「黒執事」私は、セバスチャンになりたい・・
今年4月クールのアニメって、凄い豪華だよね。
・狼と香辛料
・この素晴らしい世界に祝福を
・転生したらスライムだった件
・響け!ユーフォニアム
・魔法科高校の劣等生
・無職転生
・ゆるキャン△
などなど、ビッグタイトル目白押しじゃないか。
あと、5月には「鬼滅の刃」もだって?
直近の1月クールにそれほど目立った作品がなかったのは、逆にこのせいだったのかも。
あと、地味に「黒執事」の新作は嬉しい。
TVアニメとしては10年越しか・・。
サブカルとしての執事ブームを作ったのは、やはり「黒執事」と「ハヤテのごとく」だよね。
この両作のお陰で、執事=強い、というイメージが固まってしまった。
同じく、メイドもまた「戦闘メイド」という言葉が普通にあるように、闘うと強いということはもはやアニメ的に常識ですらある。
これ、何なんだろう?
執事もメイドも、本来なら強くある必要の全くない職業なのに・・。
ただ、こういった職業は元々上流階級のものなので、それに抜擢されるのは有能、かつ万能な人材というイメージは確かにある。
特に「黒執事」は美形男子、BL、ショタなど、アニメ女子が大好きな要素がとにかくテンコ盛りなのよ。
原作者の枢やな先生は「画が上手い漫画家ランキング」でも上位に食い込んでおり、キャラ造形が何ともセクシーである。
そして、主人公・セバスチャン役の小野大輔。
声優界で、Mr.セクシーといえば小野大輔だ。
だから「黒執事」はどっちかというと女子がうっとりする系ニーズに応えたアニメなんだが、オッサンの私がなぜこれを好きかというと、本作品が放つ独特の英国っぽさがタマらんのですよ。
英国独特の薄暗さの魅力、とでもいうべきかな・・。
仮にアメリカの明るさが100Wだとするなら、英国の明るさは30Wほどだろう。
ちなみに、私は海外ドラマでもアメリカのよりBBCのやつにハマる方だし、英国の王室劇とか大好き。
大体、アメリカなんて歴史が浅いから王室自体がないじゃん。
なんと薄っぺらい歴史だ。
やはり、英国の何たるかを味わうには
①ブーリン家の姉妹(2008年)主演/ナタリーポートマン
②エリザベス(1998年)主演/ケイトブランシェット
③エリザベスゴールデンエイジ(2007年)主演/ケイトブランシェット
という3つの映画をぶっ続けで見ることをお薦めしたい。
この3つを上記の順番で見れば、英国王室の何たるかが大体は理解できると思う。
さらに、執事の何たるかを味わうには
英国ドラマ「ダウントンアビー」6期全52話
の視聴がベストだろう。
下準備として、それらの視聴を済ませてから「黒執事」に入るというのが、私の考える本作視聴のマナーなんですよ。
「黒執事」の舞台は19世紀の英国。
ヴィクトリア女王の治世だね。
主役は執事・セバスチャンと、その主人のシエル・ファントムハイヴという貴族の少年。
ファントムハイヴ家は代々「女王の番犬」と呼ばれる王室御用達の裏稼業を担うファミリーで、シエルは子供ながらこの家の当主である。
両親は、何者かに殺されたらしい。
シエルは両親を殺した者(誰なのかは分かっていない)への復讐を誓っており、その復讐を目的として悪魔と契約。
その悪魔が他でもないセバスチャンで、目的を達成した暁にはシエルの魂を食う、という契約になっている。
うん、構造的にハッピーエンドは絶対あり得ないプロットだね・・。
ひとつ理解しておいてほしいのは、これの原作はまだ完結してない、ということ。
ちなみにアニメは、アニオリで2期に完結してしまっている。
なのに2期以降、原作準拠で「Book of Circus」「Book of Murder」「Book of the Atlantic」を新作としてアニメ化しており、これはさすがにツジツマが合わなくなってきている。
う~む、こういうのはどう整理すればいいのかな・・。
まぁ、1期と2期は岡田磨里脚本、「Book of Circus」以降は吉野弘幸脚本ということで、岡田版、吉野版とでも解釈してくれ。
ちなみに今年やるやつは吉野版の新作であり、「寄宿学校編」と銘打たれている。
しかし「黒執事」の凄いところは、アニオリで終わらせた割に(しかも2期は、まるごと完全アニメオリジナル)、それはそれでちゃんと面白いという点である。
さすが、岡田磨里!
この原作からズレた部分について、公式にはどういうアナウンスになってるのか知らんが、私が思うに
「1期の7~12話、および16~25話、また2期は全部無かったことにして、1期の1~6話⇒1期の13~15話⇒Book of Circus⇒Book of Murder⇒Book of the Atlantic⇒寄宿学校編、という感じで見てください」
といったところじゃないだろうか。
詳しくは知らんけど。
「女王陛下の番犬」ファントムハイヴは、いわば007みたいなものだろう。英国といえば007、もともとスパイのイメージのある国である。
これも英国の歴史と密接に関係あるものなんだ。
そのルーツはやはりエリザベス一世の治世下、ウォルシンガム卿に始まると思う。
ウォルシンガム卿、元祖スパイマスターさ。
王室劇なんかを見てるとよく分かることだと思うけど、戦いというのは軍人ばかりのものでなく、貴族の世界にもちゃんとあるんだよ。
ただ、それは軍人のように分かりやすいドツキ合いでなく、水面下での策謀だったり暗殺だったり、ある意味では戦争以上に陰湿なものである。
「薬屋のひとりごと」でもお馴染み、毒なんて貴族の常套手段さ。
逆に彼らは毒を盛られること前提で、幼少の頃から毒の耐性をつける訓練をしてるとも聞く。
あとは、呪詛もあっただろう。
ほら、日本でも貴族社会だった平安時代にこそ陰陽道が全盛で、呪術による暗殺もあったというじゃん?
そこは英国も同じで、きっと魔術が流行ったのも貴族のニーズだったと思うんだよね。
魔術、すなわち悪魔召喚による呪詛。
よって、「黒執事」で貴族のシエル・ファントムハイヴが悪魔と契約するのも、意外なほどしっくりくるのよ。
というか、貴族って一体何なんだろうね?
貴族は自らの血統を高貴だと誇り、貴族でない庶民を見下す。
血統とは、そんなに価値あるものなのか?
血統書付きの犬は、雑種の犬より賢く、その能力が優れてるのか?
そうとも限らんだろ。
ただし19世紀の英国では、貴族と庶民でその能力に雲泥の差があったのは事実だと思う。
なぜって、貴族は子供の頃からきちんとした教育を受けてるのに対し、庶民はそんなの受けられなかった境遇だし。
そう、貴族の優れた資質を裏付けているものは、階級社会そのものなんだよね。
きっと階級社会が崩壊してしまえば、庶民はすぐに貴族に追いつき、貴族はそのうち抜きん出た存在ではなくなってしまう。
貴族は保身の為にも、現状の階級社会、格差社会を維持せねばならない。
そういう貴族の歪んだ精神性が、「黒執事」のキモである。
事実、ここに出てくる貴族のほとんどは、どこか歪んでいる。
シエルも歪んでるからこそ、悪魔とも契約をしちゃうわけで・・。
こうした貴族社会の中にいると、不思議なもんで悪魔セバスチャンがとてもマトモに見えてしまう。
というか、本物の悪魔より人間の方がよっぽど悪魔っぽいじゃん、と。
「黒執事」は、そういう物語である。
そういや、アニメオリジナルの岡田磨里版(1期)では、女王陛下も悪で、その背後にいる天使もまた悪だったよね。
もはや「デビルマン」的な展開で、やっぱ悪魔を主人公にすると永井豪先生の縛りから逃れられないのかな?
とはいえ、この岡田版、私は結構好きなんですよ。
続く2期では黒執事vs黒執事、ショタvsショタという夢の対決で、もう岡田磨里が好き放題やっちゃってくれてました。
「黒執事」ファンはともかく、岡田磨里ファンにはぜひ1期~2期の視聴をお薦めしたい。
結構、岡田さんの作家性がかなり色濃く出てて、これはこれでありなんですよ。
もちろん原作ファンはあれを許さないだろうが、私はめっちゃ美しい話だと思ったけどなぁ・・。
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