGGERだけど、ちょうどここにきて物語の展開がめっちゃ面白くなってきやがった。
今までは飯食ってばかりのコメディだったけど、いよいよここからTRIGGERの真骨頂となっていくに違いない。
私、制作会社が○○だから見ようというのが大体10社ほどあるんだけど、その中のひとつがTRIGGERだからね。

今まではTRIGGERらしさがやや控えめだった「ダンジョン飯」

とにかく「グリッドマンユニバース」は超オススメなんだが、とはいっても「SSSS.GRIDMAN」と「SSSS.DYNAZENON」を見てないなら見ない方がいいと思う。
この作品を楽しむには、両作ともの視聴が前提である。
見てない人の中には「ヒーローvs怪獣なんかに興味ないんですけど?」という人もいるだろうけど、正直私だってそっちにはあまり興味ないよ。
だけど、このシリーズは物語そのものが面白いんだ。
「SSSS.GRIDMAN」も「SSSS.DYNAZENON」も、ヒロインが心に闇を抱えてるというのがいい。
明らかに精神疾患者である。
この物語は、メンバーがヒロインのそういう闇にどう向き合っていくかこそが最大のキモであり、結構これが泣けるんですよ。
もし見てない人がいるなら、ぜひ「SSSS.GRIDMAN」から順を追った視聴をお薦めします。
そして完結編「グリッドマンユニバース」の視聴までを終えたら、「あぁ、見てよかったな」と思うことはほぼ間違いないはず。

こういうの、オトコノコは好きだけど、オンナノコは微塵も興味ないだろうね・・


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