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「プロメア」これ見てない人は人生の1割ほど損してると思う

今回は、映画「プロメア」について書きたい。
まず、この作品を語るには制作会社のTRIGGERについて触れなくては・・。
この会社、母体はあの「エヴァンゲリオン」で有名なガイナックスである。
ガイナックスって、とにかくゴタゴタが多い会社だったのよ。
だからこそ大量に離脱者が出て、それがTRIGGERになったわけで。
ゴタゴタが多い要因は何だったのかというと、率直にいって「ちゃんとした企業」になってなかったんだと思う。
もともとが東と西のオタクが寄り集まって立ち上げたベンチャーで、そのニュアンスは「企業」というより、「映像研サークル」に近いものがあったのでは?
そしてサークルゆえ、「いかにして収益を出すか」という企業本来の道から外れて、「作りたいモノを作る!」みたいなノリに走ったんだと思う。
いや、そのノリがあったからこそ「エヴァ」みたいなのを作れたともいえるわけで、皆さんもご存じの通り、「エヴァ」は円谷プロマニアの庵野秀明がその趣味を全開にした、「分かる人だけ分かればいい」系の作品である。
OVA「トップをねらえ」もまた同様、「マニアのキミなら分かるでしょ?」みたいな要素をテンコ盛りに注ぎ込んだパロディ作品。
こういう作品群を見ると、「ああ、まさに映像研サークルのノリだな・・」とつくづく感じるよね。
もはや作品が破綻してるんだ。・・良い意味で。

オタク趣味全開に走ったのに、なぜか売れた「トップをねらえ」
いまだ海外ではカルト的人気を誇る怪作「フリクリ」
文化庁メディア芸術祭優秀作品に輝いた「アベノ橋魔法☆商店街」
ガイナックスらしいパロディ満載作品だが、ヒロインがとにかく可愛い!

オタクってやつは、自分が好きなモノのパロディが大好きだよなぁ。
なんかさ、このての作品群を見てるとガイナックスの企画会議の内容が想像できると思わない?
多分、我々が知る「会社の会議」じゃないよ。
どっちかというとそのノリは、我々が大学の時に所属してたサークルの「ミーティング」、それこそ話し合いだか雑談だかオヤツの時間だかもよく分からん、あの謎の集まりに近いものがあったんじゃないの?
そのてのミーティングはほとんどがノリだけで決定していくもので、
「ぎゃははは!それオモロイ!やろやろ!」
みたいな緩んだ空気が場を支配するものである。
なんせ、共通の趣味をもったコアなマニア同士の集まりだから、そのノリはどんどん悪ノリへと発展していく・・。
で、そういう悪ノリの中でもひとり、さらに際立ってノリの尖った奴がいたのね。
その男こそ、今石洋之。
「天元突破グレンラガン」や「キルラキル」を作った監督である。
いや、この人のノリを端的に示すなら、彼が監督のみならず脚本まで手掛けた「宇宙パトロール ルル子」「Panty&Stocking with Garterbelt」あたりの方がむしろ分かりやすいか。

話が破天荒すぎて視聴者を置いてきぼりにした傑作ショートアニメ「宇宙パトロール ルル子」
なぜか「リトルウィッチアカデミア」のメンバー2名が出てきます
ヒロインがSEXしまくりのビッチという設定が楽しい「Panty&Stocking with Garterbelt」

ぶっちゃけ今石さんはクセが強すぎて、監督+脚本までやらせると正直収拾つかなくなる感じはある。
個人的には、めっちゃ好きだけど。
そんな彼が、実に相性抜群のいい脚本家と出会ったのよ。
それが劇団新感線の脚本家・中島かずきである。
劇団新幹線といえば「ああ、古田新太の劇団でしょ?」ぐらいに捉えてる人は多いかもしれんが、いやいや、ここは演劇界じゃ凄いところだよ?
いまや、劇団四季や宝塚といった老舗と肩を並べるところまできてるもんね。

劇団新感線

なんつーかな、この新感線もまた「演劇界のガイナックス」とでもいうべきか、妙に演劇サークルっぽいノリがある劇団なんだわ。
ノリがROCKそのもの。
だから、新感線の看板作家・中島かずきが今石さんと相性いいのも理解できる気がするんだよね。
その中島かずき+今石洋之という才能のコラボ代表作が、「グレンラガン」と「キルラキル」である。
このふたつは「頭悪い系熱血モノ」において、いまだ最高峰とされる傑作。おそらく、見てる人は多いだろう。
でもって、その「グレンラガン」⇒「キルラキル」の系譜を継いだ劇場作品が「プロメア」である。
当然、内容はめっちゃ熱い!

この物語は、なぜか謎の人体発火現象が起きるようになってしまった世界で、消火レスキュー隊が発火新人類と闘うというものである。
え?それって「炎炎ノ消防隊」の丸パクリじゃ・・とツッコむ間もなく、話は怒涛のように進んでいく。
なんか、この作品の主人公は動きがカブいてるというか、歌舞伎っぽいんだよね。
まさに、そのへんは劇団新感線っぽさだよ。
ご存じのように新感線には「いのうえ歌舞伎」というジャンルがあるわけで、つまり「プロメア」とは【炎炎ノ消防隊+いのうえ歌舞伎】という構造なのかも。

うん、やはり今石さんの真骨頂は、イキイキと機敏に動くキャラにある。
それが歌舞伎的なモノに相性いいのはいうまでもなく、中島さんの脚本との相性がいいのも当然。
そしてウケ狙いに走りがちな今石さんを補うようにして、中島さんの脚本はちゃんと感動の要素もある。
ちなみに中島さんは昔編集者だったらしく、臼井儀人の担当をしてたこともあるらしい。
その関係で映画「クレヨンしんちゃん」のオリジナル脚本を書いたこともあり、それが「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」だ。
この作品は「クレヨンしんちゃん」シリーズの中でも特に泣きの要素が強い名作のひとつで、文化庁メディア芸術祭優秀作品となっている。

これ、私も泣いたわ~

中島さんには、もっとたくさんアニメの脚本書いてほしいなぁ。
逆にさ、劇団新感線で「プロメア」「グレンラガン」「キルラキル」を舞台化してもいいんじゃないの?
そのぐらいに今石+中島は相性がよく、1+1=2じゃなく10にも100にもなってる感じ。
ただ、「プロメア」で少し気になったのは、主要キャストが松山ケンイチ、堺雅人、早乙女太一といった役者で占められてたこと。
この3名は新感線の舞台経験があり、おそらく中島かずき縁故枠だろう。
予想外に主役の松山ケンイチはうまくてよかったんだが、問題は悪役を演じた堺雅人。
いかつい役なのに声はまんま堺雅人なので、どう凄んでもあの柔和な笑顔が頭に浮かんでくるから全然恐くなかった(笑)。
まあ、映画というのは客を動員してナンボだし、人気俳優の知名度を使って動員上げなきゃならん事情も分かるさ。
だけど「プロメア」はめっちゃいい企画だったので、1回の映画で終わらすにはあまりにも惜しい。
じゃ仮にテレビアニメ化しようってなった時に、本業で忙しい松山ケンイチたちをレギュラーで使うのはどう考えても無理だろ?
それを思うと、役者の声優起用も考えものである。
あ、ヒロインの佐倉綾音はめっちゃ可愛かったなぁ・・。

ちなみに、これはキスシーンではなく人工呼吸のシーン
松山ケンイチ×早乙女太一です(笑)

この映画は興行収入もまずまずだったみたいだし、きっと何らかの形で続編はあるだろう。
というか、今後TRIGGERの主力シリーズになりそうな気も。
そのぐらい素晴らしい作品だったので、まだ見てない人は是非見てくれ。
「頭悪い系熱血モノ」の最高峰といっていいんじゃないかな?
心からオススメします。

オトコ×オトコで向き合ってるが、別にBL作品ではないのであしからず

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