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リアルロボットvsスーパーロボット

来月、「ガンダムSEED」の新作が劇場公開されるという。
この話、てっきり「ディスティニー」で完結したとばかりと思ってたのに、まだ続いていたとは・・。
それにしても、「ガンダム」人気は根強い。
最近では「水星の魔女」でシリーズ初の女性主人公に挑戦したかと思えば、次はネットフリックスで「復讐のレクイエム」という一年戦争を描いた3DCGアニメを配信することが発表されている。
「ガンダム」は、全く休むことが許されていないようだ。

まさか「ガンダム」で百合物をやるとは想定外だった
あと、シャア的ポジションを能登麻美子がやるのも想定外だったわ・・

思うに、日本人ほど巨大ロボが好きな民族はないだろう。
アメリカにも「トランスフォーマー」はあるが、あれにしたって元々は日本のタカラトミーが企画したものである。
幼い頃の私はロボットアニメを見ていて、「きっと未来はこういう巨大ロボが実現するんだろうなぁ」と思ってたもんだが、実際のところは全くそうなっていない。
というか、実現化に向けた企画すらない。
なぜなら、そんなものを作ってもクソの役にも立たないからだ。
昔に千葉工業大学がガンダムの製作費用を試算していたが、確か1機につき800億円だったと思う。
それも武装の予算は含まれておらず、空を飛ぶ機能もなく、ただ歩くという機能しかないロボットである。
ちなみに、歩く速さは時速8km(笑)。
もしフル装備を想定すれば、これの10倍、いや100倍の予算がかかるのかもしれない。
そんなもの、一体誰が作るというのだ?
ちなみに自衛隊の戦車は1機10億、戦闘機は1機120億といわれている。
ただゆっくり歩くだけの機能しかないガンダムで800億円もかかることを思えば、もはや巨大ロボ製作に検討の余地はゼロだろう。

実物大の模型なら何度か作られてるんだが・・

いや、実はそんなこと、巨大ロボアニメを作ってる側は百も承知なんだよ。
そもそも、重量のあるものに二足歩行という不安定な動作をさせること自体が工学的に無理があるわけで、それはゴジラやウルトラマンのような「謎の生命体」というファンタジー分野でしかあり得ない話なのさ。
そこでSFに出てきたのが、「スーパーロボット」という画期的な概念である。
早い話が、「我々には理解できない謎の動力源が巨大ロボを動かしてる」というファンタジー要素でSFとしての不可能を可能にしたんだね。
分かりやすいところでいうと、エヴァンゲリオン、エウレカセブン、ファフナー、このへんのは大体が「スーパーロボット」である。
それに対する概念が「リアルロボット」であり、これの代表格こそガンダムなんだ。
富野由悠季は、巨大ロボットにリアルなメカニック設定をして、その機体をモビルスーツと名付けた。
量産型ザクなどはいかにもミリタリーっぽい機体で、プラモ好きにはかなり人気があったと思う。
さらにリアルロボット路線を突き詰めたサンライズは、「装甲騎兵ボトムス」で主人公がロボットを使い捨てにする設定として描いたあたり、ここでリアルを遂に極めた感じだね。
しかしなぜ、こんなにもリアルロボットに人気が出たのか?
このへんは、おそらく女子には分からないだろう。
基本、男子は機械が好きなものである。
クルマやバイクに多額のおカネを注ぎ込む男子を見て「こいつアホなの?」と思った女子は多いと思うが、そういうアホの琴線がリアルロボット独特の機械っぽさに触れたんだろうよ。
うん、こういうのって女子にはもともと理解できないもんさ。

「アルドノア・ゼロ」
あおきえい監督、虚淵玄原案・脚本のSF大作である

個人的に私が大好きなロボットアニメとして、「アルドノアゼロ」というのがある。
この作品の何が面白いかって、それはリアルロボットvsスーパーロボットという夢の対決を実現してることさ。
この作品の主人公が乗ってる機体は訓練学校の練習機で、はっきり言ってロースペック。
それに対して敵が乗ってる機体は、謎の動力源を搭載した超ハイスペックである。
まさに、リアルロボットvsスーパーロボット。
ただ、ハード面が劣るならばソフト面で勝ればいいわけで、ソフト面=操縦者の優秀さで主人公は敵を次々に撃破していくんだ。
なんか、ハードで劣る日本軍が米軍の最新鋭機相手に戦う太平洋戦争みたいで、見てて燃えるんだよね。
いくらスーパーロボットとはいえ、人間が作ったものには必ず構造的な穴があるとして、その穴がどこかを探りながら戦うという一種の頭脳戦である。
さすがニトロプラス虚淵玄、発想そのものが秀逸だね。

リアルロボット(右)とスーパーロボット(左)の戦い

あと、リアルロボットの形態を究極まで追求した作品としては、「ヘヴィーオブジェクト」を挙げておきたい。
これは大ヒット作「とある魔術の禁書目録」で有名な鎌池和馬の小説を原作としたアニメで、ここで描かれてるリアルロボット「オブジェクト」が実に興味深い。
まず、工学的に厳しいだろう二足歩行を最初から諦めていて、オブジェクトは多足歩行の機体である。
そして、この機体最大のストロングポイントは装甲の頑強さであり、たとえ核ミサイルを撃ち込まれても耐えられるというほど。
つまり、これは戦闘機の爆撃、およびミサイル攻撃が一切通用しないということだ。
それまでの戦争は制空権を押さえたもん勝ちの構図だったが、オブジェクトが出現して以降は制空権そのものがあまり意味をなさなくなってしまった、という設定。
驚愕の軍事未来シミュレーションだね。
ちなみ、そのオブジェクトがどんな姿形をしてるのかというと、ぶっちゃけこんな感じである↓↓

オブジェクトは耐衝撃構造の為、球形となっている

超カッコ悪い(笑)。
でも、リアルだよね。
たとえガンダムは実現不可能でも、このオブジェクトは実現可能な気がする。
どんな砲撃を食らっても絶対に破壊されない機体って、どう考えても戦争では絶対的なチートじゃない?
ちなみに、「ヘヴィーオブジェクト」とはそのバケモノじみた機体を相手に生身の歩兵が2人で挑むという物語である。
スーパーロボットvsリアルロボットじゃなくて、リアルロボットvs人間という戦い。
さすが「とある」シリーズの鎌池先生だけあって、少しラブコメ要素ありのライトなミリタリー物になってるので、肩の力を抜いて見られると思う。
案外、オススメです。

かつての日本は、当時世界最大とされた戦艦大和を保有してたことは皆さんもご存じだろう。
ただ残念なことに、大和が完成した時点で世界の軍事トレンドは巨大な戦艦なんて時代遅れだったんだよね。
いくら馬力のあるデカい戦艦でも、敏捷な戦闘機には勝てないわけで。
そして現代、軍事のトレンドは戦闘機よりさらにコンパクトなドローンへと移行している。
そう、どんどんダウンサイジングしてるんだ。
そう考えると、いくらアニメとはいえ、いまだ巨大ロボットで戦争だなんて普通に考えればナンセンスも甚だしいかと。
つまりリアルロボットという概念自体、リアルじゃないんだよね。

本当の意味でリアルロボットらしさがあったのは、「パトレイバー」ぐらいかも・・

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