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かつて石原立也監督が犯した、ふたつの失敗
「響け!ユーフォニアム3」が絶賛放送中である。
例の事件以来、やはりというべきか、京アニは寡作な会社になってしまった。
もともと、量産するよりはひとつひとつ丁寧に作っていくタイプだったが、その傾向がより顕著になった感じ。
正直いうと、主力の山田尚子さんが離れたこともあり、少し心配している。
そうはいっても、この会社は石原立也監督がいる限り、大きく崩れることはないんだろうけどね。
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思えば京アニ作品の監督は、石原さんが務めることが多い。
その作品群をざっと挙げると、
・涼宮ハルヒの憂鬱
・AIR
・CLANNAD
・中二病でも恋がしたい
・響け!ユーフォニアム
などなど、京アニにとっての基幹作品は石原さんという印象。
シャフトでいう、新房昭之のような位置付け?
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石原さんと新房さんを比較しても、全くタイプが違うと思う。
まず、新房さんはほとんどメディアに露出しないので、そのパーソナリティは全く謎である。
ただし伝え聞く声はあって、その多くは「さほど現場に介入してこない」というもの。
詳しいところは分からん。
ただ私は「物語」シリーズのファンであり、そこに出演してる声優さんたちの話を聞く限り、音響監督あたりが演技指導をしてたりするっぽい。
多分、そこにはヒエラルキーがあるんだろう。
そして、そのヒエラルキーの頂点に君臨するのが新房さんという王政。
「監督が介入しなくては、現場が緩むのでは?」と思いがちだけど、現実はむしろその逆である。
神谷浩史、坂本真綾、櫻井孝宏、三木眞一郎、堀江由衣、沢城みゆき、花澤香菜etc、それこそスター級の声優がずらりと勢揃いし、こんなキャリア十分の彼らが収録の前に喧々諤々、「この状況は・・」「この時の心情は・・」と議論してたりするわけさ。
これ、かなり熱い現場の空気じゃない?
私が思うに、この妙に緊張感ある現場の空気を作ってるのが、新房監督の「圧」じゃないか、と。
あくまで推測なんだけどさ・・。
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彼ら声優陣の「物語」解析は驚くほど高度な域に到達していた
一方、京アニの石原さんはどうなのか?
彼をメディアで見た印象として、「優しそうなオジサン」といった感じだ。
言っちゃ悪いが、天才とか鬼才とかのイメージは全く湧かない(笑)。
監督としての「圧」はなく、声優の女子たちの中にも違和感なく溶け込んでいる。
これ、京アニならではのパーソナリティかも。
というのも、京アニって昔から女子アニメーターのイメージが強い会社だったじゃん?
例を挙げれば、堀口悠紀子、池田和美、山田尚子、故・池田晶子etc
そういや、今放送してる「響け!ユーフォニアム」にも池田晶子さんの名前が「キャラクターデザイン」で、ちゃんとクレジットされてるよね・・。
あれ見て、ちょっと泣きそうになった(心より、ご冥福をお祈りいたします)。
で、こういう才女たちと一緒に仕事を回していく都合上、石原さん的に「圧」のない優しいキャラでいく必要があったと思うのよ。
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私が感じる京アニのストロングポイントは、次の3パターンに分類できる。
・かわいい
・綺麗
・イケメン
まず最初の<かわいい>は、その最高峰が山田尚子監督の「けいおん!」だと考えてくれ。
次に<綺麗>は、その最高峰が石立太一監督の「ヴァイオレットエヴァーガーデン」だと考えてくれ。
最後に<イケメン>は女性向け枠で、その最高峰が「Free!」シリーズだと考えてくれ(今なら「ツルネ」か?)。
あれ?
石原監督は?
彼は<かわいい>と<綺麗>をトータルコーディネイトする立場で、彼自身の作家性というよりむしろ、主に女性アニメーターたちをうまいこと回していく役割だったんじゃないだろうか。
思えば、京アニがまず最初に世間から注目されたのは、石原監督の「AIR」からだったかと。
この作品を、アニメ界のレジェンド・杉井ギサブロー先生が「人物の動きが凄い」と絶賛したんだ。
しかも、杉井先生は「これを作ったのが京アニと聞き、納得した」とまで言っており、これをもって京アニ株は一気に高騰。
この「AIR」制作は2005年で、当時まだ京アニは元請制作が少なく、世間的には無名の会社である。
なのに杉井先生が「京アニと聞き、納得した」というのは、下請けの作画で京アニのクオリティが業界内では知れ渡ってたということだろう。
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令和の今においては、作画が凄い制作会社となると、ufotable、MAPPA、WIT STUDIOなどのアクション系、エフェクト系のところを挙げる人たちが多い。
でも京アニはそっち系ではなく、どっちかというとジブリの凄さに近いものがある。
基礎的なレベルで、作画が丁寧なのよ。
その画力の評価を決定的なものにしたのは、
2006年「涼宮ハルヒの憂鬱」
2007~2008年「CLANNAD」
2009年「けいおん!」
この3連打である。
特に「けいおん!」は、ひとつのモードになった。
この作品の凄さは<かわいい>を極めたところにあり、それを担ったのが
監督・山田尚子
キャラデザ/総作画監督・堀口悠紀子
キャスト・豊崎愛生/日笠陽子/佐藤聡美/寿美菜子/竹達彩奈
という女性陣。
ようは作り手からして女子高ノリであって、この「けいおん!」の空気感は男じゃ決して出せないものだったと思う。
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ある意味、新房昭之のシャフトとは真逆のアプローチかと。
新房さんのアニメにはロジックを感じるけど、「けいおん!」の良さはどう考えてもロジックにならない感性、いうなれば生理だもんね。
ま、いいか。
じゃ、石原立也に話を戻そう。
一応、石原監督は京アニ屈指のヒットメイカーではあるものの、実は大きくコケた作品もあるんですよ。
それが
・日常(2010年)
・無彩限のファントムワールド(2016年)
という2作品。
このふたつは円盤売上が3000枚にも満たなかったとのことで、京アニ史上ワースト記録だという話を聞いたことがある。
だけど私、このふたつ結構好きなんだよな~。
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「日常」は原作が4コマ系のギャグ漫画であり、おそらく同じ4コマ系の「けいおん!」成功を受けてアニメ化されたものだと思うが、そのシュールな笑いのほとんどを「画の緩急」で作っているという野心作である。
こんなユルい作風にさほど手の込んだ作画はいらんだろ、と思わせといて、めっちゃ迫力あるのをちょくちょく挟んでくるのが面白い。
ちゃんと京アニの画力を使って笑いをとるという、画力ありきのコメディである。
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はかせ&なの、見てるだけでほっこりするなぁ・・。
「日常」はシュール系ギャグ作品としてかなりクオリティが高いのに、円盤売上となるとまた別の話なんだろうね。
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「無彩限のファントムワールド」は、ファントム(幽霊?)とのバトルを軸にした学園ファンタジーである。
幽霊を脳科学・物理科学で解釈するなど、SFとしての興味深い要素もあるんだが、京アニとしてはそっちをメインにせず、あくまでも美少女キャラの方をメインに据えた感じ。
実際キャラをあまりにも強調しすぎるがゆえ、せっかくのSF要素がほとんど吹っ飛んでる感じだわ。
残念というか、バランスの悪い作品である。
とはいえ、それを補って余りある女性キャラ陣の魅力もあって、どうしても嫌いにはなれない。
特に、オッパイ要員の舞先輩は凄いよな~。
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うむ、これオッパイ馬鹿アニメだね(笑)。
石原監督とは、こういう「ファントムワールド」みたいなオッパイ系から「CLANNAD」みたいな感動系に至るまで、実に振り幅の広い監督である。
・・というか、昔の京アニはこういう「遊び」がちゃんとあったのよ。
しかし今は悲しいことに、完全に守り一辺倒である。
2019年の放火事件以降、京アニが制作したアニメは以下の通り。
・劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデン(続編)
・劇場版Free!(続編)
・小林さんちのメイドラゴン(続編)
・劇場版ツルネ(続編)
・ツルネ(続編)
・劇場版響け!ユーフォニアム(続編)
・響け!ユーフォニアム(続編)
といった感じで、全てが事件以前からあったシリーズの続編ばかり。
新企画に着手する余裕がない?
うん、事情は十分に理解する。
しかし今がこういう状況だからこそ、昔の「失敗」とされた「日常」や「ファントムワールド」が妙に眩しく思えてならない。
失敗って、実はとても尊いものだったんだね・・。
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