神作画を、ツッコミ待ちのボケとして成立させたBONESの怪作
今クールのアニメにおいて、意外と話題になってるダークホース的存在が「かつて魔法少女と悪は敵対していた。」である。
確かに、これ凄い作品だよね・・。
タイトルが長く、「まほあく」という略称もあるので「なろう系」だと誤解した人も多いだろうが、そうではない。
これの原作は月刊ガンガンJOKERに連載されてた漫画で、ただし2015年に「絶筆」となっている。
・・絶筆?
そう、原作者の藤原ここあ先生が亡くなってしまったんだ。
藤原先生といえば、アニメファンならこの作品をご存じではないだろうか?
これ、結構雰囲気いい作品だったよね。
イケメンがメインの乙女系作品だと思わせといて、藤原先生の描くキャラは女子のかわいらしさがまたハンパない。
これのヒロインなんて、こんな小さくて可憐でありつつ、「僕っ娘」という設定。
1998年、中学生の時点でプロデビューしたという経歴だけあって、めっちゃ絵のうまい先生だったと思う。
いわゆる、生粋の天才というやつさ。
享年31歳、まだまだこれからの人だっただろうに・・。
死因は病死とされてるが、詳細は不明。
ちなみに「まほあく」は、連載中の2015年に一度ドラマCDが発売されてて、先生はこれの脚本も手掛けていたようだ。
しかし、なぜかこれの発売1か月後に彼女は亡くなっている・・。
一方、これはアニメ化企画も先生のご存命中から既にあったらしいのよ。
たまたま、先生とBONESの南社長が何かのイベントで会った際、彼女がBONES作品のファンということから親交が始まり、そこから「まほあく」のアニメ化企画が立ち上がったんだってさ。
ところが、その矢先での彼女の訃報。
そこでやむなく企画は一旦凍結されたんだが、南社長としてはどうもこれが心残りだったらしく、ここにきて企画を8年越しで再始動。
そんなわけで、これはBONESとしてかなり想いの強いプロジェクトとなってるので、くれぐれも、そんじょそこらの低予算アニメなんかと一緒にしないようにね。
見ての通り、本作は画の質感がとても柔らかい。
終始、ほわほわしてします。
ただ、思うんだよね。
これ、ホントにBONESか?と。
うむ、私が抱くBONESのイメージといえば、
といった感じで、「動き」を極限まで追求する哲学だったと思うのよ。
ところが、今回の「まほあく」は明らかにそっち系ではない。
動きではなくて、「ヒロインの魔法少女・白夜をいかに美しく見せるか」が作品の生命線となっている。
上の画のように
魔法少女・白夜がかわいい⇒悪の参謀・ミラが戦意喪失
戦いにならない⇒再戦へ
魔法少女・白夜がかわいい⇒悪の参謀・ミラが戦意喪失
戦いにならない⇒再戦へ
魔法少女・白夜がかわいい⇒悪の参謀・ミラが戦意喪失
ひたすら、これのループである。
もっとも最近は、ミラが「再戦」と言いつつも手土産のスイーツ持参で白夜のところにくるようになってきたし・・。
こういうのもBONESらしくないっちゃないんだけど、ただ異様なほど作画が綺麗なんだよね。
毎回エフェクトが凄い。
さすがはBONES、こういう柔らかいのをやらせても一流は一流なのか・・。
なんていうか、これはこの空気感を楽しむ系のやつなので、ほわほわしたのが嫌な人には無理だと思う。
ちなみにヒロイン・白夜の声は、あの中原麻衣ですよ。
そう、名作「CLANNAD」メインヒロイン・渚の人ね。
もうあれから十数年が経過してるというのに、中原さんはあの時と全く同じ声を「まほあく」で再現してくれています。
こうして敢えて中原さんを起用するあたり、なかばBONESの確信犯的な意図すら感じるよね。
多分、BONES的には美麗な作画や柔らかさをひっくるめて
お前、京アニかよ!
とツッコんでほしいんだと思う。
言っちゃ悪いが、こんなユルい話にここまで過剰に作画力を注ぎ込むとか、
BONES、馬鹿なの?
とツッコまれたいんだと思う。
・・ええ、皆さんツッコんであげてください。
私が思うに、この作品は南社長のトップダウンによる企画だろうし、きっと損得勘定は全くないんじゃない?
かつて「BONESのファン」と言ってくれた藤原先生へのトリビュートであり、これはもはや商売ですらなく、だからこそ絶対に手を抜けないというのがあるんだけどね。
ぶっちゃけ、赤字覚悟とか・・。
だが、こういういわくつきの作品は、得てして名作になり得るものである。
事実、まだ放送は途中段階であるものの、既に名作臭がプンプン漂ってますよ。
皆さんも、是非ご覧になってみてください。
<アニメ制作会社人気ランキング2024>
さて、ここでBONESの業界内における立ち位置を確認する意味で、某サイトが集計していた、「アニメ制作会社人気ランキング」というのをご紹介しておきたい。
アンケートの総投票数は13179票、結果、TOP10になった会社は以下の通りです。
【1位】京都アニメーション
【2位】BONES
【3位】ufotable
【4位】WIT STUDIO
【5位】P.A.WORKS
【6位】A-1Pictures
【7位】Production I.G
【8位】MAPPA
【9位】マッドハウス
【10位】シャフト
ええ、ジブリもサンライズもTRIGGERも動画工房も入ってないっすね。
でもまぁ、割と納得のTOP10じゃない?
BONESは、2位につけてるのか・・。
ホント、ここは強くなったよね~。
こういうアニメ制作会社を見る際は、その成立の経緯を踏まえておいた方が作品把握に役立つもの。
まず、大まかな流れを頭に入れておいてほしい。
【アニメ第一世代(創業者世代)】
・東映アニメーション
・虫プロ
・タツノコプロ
・トムスエンタテインメント(東京ムービー)
【アニメ第二世代(息子世代)】
・東映アニメーションの息子⇒スタジオジブリ
・虫プロ⇒倒産
<後継者候補4兄弟>
①サンライズ(ラオウ)
②マッドハウス(トキ)
③シャフト(ジャギ)
④京都アニメーション(ケンシロウ)
・タツノコプロの息子⇒Production I.G
・トムスエンタテインメントの息子⇒テレコム
【アニメ第三世代(孫世代)】
・サンライズの息子⇒BONES
・マッドハウスの息子⇒MAPPA
・Production I.Gの息子⇒WIT STUDIO
・テレコムの息子⇒ufotable
・スタジオジブリの息子⇒スタジオポノック
・スタジオジブリのムスメ⇒STUDIO4℃
※京アニ、シャフトには息子/ムスメはいませんので、あしからず。
※A-1Pictures(SONYグループ資本)は別系統の成立経緯ゆえ「新興勢力」と定義づけます。
※P.A.WORKSはPruductionI.Gの婚外子みたいなもんですけど、一応はこれも「新興勢力」と定義づけます。
だいぶ諸々細かいのを省略しちゃってるけど、ざくっといえば上記のような感じなんですよ。
で、上のTOP10と照らし合わせる限り、今は孫世代が非常に強くなってきてるんだ。
今年は「響け!ユーフォニアム」があって誰しも京アニの健在を思い知ったばかりだが、
多分、その京アニですら、そう遠くないうちに孫世代に抜かれます。
<孫世代>
BONES
ufotable
MAPPA
WIT STUDIO
もうね、このへんクラスになると手がつけられないっすね。
ただ、みんな「動」の方に偏ってしまってるもんだから、むしろ今後の課題はいかにして「静」の方を制するかであり、
そういう意味では今回のBONES「まほあく」なんて、意外と意義あるアプローチになってるんじゃないかと思う。
皆さんの中にも本作未見の方がいらしたら、是非ご覧になってみてください。
とにかく映像が綺麗だし、物語そのものはちょっとあれだけど、見て損するものじゃありませんからね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?